『週刊金融財政事情』に掲載されたもの。 『世界経済同時危機』 原田泰+大和総研(日本経済新聞社) 今回の世界経済同時危機は、「100年に一度」という形容でしばしば語られている。しかし本書では、そのような形容は、「100年に一度なら仕方がない」という見方となり、原因究明や対策を怠ることつながる、と批判的だ。また、市場主義や新自由主義の行き過ぎとして、今回の危機をみることにも本書は反対している。むしろ自由な市場は世界経済を豊かにしたではないか。問題なのは、破綻した金融機関や企業への救済のあり方である。なぜなら自由とは、自由な選択を行った人たちが責任を負うことである。失敗のつけを、安易に納税者に負担させるのは自由を損ねるものになるからだ。 この自由の本来的な意義を、世界的な危機の中でどのように市場に根付かせるか。著者たちは、具体的な市場設計をいくつも提案していて刺激的である。例えば、数年前の利益