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日産、4年ぶりに対面での入社式を開催 「一緒にワクワクする未来を創っていきましょう」と内田CEO
2023年4月4日 08:00
- 2023年4月3日 開催
日産自動車は4月3日、神奈川県横浜市にある日産グローバル本社ギャラリーで2023年度の入社式を開催した。
前年度まではコロナ禍の影響でオンライン開催となっていたが、今年度は2019年以来、4年振りに対面形式で入社式が行なわれ、大卒のエンジニア系434人、事務系68人、高卒・専門学校卒323人の計757人が入社式に参加。前年度の615人からエンジニア系の採用を増やしたことで入社人数が増加している。
なお、この入社式は前年度に入社して今年で2年目となる社員4人、4年目移行の社員3人という計7人の若手社員が中心になって運営し、後輩となる新入社員たちに範を示した。
「一緒にワクワクする未来を創っていきましょう」と内田CEO
入社式では最初に、日産自動車 代表執行役社長兼CEOの内田誠氏が登壇してあいさつを行なった。
「新入社員の皆さん、入社おめでとうございます。3年以上続くコロナ禍もようやく少し出口が見えてきました。こうして入社式を対面で実施するのも、2019年以来、4年ぶりとなります。同じ空間で皆さんを直接お迎えすることができ、本当にうれしく思います」。
「今日の入社式には総勢757名の方が参加しています。皆さんは今、どういう思いでこの式典に臨んでいるでしょうか。これから始まる社会人生活への不安や緊張、当然あると思います。中には、成し遂げたい夢に向かって胸をワクワクさせている人もいると思います。同期の仲間は、これから時にはライバルとなり、時には苦難を共にしてくれるかけがえのない存在になります。職場は違っても、どうかこの出会いと絆を大切にしてほしいと思います」。
「皆さんもごぞんじのとおり、世界は今、大きく変化しています。われわれの自動車業界も100年に1度の変革期にあると言われています。お客さまのクルマに対する価値観は変化しており、市場のニーズも地域ごとに大きく異なっています。また、環境問題や社会課題に対し、企業として責任をしっかりと果たしていくことも重要になっています」。
「こうした業界の歴史的な転換期に、今日、われわれの新しい仲間となった皆さんにお願いしたいことが3つあります。1つめは『感性を磨き続けてほしい』ということです。自動車がもたらす価値はこれからさらに広がり、お客さまの生活と社会により深くつながっていきます。時代の変化を的確にとらえ、新たな価値を生み出すには、常に自分自身をアップデートしていくことが大切です。皆さんには、社内で上司や同僚からたくさんのことを学ぶとともに、ぜひ、普段の生活においてもさまざまなことに関心を持ち、自身の感性を磨き続けてほしいと思います」。
「2つめは、『自分らしさを大切にしてほしい』ということです。日産は世界160以上の国や地域で事業を展開しています。多様なバックグラウンド、考え方を持った社員が働いており、それが会社の大きな強みとなっています。申し上げたとおり、事業環境は大きく変化しており、今までのやり方の延長線では対応できないケースも増えています。その壁を乗り越えるためには、今まで以上に社員1人ひとりの強みや個性を生かすことが重要となります。その点で、新入社員の皆さんにしかできないことはたくさんあります。自分らしさを大切に、皆さんならではの既成概念にとらわれない新鮮な発想で、社内に新しい風をどんどん吹き込んでほしいと思います」。
「最後は『失敗を恐れず、何事にもチャレンジしてほしい』ということです。日産自動車は今年、創立90周年を迎えます。その長い歴史の中で、われわれの先人たちはさまざまな困難に直面しながらも、『他がやらぬことやる』というチャレンジ精神で、成功と失敗を繰り返しながら日産ならではの価値を生み出してきました。今こそその精神を最大限生かし、会社を成長させていく必要があります。挑戦してもすぐには結果が出ず、何度も挑戦し、初めて答えが得られるケースも多く出てくると思います。ただ、私はそうして得られたものこそ大きな価値があると思っています。そしてそれこそが、日産のコーポレートパーパスである、お客さまの生活を豊かにするために『イノベーションをドライブし続ける』ということにつながると思います」。
