
タイ経済は他のASEAN(東南アジア諸国連合)よりもコロナ禍からの回復が遅れている。サービス輸出は好調だが、財輸出の先行きには不透明感が漂う。消費も投資も振るわない状況が続いており、当面は低成長が続きそうだ。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)
外需依存度が高く高金利の
影響を受けやすいタイ経済
タイ経済はASEAN(東南アジア諸国連合)主要国の中でコロナ禍からの回復が最も遅れている。
そのせいもあり、一昨年の議会下院(人民代表院)総選挙後にいわゆる「タクシン派」のタイ貢献党を中心とする連立政権(セター前政権、ペートンタン現政権)の下、経済の立て直しを優先する政策運営が取られている。
他方、タイ経済は構造面で外需依存度が相対的に高い上、財輸出の約15%、外国人観光客の3割を中国(香港・マカオ含む)が占めるなど中国経済への依存度が高い。
さらに、タイは家計債務残高が対GDP(国内総生産)比で9割超とアジア太平洋地域の中でも相対的に高い。そのため、ここ数年は物価高や通貨安に直面して中央銀行が高金利政策を維持してきたことの影響を受けやすい特徴を有する。
こうしたなか、昨年後半以降は中国が内需喚起による景気下支えに動くなど、外需を取り巻く環境に改善の兆しが見られたほか、米トランプ政権の通商政策を警戒して「駆け込み」輸出の動きが広がりを見せたことで外需を押し上げることが期待された。
では、タイ経済の先行きはどうなるのか。次ページでは、物価、景気、為替などの分析を通して予測する。