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98年前は瓶入りで販売「キユーピー マヨネーズ」の秘密と変遷を知るともっと食が楽しくなる

ビジネス

今から98年前の1925年、日本で初めてマヨネーズが製造・販売された。多くの人が今日まで慣れ親しむ「キユーピー マヨネーズ」である。キユーピーの創業は1919年(当時は食品工業という社名だった)。創業当初はまだマヨネーズを手がけておらず、主にソース類の製造・販売をしていたという。

1925年、日本で初めて製造・販売されたマヨネーズとして知られ、日本人の食卓に大きな影響を及ぼした「キユーピー マヨネーズ」

しかし、それから数年後、あるできごとをきっかけに社会が一変。そこで同社ではマヨネーズ開発を手がけ、1925年の発売に至った。

以来、日本人の食卓に大きな影響を及ぼし、今なおシェア独走の「キユーピー マヨネーズ」だが、その誕生秘話やトリビアなど、まだ知らない人がいるのも事実。

そこで今回は「キユーピー マヨネーズ」の開発担当者であり自身も「マヨネーズが大好きだ」というキユーピー家庭用本部 開発企画部の中村友美さんに話を解説してもらいながら、マヨネーズの変遷と秘密を紹介したい。

キユーピー家庭用本部 開発企画部の中村友美さん

98年前の日本初のマヨネーズは瓶入りだった

冒頭で触れた通り、創業当初のキユーピーはソース類の製造・販売をするメーカーであり、マヨネーズの製造・販売は行なっていなかった。なぜなら市場では「生野菜を食べる習慣」自体がなく、まだまだ西洋の食文化に馴染みが薄い時代だったからである。

しかし、1923年に関東大震災が発生。甚大な被害を受け、多くの家屋や資材が焼けたが、この被害の後、再建に際し、多くの建物が西洋的なものへと変化。これに合わせてそれまで大半の日本人が着ていた「着物・袴」から「衣服」へと変化し、日本国内の西洋化が一気に進んだ。

これを見たキユーピー創始者は「食卓にも変化が訪れるはずだ」とし、満を持してマヨネーズの製造・販売をスタート。市場がまったくない時代の1925年に「キユーピー マヨネーズ」を瓶入りで発売した。今の価格に換算すると、当時の「キユーピー マヨネーズ」は1瓶約1700円。庶民にはなかなか手が届かない価格ではあったが、そのおいしさもあって次第に家庭に欠かすことができない商品として確立されていった。

1925年の発売当初の「キユーピー マヨネーズ」

「『キユーピー マヨネーズ』は1925年に日本で初めてマヨネーズを製造・販売されましたが、当初より卵黄タイプのコクとうま味を生かした商品でした。

ただし、発売当初のマヨネーズは生活者にとっては知られていないもの。整髪料(ポマード)と間違えられたというエピソードもあるほどだったと聞いています。

そのため、マヨネーズが描かれた絵画を新聞広告に採用したりと、、日本に新しい食文化を広めようと創意工夫を凝らしました」(キユーピー・中村さん)

発売当初、有名画家が描いた「キユーピー マヨネーズ」の広告用の絵画

発売から16年にして、出荷量は500トンに

発売当初こそ高額だった「キユーピー マヨネーズ」だが、実は誕生から98年もの間に複数回の値下げを実施。このことも、日本人にマヨネーズを浸透させた理由の一つでもある。

「創始者は、日本人全体の体格向上や食生活の充実を強く願っていました。そのため、一人でも多くの日本人にマヨネーズおよび新しい食文化を広めたかったと聞いています」(キユーピー・中村さん)

営利を超えたこういった思いはやがて実を結び、発売から16年後の1941年時点で「キユーピー マヨネーズ」の出荷量は500トン近くになったという。

また、創始者は「良い商品は良い原料から生まれる」と常々考えていたため、原料が入手しにくくなった戦中および終戦直後は製造をいったん中止した時期もあった。

しかし、1948年に創始者が納得できる原料の入手ができるようになり、再び「キユーピー マヨネーズ」は日本人の食卓で親しまれるようになった。

「キユーピー マヨネーズ」の味と楽しさを支えるポリボトルとダブルキャップ

「マヨネーズ=キユーピー」として、日本人の間で定着したことを受け、1957年には、これまでの食品工業から社名を「キユーピー」に変更。さらにその翌年の1958年には、それまでの瓶容器や小袋入りのマヨネーズに加え、使いやすい自立式ポリボトル容器入りのマヨネーズを発売した。

実は「キユーピー マヨネーズ」の変遷を辿る際、この「容器」や「キャップ」の進化も合わせて触れないといけないのだと中村さんは言う。

「マヨネーズは酸素が苦手です。酸素に触れ、酸化することでおいしさは損なわれてしまいます。そこで当社ではポリボトルにも工夫をしています。

一見、プラスチック1枚で作られたポリボトルのように見えるかもしれませんが、実は多層になっていて酸素がマヨネーズまで通りにくいように工夫しています。これもまた『キユーピー マヨネーズ』のおいしさを守る秘密の一つです」(キユーピー・中村さん)

