ヴァージルのインスタグラムのアカウントに、ルイ・ヴィトンの古いトランクが掲載されたのが3月26日13時頃(日本時間)。それと前後して、ルイ・ヴィトンの前メンズ・クリエイティブディレクターだったキム・ジョーンズは「Congratulations to my friend Virgil !!! Love and respect」という言葉と、2人のツーショット写真を掲載した。かれらが立っている場所は、ヴァージルの個展“PAY RER VIEW”を開催している東京・元麻布のカイカイキキギャラリーだ。ルイ・ヴィトン側からの発表はまだだが、この2人のやりとりからして就任は確定とみていいだろう。
ヴァージル・アブローは1981年、アメリカ・シカゴで生まれた。大学で建築(ストラクチャー・エンジニアリング)を学び、博士号を習得した後、建築関係の会社に一旦は就職。その後、カニエ・ウエストにそのセンスを見込まれ、ツアーの物販品やアルバムのデザインを手掛けるようになり、2012年にはカニエが設立したクリエイティブエージェンシー、DONDAのクリエイティブディレクターに就任した。
転機となったのは2012年12月。PYREX VISION(パイレックスビジョン)というビデオプロジェクトを立ち上げで、映像をYouTubeで流したところ、パリのセレクトショップ、コレット(現在は閉店)のサラから「このビデオに映っている服は買えるの?」と問い合わせがあった。こうして、チャンピオンのデッドストックにグラフィックデザインを施したスウェットパーカやTシャツは、瞬く間に世界中のストリートキッズが渇望する商品となったのだ。
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そして、2014年にOFF-WHITE(オフ-ホワイト)をスタート。その後の活躍は、今さら詳しく説明するまでもないだろう。今ではメンズとウィメンズの両方をパリ・コレクション期間中にランウェイ形式で発表し、ナイキとのコラボレーションプロジェクト「THE TEN」のスニーカーが、世界中で争奪戦になったのも記憶に新しい。ストリートとラグジュアリーの2つの側面を持つ“ラグジュアリー・ストリート”というジャンルを確立させたのは、間違いなく“かれ”である。
昨年6月のルイ・ヴィトンのメンズコレクションのデフィレ(ランウェイ)で、最後の挨拶で出てきたキムは、THE TENのエアジョーダンⅠを履いていた。この時に、2人のつながりを感じると同時に、いつかこんな日がくるのではないかと夢想したのを覚えている。
そして、このニュースを聞いて、3年半前のヴァージルの言葉を反芻した。2014年にGQ JAPANでインタビューした時にかれは、「トップメゾンのクリエイティブディレクターになるのはゴールのひとつ」と静かに熱気を込めて話してくれた。その言葉が今、現実になったのである。おめでとう、ヴァージル! これからも君のクリエーションを、いちジャーナリストとしてずっと見続けて、伝えていきたいと思っている。
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