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レクスプレス(フランス)

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Text by Thomas Mahler and Laetitia Strauch-Bonart

経済学者のブランコ・ミラノヴィッチは経済的な不平等問題における世界的な論客だ。

彼の提唱した「エレファント・カーブ」理論によれば、先進国の中流および下流階級以外の人々の所得が増えており、相対的に世界の経済格差は縮小しているという。

NGO団体が発表する世界の格差拡大を示すデータに批判的なミラノヴィッチだが、「格差の大収斂」を裏付ける論拠とは?


「格差が減った」と感じにくい理由


──あなたによれば、私たちは「格差の大収斂」の時代に生きていて、世界はこの100年間で類を見ないほど平等になっています。しかし、そのように感じる人がほとんどいないのはなぜでしょうか。

人々は、主に自分の国で起きていることに集中します。1980年から国家内部での不平等の増大がみられました。フランスのような例外もありましたが、米国や英国、中国、インドで起こっていたのはまさにそれであり、それらの国々の人々の関心を占めていました。

そして、経済学者のトマ・ピケティが『21世紀の資本論』を出版してからは、世界で不平等が増大しているという認識は一段と広まりました。

私が提唱した「エレファント・カーブ」では、グローバルで見ると、1%の富裕層とアジアの中間層が、他グループとは対照的に所得を増やしている事実を示しています。

世界的な不平等が縮小していることは、アジアで起きている変化を説明するだけで理解できます。貧しかった中国人が、いまや世界の所得分配の中心に位置しています。エレファント・カーブの中域は彼らによって拡大し、総体的に格差は縮小しているのです。

──あなたが指摘する「不平等の三時代」とはどのようなものでしょうか。

経済学者のフランソワ・ブルギニョンとクリスチャン・モリソンは、19世紀からの世界の不平等の歴史を研究しました。

彼らのデータによると、1820年から1914年ぐらいまでは西欧諸国の富裕化の影響で、世界的不平等は拡大しました。同時に、西欧の国々の内部でも不平等は拡大しました。国家間だけでなく、国家の内部にも分断が生じたのです。

この帝国主義と階級闘争の時代に、(所得格差を示す)ジニ係数は0.55から0.70に上昇したのです。

20世紀のほとんどが「3つの世界」の時代でした。資本主義世界(主に北米と西欧)と、社会主義世界(ソビエト連邦と東欧)、そして主にアジアとアフリカから構成される第三世界です。この時期には世界的不平等は広まりましたが、各国内部での不平等は共産主義と福祉の影響で低下し、20世紀終わりごろにこの時代は終焉しました。

2000年から、中国やインド、ベトナムの成長の影響で、世界的な不平等は縮小します。しかし各国内部での不平等は拡大しました。

かつてはすでに裕福であった西欧の発展によって世界的不平等は拡大しました。しかし、2000年以降は裕福になる国が少数だったために世界的不平等は縮小しました。両方のケースで、産業革命が起こりましたが、それぞれ結果が異なったのです。

格差縮小とポピュリズム台頭の因果


──世界的不平等は1988年に頂点に達し、ジニ係数は0.69まで上がります。そして2018年には0.60に下がります。これは19世紀末から到達したことのない水準です。この進展の主な原因は中国にありますか。

約10%の低下は膨大です! しかも、比較的短時間でそれは実現しました。中国の発展は所得の増加が非常に急速で、多くの個人に影響を及ぼしているという点で、歴史上まったく前例のないものです。

もし同じ現象が(西アフリカの)マリで起こるとすると、それはマリにとっては素晴らしいことですが、世界的不平等については何の変化もありません。

しかし、40年ものあいだ年8%のペースで所得を増加させている人口14億人の国の話となれば別です。その変化は巨大であり、世界的不平等の減少の要因になります。

中国だけではありません。インド、ベトナム、インドネシアなどほかのアジアの国々も、人口の多さにもかかわらず、急激な成長を見せています。そして、これらの国々がとても低い富の段階から出発しているだけに、不平等に対するこれらの国の発展の影響は際立つことになります。


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