経営の未来 これ、すごく良い本なのだけど、致命的にタイトルがヌルイ。この本を読むべき人に届けようという意思が全く見られないタイトルだ。 私だったら、次のどちらかのタイトルをつける。 もはや「部長」「課長」には未来が無い! 従業員の未来 原題は "The future of management" なので、それを素直に直訳しただけなんだけど、「経営の未来」というタイトルでは「経営」というものが何となく嫌いな人と、「経営」なんてものに未来があるんだろうか、と思っている人が、食わず嫌いをしてしまうじゃないか。 それより何より、自分は良き「従業員」になろうと思っている人がまず読むべきだと思う。 実をいうと、「エンプロイー(従業員)」という概念は近代になって生み出されたもので、時代を超越した社会慣行ではない。強い意思を持つ人間を従順な従業員に変えるために、二十世紀初頭にどれほど大規模な努力がなされ、
経済成長の最大の要因がイノベーションだということは、今日ほぼ100%の経済学者のコンセンサスだろう。したがって成長率を引き上げるためには、マクロ政策よりもイノベーション促進のほうがはるかに重要である。これについて先進諸国で採用されている政策は、政府が科学技術に補助金を投入する技術ナショナリズムだが、これはどこの国でも失敗の連続だ。著者は、この背景にはイノベーションについての根本的な誤解があるという。 イノベーションについての経済理論はほとんどないが、唯一の例外が内生的成長理論である。この理論は成長のエンジンを技術革新に求め、政府の補助金が有効だとする。しかし本書は、100社以上のベンチャー(startup)の聞き取り調査にもとづいて、イノベーションの本質は技術革新ではないと論じる。アップルやグーグルのように既存技術の組み合わせによってすぐれたサービスが実現される一方、日本メーカーのように
私は大学院で「コーポレート・ガバナンス」を教えているが、ビジネススクールで企業統治というと、本書のような「コンプライアンス」の話が多く、もっぱら後ろ向きの法律論ばかり教えられる。それはもちろん現実の企業防衛策としては必要なのだが、企業全体が保守的になり、海部美知さんのいうように、「全国がコストセンター」みたいな状況になっている。 特に日本では最近、刑事司法が経済事件で突出した動きを繰り返しているが、村上ファンドやライブドアに刑事罰は必要だったのか。市場の問題は、市場の番人が解決するのが本筋ではないのか。人質司法といわれるような、古い「お上」的な捜査手法が残っているのではないか。刑事訴追によって企業統治を改善する効果はきわめて限定的であり、副作用のほうがはるかに大きい、と企業統治の教科書は教えている。 特に日本では、法律家が経済学を知らないため、経済全体に及ぼす波及効果を考えない事後の正
離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書) 作者: A.O.ハーシュマン,Albert O. Hirschman,矢野修一出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2005/05/01メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 164回この商品を含むブログ (34件) を見る第1章 序論と学説的背景 人間社会は、生存維持水準を上回る余剰の存在によって特徴付けられ、こうした余剰が存在するからこそ、社会の進歩においてかなりの衰退を甘受してきた。これは、生産性を向上させ、自らを取り巻く環境を支配するようになったことと無縁ではない。ところが、完全競争モデルでは、それぞれ孤立する個別企業は全体的にぎりぎりの状態にあり、その結果、僅かな過ちが破滅にいたる。厳しい緊張経済のイメージが、経済分析において特権的地位を占める。 永続的緊張経済という伝統的モデ
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