私の叔父さんという映画を鑑賞しました。
感想を結論から言うと、クリスは叔父さんとの暮らしを生きる目的にしているかなって思いました。
※ネタバレ感想にご注意ください。
映画「わたしの叔父さん」の簡単なあらすじ
- 監督:フラレ・ピーダセン
- 製作年:2019年
- キャスト:イェデ・スナゴー、ペーダ・ハンセン・テューセン、オーレ・キャスパセン ほか
クリスは足が悪い叔父さんを介護、そして共に仕事(牛の世話や農業)しながら生活をしていた。そんなある日、知り合いの獣医に誘われ過去に志していた獣医の道を考え始める。また時を同じくしてデートする男性も現れる。変わりなかった彼女の生活や心に、少しずつ変化が起こり始めたのだが・・・
映画「わたしの叔父さん」のネタバレ感想
会話が少ないいつもの日常、暮らしの映像
まず感想をサクっと述べると、クリスにとって叔父さんとの生活は生きる目的なのかなぁって私は思いました。
この映画って観る人によっては、「クリスが何気ない日常を大切にしている」、「クリスにとってのおじさんとの生活が何よりも彼女にとって幸せ」と感じる人もいれば、若くして叔父さんを介護して仕事に明け暮れているなんて苦労が多そうと感じる人もいると思います。
そしてこの映画、とにかくセリフが少ないです。
冒頭から、クリスが起床して朝食の支度をして、叔父さんと2人で朝食するも終始無言。だし、その後牛の世話をしている最中もずーっと無言。
だけれども映像に釘付けになってしまう。
何気ない日常のひとこまを映しているだけなんですが、なんか観ちゃう!笑(なんだこれ)
いかにクリスとおじさんとの “暮らし” が大事な要素か、感じざるをえないというか。
特に個人的には朝食のクリスが牛乳?シャカシャカ振ってから食べる仕草と、叔父さんがヌテラをパンに塗って食べる姿。すごくほっこりしちゃう。何も特別なことしていないのですけどね。
あとパンを焼くトースターが箱型じゃなくて置き型?タイプなのがいいなぁ〜って消費者目線で観てしまった・・笑
おじさんの介護
若い人が老人を介護してたりケアしているので、途中で老人を雑に扱ったりバチバチ喧嘩し合うシーンがこれから待っているのかなと思ったら、冒頭はそんななかったですね。それ地味に安心した。
この2人は良好な関係が築き上げられてるのかなとは思いました。このときは。(のちにクリスがちょっと八つ当たりするのだけど)
叔父さんも叔父さんで、全く癖がある性格じゃなくてそこ安心しました。
クリスに暴言を吐くわけでもないし、何か変なことしてるそぶりも全くない。介護されている側が、介護している方に暴言を吐いたりって言う展開たまにあるんですけど、ああいうの胸が痛くなるので。
起床して朝食をとって牛の世話をしてたまに買い物して、夕飯食べてその後2人で遊んで食後にコーヒーを飲んでテレビを見る。
毎日の変わらない風景がただただ映し出されていきます。
クリスの生活はここ
冒頭からどことなく感じていたクリスへの違和感。
それはまず今どきの若い人、って感じではなかったということ。
スマホ持っていないし、毎日の一瞬一瞬を生活の一部として感じているのが伝わってきました。
クリスが生活を大切にしているかどうか別として。
私からしたら、クリスはかなり丁寧な暮らしをしている見た目でした。
クリスの世界にネットなんていらないし、彼女の世界はここ、なんだなってすごく思ったというか。
クリスは獣医になりたかったけど…
そんなクリスの生活に、次第に変化が起こっていきますね。
クリスは獣医になりたい気持ちがあるようでした。
それに気づいていた獣医師の別のおじさんが彼女を助手的に扱ったり講義に招いたりしていましたね。
けど、いつも叔父さんのことが気になって、悪い予感が当たってしまって獣医の夢そっちのけで叔父さんの面倒を見ることに。
それ以外にもクリスも外の世界へ行く機会はいくらでもあったのに、おじさんに仕事を任せきれず結局は仕事も全部自分で絡め取ってしまっていました。
結局 “叔父さんとの毎日の生活” が大切って感じしました。
心の傷と、おじさん
私がクリスへ感じた違和感は他にもあって、それが彼女と人との距離感。
まるで己の心を隠しているかのように、人との関わりを拒絶している様子。でもそれには悲しい理由があって、若い頃に親をなくし父親はなんと自殺というものでした。
つら・・。
そんなクリスを引き取ったのが叔父さん。そんな中おじさんが体を悪くしてしまいクリスがちょうどそばにいたし、叔父さんのケア、そして仕事を引き受けるようになったと。
親を亡くした子供が次に接する親族って、愛情を抱きやすいとは聞いたことあるけど、そういう感じなんかな。
クリスにとってこの時叔父さんが彼女にどんな影響与えたのかわからないけれど、クリスの中の叔父さんの存在感がめちゃくちゃデカくて。
何よりも叔父さん、自分の夢よりも叔父さん、恋愛よりも叔父さんっていう風に映りました。
まるで叔父さんに対して依存しているかのようにも見て取れました。積極的に叔父さんの生活に介入しているようにも見えた。
実際クリスがいなくても叔父さんはできることはできると思うんですよ。
