近年、就活市場で人気が高まるコンサル業界。採用試験に臨む就活生や転職者から大きな支持を集める本がある。『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』だ。大手コンサルティングファームで出題された入社試験を取り上げ、実践的な問題解決思考をトレーニングする1冊だ。本稿では本書から一部を抜粋・編集して「ケース面接の例題と解答例」を紹介する。

面接官が絶賛するケース面接の話し方、人気の外資コンサルから内定が出る人の共通点Photo: Adobe Stock

「問題解決の思考力」を測る入社試験

 ケース面接はコンサルティングファームの入社試験で必ず出題されるタイプの面接で、「問題解決の思考力」を測るためのものです。

 面接官からは、企業や政府・自治体が抱える問題を提示され、あなたはこの問題を解決する打ち手を検討していきます。

 次の回答のステップを頭に入れて、ケース面接問題に取り組むことで、問題解決において最も重要な「論点を設定して仮説を立てながら思考する力」が身につきます。

 では、次のケース面接問題に挑戦してみましょう。

実際のコンサルの入社試験に挑戦!

面接官:
「世の中の食品ロスを40%削減するための施策を考えてください」

面接官が絶賛するケース面接の話し方、人気の外資コンサルから内定が出る人の共通点Photo: Adobe Stock

【回答のヒント】

・食品ロスとは「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」を指します。

・食材や食品が生産・加工されて実際に消費されるまでの食品供給の流れを想像し、食品ロスが発生するさまざまな場面を洗い出してみましょう。

・自身の経験や知識をもとに、それぞれの場面でどの程度食品ロスが発生しているのかを想定し、「40%削減」につながるインパクトのある打ち手を具体化しましょう。

回答のポイント:食品ロスが発生する場面を整理し、定量目標を達成する打ち手を提案する
食品ロスがどのような場面で発生しているのかを整理し、40%削減につながるインパクトの大きな課題の特定と打ち手の立案を行いましょう。

 以下が解答例です。

食品供給の流れを分解し、ロスがどこで発生するかを整理する

 私は、政府をクライアントと想定し、国内における食品ロスを40%削減するような抜本的な打ち手を提案したいと思います。

 まず現状分析として、食品ロスがどこで、どの程度発生しているのかについて整理します。

 食品が消費者に届くまでの一連の流れを想像すると、食品ロスは大きく4つ、「生産段階」「加工段階」「流通段階」「消費段階」で発生していると考えます。

 具体的には、生産段階では農業生産者などが需要以上に野菜などを生産したり、市場に出せないような粗悪品や不揃い品を廃棄したりしていると想定します。

 また、加工段階では食品メーカーが食材を過剰に仕入れたり、食品加工時に可食部を廃棄したりしており、流通段階では販売先からの返品があったり、食品の売れ残りや破損があったりして廃棄しているとイメージしました。

 最後に、消費段階では飲食店で食べ残しがあったり、食材を過剰に仕入れたり、家庭で食材を買い過ぎたり、作りすぎたりしていると思います。

各段階における食品ロスの発生度合いを想像する

 私は、各段階の中でも天候によって収穫量が変動し、市場への安定供給のためにも需要以上の生産を行っている生産段階で食品ロスは最も多く発生し、次いで飲食店や家庭における消費段階での食べ残しや買いすぎなどの食品ロスが多いと考えました。

 流通段階について、小売店では賞味期限が近付いている食品を値引きで売り切ろうとしていますし、加工段階においては基本的に決められた量の食品を加工して提供するため、作りすぎで廃棄することは少ないと考えました。

 以上の検討から、全体における各段階の食品ロスの割合を、生産段階で4割、加工段階で1割、流通段階で2割、消費段階で3割と相対的に評価して設定しました。

面接官が絶賛するケース面接の話し方、人気の外資コンサルから内定が出る人の共通点思い付きで解決策を提案するのではなく、情報を整理し、議論の前提を面接官と共有する

食品ロス削減の打ち手を検討する

 ここで、私は生産段階で発生する4割の食品ロスを2割以下まで削減し、流通から消費の段階で発生する5割の食品ロスを3割以下にまで削減する抜本的な打ち手を検討することで、食品ロスを4割削減する目標を達成したいと思います。

 まず、生産段階おける過剰生産の原因は、生産者が安定供給を第一として、必要量よりも多くの食品を生産することでした。そこで、私は「全国規模の食品在庫流通システムの整備」を提案します。

 これは食品生産量の情報を全国規模で集約し、食品在庫を流通させることで、それぞれの生産者の余剰生産量を削減できると考えました。

 また、生産段階における不揃い品は、一般的に直売所で販売されているイメージがありますが、売り尽くすことができているかは疑問です。

 そこで、もう1つの打ち手として「直売所マップの配布」を提案します。

 直売所は大小さまざまな場所に存在しますが、その場所を周知できていないことで潜在的な消費者を取りこぼしていると考え、政府が各地方自治体と連携して直売所マップを作成し、住民に配布できるとよいと考えました。

 最後に、流通から消費段階においては、「フードバンクの利用促進」を提案します。

 これは、仕入れ過ぎたり買い過ぎたりした食材や食品を廃棄せずにフードバンクに寄贈し、福祉施設や生活困窮者の支援団体などに届けることで食品ロスを削減するものです。

 政府としては、小売店に対するフードバンク活用の義務化やフードバンクの活動に対する助成を行うなど、より多くの事業者や人々の利用を促進することができるとよいと考えます。

 他にも食品ロスに対して課税することで、事業者が食品ロスを最小化する動機をつくるといった打ち手も考えられます。

 以上より、「全国規模の食品在庫流通システムの整備」「直売所マップの配布」によって生産段階で発生する4割の食品ロスを2割へと半減させます。

 さらに「フードバンクの利用促進」「食品ロスへの課税」によって、流通段階から消費段階で発生する5割の食品ロスを3割へと削減し、全体で食品ロスを4割削減できると考えます。

 以上となります。ありがとうございました。

面接官からの質問に答える

──全国規模の食品在庫流通システムは食品ロスの削減に大きく寄与すると感じますが、実際には障壁も高く、実現可能性としては低いのではないでしょうか?

 実際に導入することを考えると、1人1人の農業生産者などが保有している食品生産量に関する情報をデータ化してシステム上で確認できなければならず、デジタル化に遅れが見られる農業分野では障壁は高いと考えられます。

 一方で、40%削減という高い目標を目指す以上は、10年単位のタイムスパンで抜本的に生産管理に取り組むことが重要だと考えています。

──小売店や飲食店における食品ロスはニュースでよく取り上げられています。フードバンクの他に、打ち手として何か考えられますか?

 方向性としては、「仕入れ量の適正化」と「売れ残り食品の消費促進」の2通りがあります。

 前者については、食品在庫流通システムと同様、政府が地方自治体と連携して地域全体の消費量データを集約し、適切な仕入れ量を各事業者に提案していくことができるとよいのではないでしょうか。

 後者についてはフードバンクの利用促進が該当すると考えています。

──生産段階においてはシステムや直売所マップをとおして需要と供給を一致させていく取り組みが重要だと理解したのですが、家庭における食品ロスを削減するために大事なことを端的に教えてください。

 家庭の「意識改革」が最重要です。買いすぎや作りすぎを防ぐために、冷蔵庫の中を確認することや食べられる分だけ作ることを徹底できれば消費段階の食品ロスは大きく削減できると考えます。

 フードバンクの利用が身近になれば、食品ロスに対する意識改革につながると期待しています。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)