「失敗を恐れる必要はありません。この先10年、さらにはその先に向け、ぜひ、一緒にワクワクする未来を創っていきましょう。これからの皆さんの活躍を大いに期待しています」と語り、新入社員たちの今後の活躍にエールを送った。
内田CEOと「サクラ」開発に携わった若手社員のトークセッション
続いて、新入社員たちにこれから自分たちも参加することになる日産のクルマ造りなどについてイメージしてもらえるよう、トークセッションと質疑応答が行なわれた。
トークセッションでは内田CEOに加え、軽自動車の新型BEV(バッテリ電気自動車)「サクラ」の開発に携わった3人の若手社員が登壇し、サクラの開発エピソードなどを紹介。
商品ラインナップ戦略部の飯島厚氏は「私は営業向けの説明会を担当することもあるのですが、(サクラが発売になる)前のタイミングはコロナ禍の影響が厳しい状況で、完全にオンラインのみで進めていました。従来なら実物を見ながら説明できるのですが、サクラでは画面越しにクルマが持つ魅力や企画について説明することになって、しっかりと伝えることに苦労しました。例えば内装ですが、これまでの『デイズ』などの軽自動車とは異なる魅力を持っているのですが、これを口で説明してもなかなか伝えることができませんでした。この経験で、クルマは実際に車内に入ることで分かることがたくさんあるんだと実感しました」とのエピソードを紹介した。
パワートレイン・EV技術開発本部の堀内あかり氏は「このクルマは日産と三菱自動車さんが共同開発したクルマです。ここで大変だったのは、2つの会社でもの作りに対する考え方が一部違ったところです。具体的なエピソードとしては、私は充電ポートまわりの開発を担当していたのですが、ここで径が太いオレンジ色のケーブルを使います。これが従来品だと曲げることができず、軽自動車の限られたスペースではこの影響が顕著に出て『長すぎて車体に組み込めない』という事態になりました。このような問題が発生したときに、日産の発想では『どうしてケーブルを曲げることができないのか』といった発生原因について調査して、原因をクリアするための開発に進めていくことがセオリーになっています。これが三菱さんだと『入るように曲げる手段を探して、いかに実現するか』というかなりスピーディなやり方をされています。このあたりのテンポ感が異なっていて、ギャップを感じました。結果的には『どうして根本的な原因解決を目指したいのか』について一生懸命説明して理解していただきました」と語った。
車両実験部 商品性実験グループの折茂秀一氏は「私のグループでは駆動用バッテリーのオーバーヒートの問題解決に取り組みましたが、ここではいろいろなチームが関係していたことで、メンバーの連携で苦労しました。サクラは軽自動車なのでボディが非常にコンパクトです。バッテリーは床下にドーンとまとめて搭載されていますが、例えば高速道路を100km/hで走行しようとアクセルを踏み込んでいくと、バッテリーやケーブルなどに大電流が流れることになります。大きな電流が流れると発熱するので、バッテリーの温度を上手くマネージメントしてやる必要が出てきます。これについていろいろな部署の人に参加してもらってワーキンググループを組んだのですが、バッテリーやモータはまだまだ新しい分野なので詳しい人も少なく、オーバーヒートという課題解決に参加してくれる人を見つけて連携することに苦労しました。ですが、この問題は自分たちのためではなく、お客さまが困らないようにするために必要だと説明して理解してもらい、参加をうながしていきました」と説明した。
質疑応答では事前に寄せられたものに加え、プレゼンテーションツールの「Mentimeter」を使い、新入社員が自分のスマートフォンから入力する形式で質問を集めて行なわれた。