だけれどもクリスがそうさせない。
そこに何かクリスの心の傷を感じました。
クリスの傷ついた心が、影響している。
私は、単なるクリスから叔父さんへの家族愛とは思いませんでした。(もちろん愛しているし叔父さんとの生活も愛しているだろうけど、それだけじゃない、と。)
叔父さんがいるから生きていられる、叔父さんも自分を求めている。そうすることで生きることを続けていられる(じゃないと耐えられない)といった感じも私は思いました。
で、ちょっと笑ったのが、クリスが獣医のお手伝いをして家を空けていたその次の日ぐらいだったかな。朝食の食卓がすごく豪華になっていたんです。
あれって、叔父さんに対して申し訳ないと思ったからなんでしょうか。なんか彼女なりの愛情表現の1つと思えてちょっと可愛かったですね。
さりげなくびっくりしてた叔父さんもまた、可愛かった。
そんな彼女を観て、やはり過去の心の傷から人と接することにかなり不器用になり、人と人との関わり方がわからなくなっちゃっているのかな?と。
だって「昨日はごめんね〜」とか「寂しかった〜?」とかそういうノリで相手を気遣うセリフ、まるでないですし。
必要事項程度。
マイクと恋仲になりそうになるが
そんな彼女を大きく変えようとした存在が、合唱をしていたマイクでしたね。
このマイクもなかなかの強者。普通だったらクリスの行動を見たら離れると思うんですけど、マイクは最後の最後まで彼女を支えようとしていました。
いやほんと!普通、女性からあんなことされたり花束を投げつけられたりしたら絶っっっっっっ対「もうやめとこ」って離れると思います。
しかもデートにおじさんを連れて来ちゃうし!!笑
やはりクリスは人間関係うまく構築できなくなっちゃっていたってことですよね。マイクの気まずそうな顔がなかなかでした。
あ、でもクリスは叔父さんがいることでメンタルを保っていられる・・・そういう側面もあったのかもですね。
叔父さんが、いわば精神安定剤的な。
ラストの考察
ラスト、いつものように叔父さんとする食事するクリス。無表情だけど叔父さんをチラッと見る目、すごく嬉しそう。
叔父さんとの暮らしがクリスにとっての毎日であり、幸せであり、全てのだなぁと。そう感じられるラストと私は思いました。
それは夢や恋以上のものなんだなっていうか。
叔父さんが入院したのをきっかけにクリスは自分の夢を全て諦めいつもの生活に戻る選択をしました。
観ているこちらからしたら、なんだかもったいないような、外の世界を見れるチャンスだったのにと思いましたけど。
彼女が夢をあきらめて辛い思いをしてるかどうかもわからないし、彼女にとって心の傷が影響していたとしても彼女にとって大切なのは叔父さんとの暮らしなのかもしれないですよね。
彼女の叔父さんを介護している生活を観て、そんな生活よりも獣医になる夢を選んだ方が彼女を幸せに違いないと思いますけど、それは介護が辛そうって思うからそういう視点で見ているからなのであり、彼女視点から見ると世界はまるで違って見えるんですよね。
夢を諦めた彼女が可哀想に思うのか、それとも普段の生活に戻れて良かったねと思うのか、意見が分かれそうと思いました。
私としては、夢を選べばいいのにと思ったけど。
この作品てクリス自身が叔父さんの介護してるわけだけど、介護に疲れきっている映像はないんですよね。
先ほど話したことと被るんですけど、クリスは叔父さんとの暮らしを生きる目的にしていたと考えればいろいろ私の中で納得いくんです。
この暮らしが好きなクリス、その暮らしには叔父さんがいないとできない、だから叔父さんは彼女の暮らしに必要。
叔父さんはクリスの心の安定剤にもなっていたと思うし、おじさんのとの暮らしが、彼女を形成している・・と言ったらいいすぎですけど。
わたしの叔父さんは気まずいシーンはある?
男女の絡みといった意味での気まずいシーンについて。
クリスの家を訪ねてきたマイクに対して、クリスは自ら服のボタンを開けズボンを脱ぎ、お尻を突き出し「お好きにどうぞ」みたいな態度をとります。
それがほんの少しだけ気まずいかも?しれません。下着姿が映りますし。
ただこのシーンでも思ったんですが、やっぱりマイクは強者すぎる。こんなことされたらたまったもんじゃないのに、この直後マイクは優しく彼女を抱きしめるんですもん。
やはりクリス、人間関係との距離感がほんとに築けなくなっていたのが伺えるシーンでした。
にしてもマイク、手紙を送るなんて今の時代なかなか・・・・!!
相当クリスにぞっこんでしたね。
わたしの叔父さんの感想は以上となります!
「わたしの叔父さん」となんとな〜く雰囲気似ていると思った映画
「わたしの叔父さん」が好きな人は、雰囲気が少し似ている下記作品もおすすめ。
まず、「ノマドランド」↓ただこの作品好みが分かれると思う。けど「わたしの叔父さん」が好きな人はこれも好きと思うのですよね。
お次はこれ↓淡々と話が進んでいく感じがちょっと似ている↓「家族を想うとき」って映画。ちょっとしんどい内容だし「父ちゃん、つら」と思わずにはいられないけど、最後まで面白かったです。