岡本隆司『清朝の興亡と中華のゆくえ ─朝鮮出兵から日露戦争へ─』講談社 は読んでいて刺激が多く、特に外交面で興味深い本だったのですが、読んでいて一カ所引っかかる部分があったので、今回調べてみました。具体的には下に引用した文章です。 明朝政府は李自成の軍が北京に迫るとの報を受けると、呉三桂を北京に戻して首都の防衛に当たらせる。しかし間に合わなかった。(中略)長城東端の要衝、山海関にはドルゴン率いる清軍が迫っていた。呉三桂は前方に李自成、後方に清朝と挟まれる形になって、窮地に立たされる。(中略)そこで呉三桂は、敵対する清軍に密使を送って、援軍を要請する。(中略)ドルゴンは思いがけず、敵軍の前線の司令官から密使が来たばかりか、その君主の最期まで告げられて、さぞかし驚いたに違いない。(中略)『東華録』という清朝の年代記にみえるこのやりとりは、互いの立場と知略をよくあらわしている。呉三桂はあくまでも