事前募集で寄せられた「日産に入社して挑戦したいこと」では、「歴史的なスポーツカーをつくる」「シルビア&180SX復活」「日産車を定番の憧れにする」などのコメントが寄せられたが、この一覧を見た内田CEOは「“キムタク”に乗ってもらうかはともかく、自分がやったことを喜んでもらいたいということなのかなと思います。これは非常に重要で、先ほども言ったように、会社がなぜ存在するか、会社がどうありたいのかということ、そして皆さん個人がどういった“自分らしい仕事”の成果物、価値といったものをお客さまに提供したいかということで、頑張ったことで誰かが喜んでくれるということが重要だと思うんです。なので、こういった回答はいいなと思いますね」と感想を述べた。
会場からの質問では、「自動車業界は大変革期にあるとのことだが、日産は生き残っていけるのか」というストレートな問いかけが、全体の10%以上を占めたということで内田CEOに投げかけられた。
これに対して内田CEOは「僕が学生から社会人になったとき、こんな風に世の中の状況を考えていたかとふり返ってみるとそうではなくて、本当に皆さんがそんな意識を持っているということにまず感銘を受けました」。
「少しだけ事業的な話をすると、やはりコロナ前から自動車業界は100年に1度の大変革期と言われていました。残念ながらコロナ禍が起きて、例えばサプライチェーンや半導体の問題ということを皆さんも新聞などの報道で目にしていると思うのですが、そういった課題も迎えています。この1年間だけでもふり返って見ると、ロシアとウクライナの戦争が始まって、日本経済でも為替のドル円で32年ぶりの150円台、材料は高騰する、皆さんの生活でもいろいろな物価が上がってきていますよね。世界は事業を続けていくことに厳しくなっている事実があります」。
「あいさつでも言ったように、これまでやってきたことをそのままの延長線上で事業を続けていくという考え方は難しくなっていくかと思います。今、全世界のビジネス環境が変わっている中で、ではわれわれは企業としてどういった形に変わっていくのか、これを考えることが一番重要なんです。新たなことにチャレンジする、そのために誰かと一緒にやるとか、そういった変革を、自分たちが置かれた環境を見ながらどう変わっていくか、それによってお客さまにどのような日産の価値を提供できるのか。そういったことを考えていくことが重要です」。
「そこで日産は大丈夫かということですが、日産はお客さまに価値を理解していただけるようにこれからも成長していきたいと考えていますし、今日、新入社員の皆さんを迎え入れて、特に日産を選んでいただいた皆さんに対して、私は社長として『皆さんの力を発揮できる環境を提供すること』が自分の責任だと思っています。そこで皆さんは、自分が持つ“自分らしさ、個性”を存分に発揮していただいて、これからの日産の価値を、皆さんの気持ちとしてどう変えていきたいかということをどんどん発信していただきたいと思います」と回答した。
このほか、2023年度に日産自動車に入社した新入社員を代表して、村中優里子さん、藤原健太郎さんの2人が報道関係者からの質問を受けた。
村中さんは栃木県出身で、日常的に生活でクルマを利用する環境で暮らしており、子供のころからクルマに親しみを持っていたことから自動車メーカーへの就職を希望。日産は挑戦するイメージを強く訴求しており、自分も仕事での研究開発だけでなく、社会人としても挑戦していきたいと考えて日産を選んだという。変革期を迎えている自動車業界で、だからこそいろいろなことにチャレンジできると考えて活躍の場を作っていきたいと答えた。
また、藤原さんは家族や友人とクルマを使って過ごす時間が長く、就職活動でクルマを通じて誰かの安心や人とのつながりに貢献できると考えて自動車メーカーを志望。さまざまな自動車メーカーを比較していく中で、内装やパワートレーンといった開発全般で挑戦を続けている姿勢が日産の強みだと考え、魅力を感じて入社を決意したという。自動車メーカーとしてCASEへの対応なども重要になっているが、クルマが本来持っている価値や魅力は普遍的なものでもあり、CASEが発展していくに従ってより尖った魅力が求められるようになると考えているので、そういった面で研究開発に取り組んでいきたいと語った。