◇不惑過ぎ追う夢 大みそかの午後9時すぎ。東京・渋谷のライブハウスは客もまばらだった。よどんだフロアの空気を吹き飛ばしたのは、大音量の激しいサウンドだ。 <ほんとにスゴイの見せてやるぜ/けっこうヤバイの持ってるぜ> 「エレクトリック・イール・ショック」(EES)。男3人のハードロックバンドだ。全員42歳。 ボーカルでギターのアキが目を見開いて歌う。ドラムのジャイアンは裸同然でスティックをたたきつける。カズトはベースを頭上に掲げ舌を出す。客の髪や皮膚がビリビリと震えた。 誰にもおもねらず、突き抜けていて、少し危険。そんな音楽への手応えがある。「2、3年のうちには1000人の会場でもいっぱいにしてみせる」 ■ ■ 「お前は本当にリズムがすさんどるな。手が動かねえし」。97年の夏の終わり、東京・新宿の狭い地下スタジオ。ドラムスクールの実技試験で、当時29歳のジャイアンが必死に課題をたたき終える