映画「裸の島」 新藤兼人と乙羽信子 2008年01月19日 10月も終わるというのに、島根県浜田市の浜辺は夏の日差しだ。映画監督新藤兼人さんの最新作が追い込みに入っていた。95歳、車いすで現場入りした新藤さんは、昔を思い出すように、じっと目を閉じていた。 夕日に染まる宿禰島。ロケから48年、段々畑の「裸の島」にも木々が茂った。乙羽信子さんの遺骨をこの海にまいた=広島県三原市で 冬枯れの蓼科高原。乙羽さんの遺作「午後の遺言状」が周辺で撮影された=長野県茅野市で 「花は散れども」のロケ現場の新藤兼人さん=島根県浜田市で 1カ月半後、東京・赤坂の自宅で聞いた。「あの日の乙羽さんが頭をよぎりました」。鋭い目で私を見た。「女優乙羽信子はあの海で死にました」 94年9月5日、新潟・寺泊の海も猛烈な暑さだった。新藤さんは妻で女優の乙羽さんと「午後の遺言状」を撮っていた。彼女は杉村春子さん演じる女優がもつ