すべての照明が消え、BGMも消え、ただただ静かで真っ暗な空間が広がった。 <死ぬの 死ぬの ぼくら いつか はなればなれになる> 闇の中からゆっくりと聴こえてきたのは、そんなインパクトある一節をアカペラで歌う彼女の声だった。呼吸もまばたきも忘れてしまうようなオープニング。地平線から朝日が昇るようにステージの幕が上がると、そこには一人ピアノに向かう彼女の姿があった。 一瞬で全員の耳と心を釘付けにしてスタートした「熊木杏里TOUR 2011「and...Life」の東京公演。1曲目は、ひと言ひと言ていねいに、側にいる誰かに語りかけるようなピアノ弾き語りで歌われた「hotline」だ。澄んだ歌声が、国際フォーラムの高い高い天井へと舞い上がって行く。続く、「Hello Goodbye&Hello」でキーボード、ギター、ベース、ドラムが加わると、さっきまでステージと客席に漂っていた独特の緊張感がとけ