
成功するためには実力だけではなく運を味方につける必要があるとよく言われる。先行きの見えにくい激動の現代社会で人生を望む方向に進めていく上で、偶然性はより重要なファクターとなってきている。浮き沈みの激しい芸能界で芸歴70年を誇る国民的エンターテイナー・堺正章が、初めてとなる著書の中で「運気のいい流れを引き寄せる」方法を語る。本稿は、堺 正章『最高の二番手』(飛鳥新社)の一部を抜粋・編集したものです。
競争の激しい芸能界で
運を引き寄せる方法
仕事をいい方向に動かしたり、人生を楽しく生きたりするには、実力だけでなく、運を味方にしなくてはいけない、とはよく言われることだ。誰だって、できれば強運の人になりたいと思うものだ。そして、運がいいな、と思うような偶然は、きっと誰にでも平等に起こる。麻雀をしていてもそれはわかる。運自体は平等なのだ。
その運を見逃さないかどうかで明暗が分かれる。実力者ならそれを決して見逃さず、小さくても必ず勝ち続け、運を最大限に生かすことができる。運がいいときにミスをするのはもってのほかだ。そういうことから運気は必ず逃げていく。
ゴルフでもそうだ。運よくバーディを獲るチャンスが来たら、絶対にそれを逃さないのが実力者だ。緊張やプレッシャーに負けない自信があれば、そのチャンスを生かせるものだ。そこでミスをすると、潮目が変わってしまう。そして、今は運がないなと思うときは、再び運気が巡ってくるのを我慢してじっと待たなければならない。強運とは、そういう運気の流れを冷静に見極められることなのだ。ただ、人生における運は、そうしたゲームとは少し違っていると思う。
では、実際に生きていく上で、運気のいい流れを引き寄せるにはどうしたらいいのか。たとえば芸能界については、僕はこんなふうに考えている。常にランキングされる競争の激しい世界だ。ここで生きのびたいなら、人のことを気にしないに限る。常に他人と比較される厳しい場所にいると、いちいち他人が気になって仕方がないものだ。しかし、そういう場所にいる人ほど、人のことを気にしないようにした方がいい。
60年以上、芸能界にいる僕が何よりも実感していること、それは、他人を妬んだり恨んだり悔しがったりしても、いいことはなにひとつない、ということだ。人と比べてどうかではなく、自分自身が実力をつけてのし上がっていくしかない世界だからだ。
ニュートラルな対人感覚が
運気の流れを生み出す?
僕は必要以上に人に興味を持たないようにして生きてきた。ある意味、他人がどうなろうと僕には関係ない――そんなふうに、あえてクールに、努めて冷酷に考えることで、なんとか人を気にしなくて済むような思考の癖をつけてきたということだ。