江戸絵画の非常識 近世絵画の定説をくつがえす (日本文化私の最新講義) 著者:安村 敏信 出版社:敬文舎 ジャンル:芸術・アート 江戸絵画の非常識―近世絵画の定説をくつがえす [著]安村敏信 一例をあげる。「風神雷神図屏風(びょうぶ)」(建仁寺)の作者といえば誰もが疑うこともなく俵屋宗達に決まっていると言う。これは常識である。本書はこんな常識に対して異議申し立てをする非常識な研究者がいてもちっとも不思議ではないだろうという論者たちの意見を、美術史家の著者が交通整理しながらその理非を裁量していく手腕が実に鮮やかでスリリングである。 例えば「風神雷神図屏風」は宗達の晩年の作であるというのが定説であるが、この作品には署名も落款もない。証拠がなければ常識の基盤が揺らぐ。本書の目的は常識の仮面を剥がすことで非常識を歴史の文脈に、新たな顔として位置づけられないかという挑戦である。 一方〈それがどうした