「キユーピー マヨネーズ」のボトルには何層ものプラスチックが採用されている

さらに現在の「キユーピー マヨネーズ」はダブルキャップ仕様になっている

「マヨネーズを使うシーンをより楽しくしてほしい」といった願いからの発案された口型だ

また、現在の「キユーピー マヨネーズ」ではダブルキャップが採用されている。「細口」「星型」と使い分けることができる仕様で、さらに「キユーピー マヨネーズ」350gには「3つ穴」「星型」が採用されている。

デコレーション的にマヨネーズをかけたい場合は「細口」、たっぷり使いたい場合は「星型」、3本の線をかきたい場合は「3つ穴」と使い分けることができるのが特徴。

これらのことで、生野菜や料理に使う際の見た目にも配慮し、マヨネーズを使うシーンをより楽しくしてほしい、という思いが込められている。

現在の「マヨネーズ類」は10種類をラインナップ

ところで、自立式ポリボトルの「キユーピー マヨネーズ」が登場した1958年はキユーピーが日本で初のドレッシングを発売した年でもあった。「フレンチドレッシング(赤)」という商品です。今ではよく目にする「シーザーサラダ」「コブサラダ」といったメニューも、キユーピーが提案し、今では誰もが知るメニューとなった。

マヨネーズ、そしてドレッシングの提案により、日本人の間ですっかり定着した「野菜を食べる」習慣だが、現在では「マヨネーズ類」は現在、10種類もの商品がある。

10種類におよぶ現在の「マヨネーズ類」

中村さんオススメの一つ「キユーピー 燻製マヨネーズ」

このうち中村さんが特に「bizSPA!世代」にオススメしたいのは「キユーピー燻製マヨネーズ」と前述の「キユーピー マヨネーズ」350gだという。

「『キユーピー燻製マヨネーズ』は燻製したお酢を使用しているもので、ゆで卵、ゆでたじゃがいも、スティック野菜などにつけるだけで美味しく召し上がることができるのでぜひお試しいただきたいです。

また、『キユーピー マヨネーズ』350gは先ほどもご紹介した通り、3つ穴キャップによって3本線を描くことができます。まんべんなく線描きすることで、サラダだけでなく、お好み焼きやパン、丼など料理を見栄えよく演出できます」(キユーピー・中村さん)

「人生100年時代」に貢献できるのもキユーピーの強み

近年、キユーピーではSDGs、サステナビリティにかかる啓発も積極的に行なっている

聞けば、日本産の卵の約1割をキユーピーグループが使っているという。これだけの使用量であるからこそ、社会的な意識も強く持っており、特に近年高まりを見せるSDGs、サステナビリティにかかわる意識も当初より持っていたという。

「まず、『キユーピー マヨネーズ』は、発売当初からコクとうま味が特徴の卵黄タイプですが、マヨネーズを作る際に使わない卵白や殻も、余すことなく使っています。

また、『食を通じて社会に貢献したい』という創始者の想いはいまでも受け継がれています。特に近年『人生100年時代』と言われるようになった今では、サステナビリティ目標として『健康寿命延伸への貢献』を掲げています。そして、その達成したい想いを、さまざまな商品に反映させています。

特に健康寿命の延伸を考えた際、『要介護の主要因であるフレイル』、『認知症』『成人期における疾病の要因となるメタボ』、さらに全世代にとって日常の健康にかかわる『免疫』の4つは、とても重要で対策すべきものですが、当社の商品は、それぞれの領域で強みを発揮でき、多くの人々に貢献できると考えています」(キユーピー・中村さん)

使う人にピッタリのマヨネーズをチョイスして健康的で美味しく楽しい食生活を

「食と健康への貢献」をミッションに掲げ、「これからも楽しみながら開発していきたい」と中村さん

「キユーピー マヨネーズ」の開発担当である中村さんは、前述のような「食と健康への貢献」を常に意識しながら、マヨネーズ開発を楽しみながら行なっていきたいとも語ってくれた。

「マヨネーズがあることで、野菜を食べるきっかけになったり、食事の時間がより楽しくなったりすることを目指しています。そして、私個人も楽しみながら開発業務に取り組んでいます。

先ほどご紹介した通り、現在の『マヨネーズ類』は10種類をラインップしており、それぞれ、お使いいただく方個々のニーズにお応えできるよう開発してきました。

ぜひお客様にはご自身に合うマヨネーズ類をチョイスしていただき、今後も健康的で美味しく、食べる楽しさをお届できれば嬉しいです」(キユーピー・中村さん)

「キユーピー マヨネーズ」を、健康的に美味しく楽しく口にしていきたい

1925年のマヨネーズ誕生時点にして、「日本人への健康寄与の思い」が隠されていた「キユーピー マヨネーズ」。言い換えればキユーピーはこのはるか98年前の時点で、すでにSDGs、サステナビリティを実践していたと言って良いだろう。100年近く「健康寄与」を意識し商品開発に活かしてきたキユーピー。その美味しさと合わせて、その思いをしっかり感じながら口にしたいと思った。

<文/松田義人>

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キユーピー マヨネーズ
https://www.kewpie.co.jp/mayonnaise/

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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