Open Public と Walled Garden
『Ustreamと超テレビの時代』読了。 今回はインプレス提供の無料 PDF に応募してゲット。 ようやく読み終わった。 (キャンペーンはすでに終了している)
ちなみに iPad 上で iAnnotate PDF を利用。 気になる部分は iAnnotate PDF で印をつけ, Evernote でメモをしながら読んだ。 こういう読み方ができるのが電子書籍の面白さだよね。 最新版の Kindle みたいに「読書」を共有しろとまでは言わないが, ただ読むことしかできない電子書籍リーダーなど滅びてしまえと言いたい。
以前 『Twitter 社会論』 や3年前に出版された 『CONTENT'S FUTURE』 を読んだりしたのだが, いまひとつピンと来なかったんだよね。 なんか「今」を語ってない気がして。 その点『Ustreamと超テレビの時代』は「今」を語ってる感じがする。
いや,しかし,つくづく2009年は転換点だったんだねぇ。 それなのに昨年の私ときたら, 半年近くも無職状態で, その後も「その日暮らし」が精一杯の状況で, ほとんど「空白の1年間」だったよ。 リーマン不況恐るべし。 そういう意味じゃ『Ustreamと超テレビの時代』は(他のどの本に比べても)その空白を埋めてくれるありがたい内容だったわけさ。
個人的に気になったのは Open Public (公共圏)と Walled Garden (壁の中に閉じた花園)の対比だろう。 そういえば Flickr を使い出した頃, mixi のような「閉じた SNS」に違和感を感じていた。 つまり, 当時の mixi は Walled Garden であって Open Public ではなかったということだ。 日本人って特定のサービスに引きこもる傾向があるよね。 mixi が流行れば mixi ばっかりに没頭し, ニコニコ動画が流行ればみんな猿のようにやりまくる。 そんでもってそれを日本独自の文化だと謳う評論家がいる。 Twitter や Tumblr ですら似たような傾向を感じる。 Twitter や Tumblr があれば他の(以前の)サービスなんていらね, ってな人もいて笑ってしまう。 本当に日本で Open Public な状況になどなるのだろうか。
そういえば『Ustreamと超テレビの時代』では間に合わなかったようだが, mixi もついに Twitter との連携を始めている。 もっとも mixi がケータイ・ユーザをメインターゲットに据えた時点で個人的には全く魅力を感じなくなったのでスルーだけど。 日本でも iPhone の影響は小さくないだろうが, それでもまだいわゆる「ガラケー」の方がシェアが大きいだろう(特に地方では)。 日本の場合, iPhone 以前と以後では全く状況が異なる。 「ガラケー」をメインターゲットに据えているようなサービスが Open Public に乗ってくるとは到底思えない。 「ケータイID問題」 にも絡むのかもしれないが, そろそろ日本はケータイにまつわる因習(他にも無意味なディレクトリサービスやくだらないフィルタリングなど)を捨てるべきときだと思う。 たぶんそこからがスタートラインだ。
話がそれてしまった。
個人的にまず気になったのは Open Public と Walled Garden の対比だが, 『Ustreamと超テレビの時代』にはその先がある。
「テレビのデジタル完全移行とは、大きく見ればインターネットがテレビサービスの一部を吸収し、ライブ型のテレビとネットが一体化する過程であると考えることができます。 またこの変化は、ライブ情報発信に適したアップル社のiPhoneに代表されるスマートフォンの台頭とも重なり合っています。 その結果、時差型、即ち非同期型の活用が中心だったインターネット活用に変化が現れ始めました。 同期型とかリアルタイム型と呼ばれるライブコミニュケーションへの視聴スタイルのシフトです。」 (p.216)
この辺あたりまで読んでようやく得心がいった。 だからソーシャル・メディアではなく「超テレビ(ソーシャル・テレビ)」なのか。 これは『Twitter 社会論』を読んだときにはピンと来なかった部分だ。
『Twitter 社会論』の感想文で書いたが, 私はもう Twitter にハマり込んでない。 仕事中は TL を見ないようにしてるし。 まぁ iPad で遊ぶようになってからは(以前よりは) TL を見るようになったけど, それも余暇での話だ。 iPhone のようなソーシャル・サービスを前面に置いた携帯端末も持っていないし(そのうち買いたいけど, iPad の支払いが終わってからね), ニコニコ動画のアカウントすら持ってない。 たぶん私は「ライブコミニュケーション」から取り残されているのだろう。
そういえば
「米国では、テレビ番組も含めて、インターネット上でテレビを含む動画と他の情報(番組関連番組や情報の推奨、検索サービスなど)とのマッシュアップの議論と実践が行われています(なお、受像機はテレビ、パソコン、スマートフォン、ゲーム機など多彩です)。 一方、欧州はHBBTVを見ればわかるように、テレビ電波もインターネット情報も、セットトップボックスなどでマッシュアップして関連番組や情報の推奨、検索サービスを提供する方向です。 日本のツイッター世界で流行っている「ツイッター+Ustream」革命の議論は、このマッシュアップフェーズがすっぽり抜けています。」 (p.132)
とある。 もしこのマッシュアップフェーズが進めば私のような新手の「デジタル・デバイド」な人も多少は状況が改善するのだろうか。 ちなみに HBBTV というのは
「それから74年後のバンクーバーオリンピックでも、ドイツはイベントを積極的に活用しました。 HBBTV(Hybrid Broadcast Broadband TV)と呼ばれる番組のソーシャル視聴が可能な新型テレビの開始を、バンクーバーオリンピックに間に合わせたのです。 HBBTVは、ツイッターなどインターネットの情報とテレビ番組を、同時に同一画面上に表示できます。 ドイツでは、2009年末からHBBTV対応のセットトップボックス(650ユーロ、約8万円)が販売されています。 ドイツの先進的視聴者は、関連するツイッターの流れを見ながらテレビ中継を見ることが可能になりました。」 (p.67)
なんだとか。 更に
「BBCのプロジェクトキャンバスでは、2012年のロンドンオリンピックとテレビの完全デジタル移行をにらんで、テレビ信号とテレビの過去のアーカイブを含むインターネット情報を、視聴者が個人単位に自由にマッシュアップできるサービスの構想を発表しています。」 (p.140)
という話もあるらしい。 欧州は進んでるねぃ。 日本は2011年にデジタルに完全移行するわけだけど, どうなるんだろう。 まさか「革命×テレビ」程度で終わりってことはないよねぇ。 まぁ B-CAS でスクランブルかけてる時点で日本のデジタル放送は Walled Garden に引きこもってるわけで, もう終わってる気もするけど。