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メダルかじりは「愛情表現」!? 河村市長の言い訳に抱いた、違和感の正体/ダースレイダー

ビジネス

 2021年7月23日から8月8日まで開催されていた、東京五輪2020。新型コロナウィルスの流行により1年延期となった本大会は、開幕前より組織委員会トップの交代や、開会式関係者の辞任・解任など、相次ぐトラブルが国民の不満を募らせた。

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 東京大学中退の経歴で、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(44・@darthreider)の連載「時事問題に吠える!」では現代に起きている政治や社会の問題に斬り込む。

 オリンピックではさまざまな問題が起こったが、なかでも強烈なインパクトを残したことのひとつが、愛知県・名古屋の河村たかし市長の“金メダルかじり問題”

 この問題から見える日本社会、そして行政の実態とは何か。今回は、ダースレイダーが2回にわたり解説。まずは、その前編をお届けする(以下、ダースレイダーさんの寄稿)。

五輪一色のメディアと、メダル速報の違和感

 2021年8月8日、東京五輪2020が閉幕しました。開催中の日本メディアは、ほぼ五輪一色でした。一般紙、スポーツ紙、そしてNHKもです。NHKにいたっては、BSのワールドニュースの枠を取っ払い、Eテレの子ども番組は午前9時からは五輪に切り替えるという徹底した五輪シフトを敷いていたわけです。

 僕はいろいろな新聞のデジタル版を購読しているので、メダル獲得速報も次から次へと入ってきました。五輪は世界中のアスリートがダイバーシティ(多様性)と称した看板のもとに集まった大会ですが、日本のアスリートのメダル速報だけが、各メディアから送られてくる状況でした。とにかく速報に次ぐ速報。

 ひとつ不思議だったのが「なんでメダルを取ったことが速報なのか」ということです。もともと競技のファンで追っている人であれば、別に速報などなくても当然追っているであろうし、逆に、ファンでないのであれば早く知る必要はまったくありません

 朝刊でその情報を見て「そうなんだ」くらいの興味の人もいるとは思いますが、とにかくメダル獲得速報が次から次とやってきました。その中でも群を抜いて目立ったメダル記事は、やはり「河村たかし名古屋市長の金メダルかじり」です。

緊急事態宣言下でのメダルかじり

『おい河村!おみゃぁ、いつになったら総理になるんだ』(ロングセラーズ)

『おい河村!おみゃぁ、いつになったら総理になるんだ』(ロングセラーズ)

 河村市長のメダルかじり事件は、五輪後半の話題をかっさらってしまいました。これは、ほぼすべての人にとって不本意なメダル速報だったと思います。

 この問題は、女子ソフトボールで金メダルを獲得した名古屋市出身の後藤希友選手が、表敬訪問で名古屋市庁を訪れた際に、河村市長が突然マスクを外し、後藤選手の金メダルにかじりついたというものです。

 五輪が行われている東京および首都圏3県は、世界的規模でのパンデミックによる緊急事態宣言下です。特にデルタ株が世界中に猛威を奮っている中で開催されたので、選手たちはバブル方式(開催地を大きな泡でとり囲むように大会関係者を隔離し、外部と接触させない方式)の感染対策がなされたオリンピックバブルの中にいます。

 バブルの中でも大会関係者の感染が400人以上出てしまったわけで、空港での検疫の杜撰(ずさん)さからも僕はバブルなど存在していなかったと考えていますが。メダルの授与も、従来のようにメダルを掛け合うなどせず、自分で自分の首にかけるといった対策が行われていました。

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