入院にしている母の90歳の誕生プレゼントに、白と黒のうわっぱりをあげたら「意外に地味な色だね」と言って笑った。でも気に入ったようで「退院したら家で着れるよ」とベッドの脇にちょこんと座ってうわっぱりをなでていた。 僕はロックを生業としているけれど、その日常が他の一般的なお仕事の方々とさして変わらない面が多いことにたまに茫然とする。母の年齢的に言って、退院後に自宅ではなく、介護施設的なところに入ってもらう可能性もあり、その事を告げる役どころは、兄はもう死んでいるから、次男の僕になるのだ。今まで何度も大規模会場で何千人の前で「もう一回、行ってみるかぁ!!」なんて平気で話しかけてきたけれど、病院の大部屋の隅でたった一人に「あ……お母さん、実は……」と声をかけることがこんなにもためらわれる。 ※10月上旬に書籍化決定 続きは書籍でお読みください