<岩田昌征(いわたまさゆき):千葉大学名誉教授> 孫崎享の『戦後史の正体』(創元社)が広く読まれているようである。良い事だ。 ここで私は本書の評をしたいわけではない。孫崎大使が第三章「講和条約と日米安保条約」の一節「占領期の日本人には、象徴的なふたつの道がありました。ひとつは公職追放、もうひとつは占領軍による検閲への参加でした。」で指摘している検閲に関して興味深い資料を提供したいのである。まず、本書の関係箇所を引用しておこう。 「占領中、米国は日本の新聞や雑誌、書籍などを事前に検閲し、印刷を中止させたり、・・・。さらに個人の手紙に関しても、年間何千万通と謂う規模で開封・翻訳し、日本人全体の動向を把握し、コントロールしていたのです。」(p.127)そして岡崎久彦著『百年の遺産――日本の近代外交史話』から引用して次のように記す。「占領軍の検閲は大作業でした。そのためには高度な教育のある日本人五