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HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

綿100%で攻略する。

2018-12-26 05:12:56 | Weblog
 今年も残すところ、今日を入れて6日しかない。小売業は冬物在庫を早晩処分しなければならないが、1月なると筆者が住む福岡は日に日に陽射しが春めいていく。個人的にはすでに冬物より春先に着れそうなものに目が行くが、まだまだ気温の低い日もあるので、明るい色合いで保温力のある商品なら、プロパーでも購入したい。

 ユニクロでは12月のNew Arrivalで、スピーマコットンの薄手のクルーネックセーターが店舗には入荷。ただ、レギュラー商品だから企画が今イチで、先買いする気にはならない。こちらが欲しい時には、イメージするような商品がなかなか見つからないのだ。

 筆者が特別なわけでもないと思うが、毎年同じような繰り返しばかりの業界に、いよいよ最新テクノロジーを駆使して挑む企業が出現した。スタートアップのSENSYは、AIを活用して顧客の購買履歴や感性を分析し、需要予測を立てるという。序でに全国的な気温変動や陽射しの質も分析して、シーズンエリアに合う色目や素材開発までやってくれるとありがたいのだが。はたしてどんな結果をもたらすのだろうか。

 話を春物に戻すと、供給過剰のアパレルでもロスを恐れ、梅春物の生産に踏みとどまるのなら、着る側が工夫するしかない。考えられるのは、カットソーとコットンニットや裏毛起毛のスウェットを重ね着する方法。または肌触りのいいカシミアのTシャツとコットンのセーターを組み合わせるような着方だ。

 まあ、カシミアのTシャツはともかくとして裏毛起毛ならいけるかもと、事務所周辺に建ち並ぶ天神のファッションビルを見て回ったが、この秋冬はスウェットはルーミーなものがトレンド。ジャストフィットがすっかり影を潜めている。インナーがゆるゆるだから、当然アウターも太めを着用しなければならない。ついに身幅を細めに縫い直すしかないのかとさえ考えながら、キャナルシティ博多まで出かけて、「ZARA」を訪ねてみた。



 すると、梅春にちょうどいい無地の「ハイネック」のスウェットが企画されていた。ところが、12月20日の時点で黒やグレー、カーキは在庫があるのに「ナチュラル」といった春先に着れる色がXLまで完売。公式サイトでも同じように売れていた。商品はセール対象になっておらず、価格は5990円と決して安くはない。再入荷は未定とのことだった。ZARAはECで受注した商品は店舗在庫から引き当てて、そのまま出荷する手法に踏み切っている。

 つまり、秋冬物でもインナーは「ブライトカラーを着たい」とか、「春先まで着られるトーンを買っておこう」とかと考えるお客が店舗、ECを問わず購入しているのではないか。しかも、ビッグサイズまで完売しているところを見ると、トレンドのドームカジュアルが輪をかけたのだろう。秋冬物のブライトカラーだから、もともと少なめの在庫投入だったのかもしれない。他店を見てもブライトカラーの方が売れている感じだ。筆者が特別なわけではなくて、同じことを考えるお客は意外に多いと実感した。

 キャナルシティ博多から歩いて行けるJR博多駅のアミュプラザ博多は、展開されるブランドがほとんど天神にあること、博多マルイはアパレルがほとんどないので、ともにスルー。隣のバスセンターにあるしまむらの「アベイル」を覗くと、ここもゆるゆる主体でロゴ入りのヤンキーテイスト一辺倒だ。端から期待はしていなかったが、折角なのでZOZOTOWNまでが参入した機能性インナーをチェックしてみた。




 すると、FIBER HEATシリーズで吸湿発熱効果を売りにした「綿100% 裏起毛Tシャツ」パッケージが目に留った。クールネックだけでなくハイネックまで揃い、価格は長袖980円、半袖780円。すでに値下げされ、レジで40%引き(後日、自宅に届く新聞に折り込まれたチラシを確認すると、きちんと表示されていた)になる。「綿に対してオーガニックコットン50%使用」という素材内容の真偽は別にしても、純綿の発熱インナーが600円以下で買えるなら、セーターやスウェット以上に押さえたい気持ちになる。

