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ビジネスジャーナル > 政治・行政ニュース > 江川紹子が見る“桜を見る会”問題
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江川紹子の「事件ウオッチ」第140回

江川紹子が抱える「桜を見る会」をめぐる憂鬱…繰り返される不明朗な記録廃棄、深まる疑惑

文=江川紹子/ジャーナリスト
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2019年4月13日に東京・新宿御苑で行われた「桜を見る会」の様子(写真:ロイター/アフロ)

「今、こんなことをやっている場合か」「ほかに議論すべき問題があるのではないか」――総理大臣主催の「桜を見る会」を巡る野党の追及が長引くにつれ、そう言って批判をしている人たちがいる。

 彼らのうんざり加減には、私も共感する。こういう話題が長々と与野党対決のテーマになっていることは、実に憂鬱で仕方がない。

 しかし、問題を長引かせているのは誰だろう。今の事態を招いている原因は何だろうか。時系列で振り返りながら考えてみたい。

加計問題を想起させた、不意打ちの“ぶら下がり対応”

 国会でこの問題が本格的に取り上げられたのは、今年5月13日の衆院決算行政監視委員会が最初。日本共産党の宮本徹議員が参加者や経費が急増していると批判し、「桜を見る会」に右派メディアとして知られるネット番組の出演者など、安倍晋三首相に近い人たちが招かれていると指摘した。

 続いて同月24日の衆院内閣委員会で立憲民主党の初鹿明博議員が、「桜を見る会」の経費増加や毎年同じ業者が飲食の提供を行っていることなどを追及した。

 こうした野党議員の問題提起に、政府は「突っぱねる」という方針で臨んだ。

 宮本議員の質問には、菅義偉官房長官が「各府省からの意見を踏まえて、幅広く招待をさせていただいている」と素っ気なく答えた。初鹿議員に対しても、内閣府官房長が「適切にやらせていただいている」と取り合わなかった。

 臨時国会が始まり、11月8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子参院議員がこの問題について集中的に質問した。ネット上に掲載されている招待客らのブログなどを挙げながら、閣僚や自民党議員が後援会関係者や支援者を招き、公費でもてなしている公私混同を追及した。

 さまざまな「証拠」を突きつけられたのに、この時も政府の「突っぱねる」方針は変わらなかった。安倍首相は「私は、主催者としての挨拶や招待者の接遇は行うのでありますが、招待者の取りまとめ等には関与していない」と言い切った。

 安倍首相だけではない。萩生田光一文科相は、自らのブログで「今年は平素ご面倒をお掛けしている(後援会)常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きした」と書いているのにもかかわらず、国会では自分が推薦したことを否定。13日の衆院文科委員会では、「私がお招きした事実はない」「推薦する仕組みがございません」と断言した。

 その一方で、同じ13日に菅官房長官が、来年の「桜を見る会」の中止を発表。その後、安倍首相が、わざわざぶら下がり取材を受けて、「私の判断で中止することにした」と強調した。

 15日にも、首相は2回のぶら下がり取材に応じた。うち1回は、ホテルでの「前夜祭」などについて、20分ほどかけて、安倍事務所の立場を説明した。このぶら下がりは、実施の10分ほど前に決まったもので、首相番の若い記者が、準備する時間もなく質問することになった。改めて記者会見に応じるかを尋ねても、首相は「いま質問してください」との答えで、「これで終わりにしたい」という思いが強くにじんでいた。

 その様子に、加計学園の岡山理科大学獣医学部新設を巡る問題で、沈黙を続けていた同学園の加計孝太郎理事長が、18年6月に突如開いた記者会見を思い出した。このとき、会見の案内は実施のわずか2時間前で、その日は関西メディアは朝から大阪の地震の取材で大わらわだった。しかも、出席を地元記者に限定したため、この問題に詳しい東京、大阪のベテラン記者は参加できない中、30分ほどの会見だった。厳しい質問が来ない環境で、とにかく記者会見をやった実績を作ることが目的のように見えた。

 今回の安倍首相も、積極的に取材に応じ、カメラの前で語っている様子がテレビなどで流れれば、説明責任を果たしたかのような印象を国民に与えられ、世論は収まると思ったのではないか。

 実際、翌朝の報道番組で、辛坊治郎キャスターは「(「桜を見る会」についての話を)連日聞かされると、追及している野党の人たちはバカなんじゃないかと多くの人は思います」と言い放ち、首相の逃げ切りを後押しした。

 しかし、このような世論対策は逆効果だった。

 16日土曜日、経済事犯やコンプライアンス問題に詳しい元検事の郷原信郎弁護士が、「前夜祭」で参加者にホテル名義の領収書が渡されていたことに関する安倍首相の説明について、疑義を呈する論考をネットで発表。週明けには、19日にNHKが都内のホテルに取材するなど、安倍首相の説明を検証する報道が相次いだ。ネット上でも、倫理上の問題や法律違反の可能性を指摘するコメントが飛び交った。

政府・与党は事実と向き合い、説明を

 20日になって、ようやく安倍首相が参院本会議で「私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と一部関与を認めた。それでも、「内閣官房と内閣府が最終的に取りまとめたプロセスに一切、関与していない」として、以前の答弁が虚偽だったとの指摘は否定した。

 「推薦する仕組みがございません」とまで言い切っていた萩生田文科相も、22日の参院本会議で、首相と同じ言い回しで、招待客の推薦をしていたことを認めた。

 招待枠に関しては、首相が1000人程度、官房長官ら官邸幹部が約1000人、自民党関係者約6000人など、政治家枠が各界功労者や勲章受章者など約6000人を上回ることを、菅官房長官は20日の会見で認めた。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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