文藝春秋編「弔辞」(文春新書)を読む。副題が「劇的な人生を送る言葉」。本書は月刊「文藝春秋」2001年2月号、2011年1月号に掲載された「弔辞」から50人分を収録したもの。弔辞をまとめたものは20年以上前に中公新書で刊行されたものに始まり、今まで何冊も企画されてきた。それだけに優れた弔辞はすでに紹介されてしまっている。しかし、弔辞は全国で毎日読まれているから、ネタがない訳ではない。この「弔辞」から見えてくるものがある。 まとめて読んでみて、良い弔辞というのは心がこもっているだけでは駄目なことが分かった。気持ちは分かるのだが、それが普遍性を持たない。直接には関係のない第三者の心を打つことができない。もちろんレトリックだけでも駄目なのだ。心とレトリックの二つが必要なのだ。 柄谷行人の中上健次への弔辞は良かった。それは部分を紹介することができない。長くはないが、弔辞丸ごと読んでほしいと思う。そ
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