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魔法は“描く”もの『とんがり帽子のアトリエ』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は『とんがり帽子のアトリエ』をレビューします。魔法使いに憧れる少女が、魔法は“描く”ものだという秘密に触れてしまい、魔法使いを目指すことになる、という作品です。著者は白浜鴎(しらはま・かもめ)さん。講談社「モーニング・ツー」で連載中。単行本は7巻まで刊行中です。

『とんがり帽子のアトリエ』作品紹介

『とんがり帽子のアトリエ』書影

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『とんがり帽子のアトリエ』 1~7巻 白浜鴎/講談社
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魔法は“かける”のではなく“描く”もの

本作の主人公はココ。魔法使いに憧れる、ごく普通の少女です。母親からは、魔法の力を持って生まれた人じゃないと、魔法使いにはなれないと教えられていました。ところが、たまたま村へやってきた魔法使いキーフリーが、魔法を使う瞬間をこっそり覗いてしまい、魔法は“かける”ものではなく“描く”ものだという秘密を知ってしまいます。

幼いころ、仮面を付けた魔法使いと出会い、魔法の絵本とペンとインクを購入していたココ。秘密を知って、試しに絵本に描かれた模様を真似して描いて、得体の知れない魔法を発動してしまいます。魔法に巻き込まれ、ココの目の前で石化してしまう母親。実は、特別な「魔の墨」で、決められた「魔方陣」を描けば、魔法は誰でも使えるものだったのです。

キーフリーに救出されたココは、本来なら記憶を消されるはずでした。しかし、母親を救い出すため、そして、絵本の謎を解くため、魔法使いを目指すことになります。キーフリーに弟子入りし、魔法の修行を始めるのです。

正確な図形を描くことが求められる

この「魔法は“描く”もの」という設定が、本作をありきたりなファンタジーとは一線を画すものにしています。一般的なファンタジー作品では、魔法の発動は「呪文を詠唱」や「呪文を書く」あるいは「念じる」ことが条件になっているパターンが多いと思います。杖を振るなど「魔力を封じた道具を使う」パターンもありますが、道具に魔法をかける段階ではやはり、唱える、書く、念じる等が常道でしょう。呪文、すなわち「言葉」を正確に使うことが、魔法の発動の要になっているというわけです。

ところが本作では、魔法は“描く”もの。つまり、歪んでいないキレイな直線や円など、正確な「図形」を描くことが魔法の発動条件になっています。それを応用し、わざと切れた円を描いておき、発動させたいタイミングで線を繋げるといった技まであるのです。正確な線を引くのって、難しいんですよね。ちなみに作者の白浜さんは東京藝術大学デザイン科を卒業後、フリーのイラストレーター、漫画家として活動しているそうで、非常に緻密で精緻な描き込みが魅力的です。

仕立て屋の娘だったココは、布に正確な線を引くのが得意だったため、魔方陣を描くのも簡単に……いいえ、そんな甘い話はありませんね。最初は失敗ばかりでした。描いた矢印が1本だけ長かったため、力がそちらへ偏って、隣の席の弟子仲間に水を浴びせてしまったり。でも、その1本だけ長いと力が偏ることを逆手に取るなど、ココは他の魔法使いや弟子たちとはちょっと違った自由な発想でさまざまなピンチを乗り越えていきます。

そう、本作は正統派ファンタジーであるのと同時に、正統派の成長譚でもあるのです。

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