 機能性インナーはユニクロを筆頭に量販店、ディスカウントストア、ドラッグストアまでが投入し、もはや冬場の定番商材になった。一時はユナイテッドアローズのビューティー&ユースでもレジ横に機能性インナーのパッケージが置かれていたほどだ。そうしたマーケットにZOZOTOWNが満を持して「ZOZOHEAT」を投入したことで、「選択のポイントは」「どれが買いか」を解説する記事もチラホラ見受けられる。

 ZOZOTOWNは、先行する「ユニクロとの違い」を公式サイトやライブストリーミングで堂々と謳っている。それによると、価格はヒートテックが1,069円、ZOZOHEATが990円(期間限定価格はヒートテックが853円、ZOZOHEATが790円)、吸湿発散温度はヒートテックが2.5℃、ZOZOHEATが2.9℃、そしてサイズ展開はヒートテックが8サイズ、ZOZOHEATが1000サイズ以上と、紹介されている。
 
 ZOZOTOWNは価格、保温性、サイズ展開では、「当社の方が勝っている」と言いたいようだ。ただ、ZOZOHEATは通販でしか購入できないので、それのみを購入する(送料200円)お客がどれほどいるのかと、考えてしまう。

 個人的には素材の混紡率が気になるところだ。ZOZOTOWNはZOZOHEATで「高品質メリノウール混」を謳っており、混紡率はアクリル48%、レーヨン44%、ウール5%、ポリウレタン3%。つまり、5%分がメリノウールになる。ユニクロのヒートテックはポリエステル38%、アクリル32%、レーヨン21%、ポリウレタン9%。両者の違いはZOZOHEATはヒートテックにあるポリエステルの代わりにウールが少量混紡され、ユニクロはZOZOHEATにはないポリウレタンを含め、すべて合繊という点だ。

 ZOZOTOWNは、ZOZOHEATの綿タイプも揃える。混紡率はコットン 95%、ポリウレタン 5%。もっとも、ヒートテックの比較では、吸湿発散温度でZOZOHEATがヒートテックより0.4℃高いという検証データを得たようだが(綿タイプもデータは同じというのは不可思議さ)、これが実際に着た時に違いをわかるほどの温度差なのか。着てみてないので何とも言えないが。個人的には静電気がダメなので、ヒートテックは一度も着たことがないし、ウール混のZOZOHEATも着ることはないと思う。

 というか、子どもがこの時期に肌の異状を訴え皮膚科を受診すると、医師から「◯◯◯◯◯◯を着ていませんか」と、問い質されたという話を最近よく耳にする。◯◯◯◯◯◯とは、別にブランドを特定しているのではなく、機能性インナーの総称として医師があげたものだ。子どもは大人ほど肌が強くないし、敏感肌の子も多いだろうから、合繊オンリーを着ると保温性よりもアレルギーが先に立つのかもしれない。

 筆者も肌はあまり強いほうではないし、着用しないことでアレルギー症状が抑えられている面もあると思う。そうしたことからもアベイルのFIBER HEAT「綿100% 裏起毛Tシャツ」は、筆者にとってマストバイだと言える。コットンニットやスウェットを探していたが、素材と保温性にはやはり惹かれてしまう。試しにクールネックの長袖と半袖を購入した。

 先日、気温5℃ほどの大濠公園で軽いランニングをしたので、素肌に着たTシャツの上に長袖の綿100%裏起毛Tシャツを重ね着した。アウターは綿97%、ポリウレタン3%のジャージだ。ウォームアップではそれほど保温性は感じなかったが、コースを1周しただけで暖かさを実感できた。普通の長袖Tシャツでは、汗をかくと逆に気化熱で寒くなる。だから、アウターの下に12オンス程度のトレーナーと綿100%裏起毛Tシャツを重ね着すれば、1月から街着でもイケるかもしれない。

 せっかくなのでこの機能を生かして、ファッションアイテムのコットンセーターやスウェットを開発できないのかと思う。静電気が嫌な筆者には、冬場に屋外でランニングする時のウエアになればなおさらいい。苦戦するしまむらは、ここら辺の商品開発が復活の糸口になるのではないかと思う。風合いは質感はもちろん、アレルギー体質などから「綿100%」という素材に惹かれる消費者は意外に多いはずだ。「綿100%で攻略せよ」。経営者がこれくらい大胆な戦略を宣言するような2019年であってほしい。
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