今回は筆者が直接体験したり、見聞きしたりしたさまざまなITの事件の中から、近年になって脅威が深刻化している「rootkit(ルートキット)」が世界で初めて社会問題化した事件を取り上げたい。以降ではできるだけ忠実に事件の全体を触れていくつもりだが、一部に筆者の想像や憶測があることはご容赦いただきたい。またこの事件に関わった当時の会社は、現在では社名も異なり、体制も変わっている(と思う)。本稿は現在の会社を批判するものではなく、過去の事件の教訓を通じて、少しでも安全にITを活用していける世の中になってほしいとの思いで執筆していることをご理解いただきたい。 2005年、音楽CDの中に凶悪なルートキットが仕込まれるという事件が明らかになった。この事件は、コンピュータセキュリティにおいてルートキットが深刻な問題を引き起こす契機になったはずだが、なぜか大手マスコミで報道されることはほとんどなく、事件