道元禅師の言葉が修行者の心得を説いたものの一つに、次のようなものが有ります。 「龍牙云く、『学道は先づすべからく貧を学すべし。貧を学して貧なる後に道まさにしたし』と云へり。」(『正法眼蔵随聞記』巻5-10) 「龍牙」は、中国禅宗の龍牙居遁禅師のこと。出典は『禅門諸祖師偈頌』。仏道を学ぶ者は、衣食住の快適さを求めず、財物を貪らずに修行すべきであるという意味でしょうが、それにしても、「貧しさを学ぶ」とはどういうことか。 他に禅師自らの、こんな言葉も。 「学道の人は先づすべからく貧なるべし。財多ければ必ずその志を失ふ。」(『正法眼蔵随聞記』巻4-9) 要するに「修行者は、貧しくあるべきだ」というわけです。修行者が贅沢をしていて、まともな修行ができるはずがありませんし、世間が納得するわけもありませんが、それにしても、この教示は、ただ飢えと寒さに耐え抜けと言うがごとき、闇雲な根性論ではないでしょう。