駅伝(えきでん)とは、数人で襷をリレー形式でつないで長い距離を走る競技である。また、それに転じて複数人でひとつの事を成し遂げてゆくことを言う。
概要
古来、7世紀後半には中央政権と地方との情報を円滑に伝達するために一定の距離ごとに中継所として「駅」が設けられ、伝達する人(朝廷の使者など)は駅ごと(約16kmずつ)に馬を変えて、移動していった。駅は宿泊施設も兼ねており、電気などもない時代にとってはもっとも簡単に行き来のできる方法であった。「伝馬制」や「駅伝制」と言われており、古くは日本書紀にも残っており、これらは形を変えて江戸時代まで存在した。
競技としての駅伝は、読売新聞社が1917年4月27日に行った「東海道駅伝徒歩競走」が最初とされる。京都から東京までの23区間、約508kmを2日間かけて走り抜いた。スタートとゴールには現在も「駅伝発祥の地」の碑がおかれている。
現在の駅伝の基本はリレーと同じように1チーム複数人で走り、その(到着の)速さを競うものである。
レースでは予めコースと中継所が決められており、その中継所から中継所までを「区間」とし、区間ごとに走者を配置する。走者は襷を身につけて、襷をもっとも早くゴールまで運ぶことを目指す。
単純な競技ながら駆け引きやブレーキ、アクシデントなどもたくさんあり、他のスポーツと違いどんなアクシデントがあっても試合中にはメンバー変更ができないなどの理由から「究極のチームスポーツ」とも言われる。テレビ中継も行われることが多く、全国規模の大会としては全国高校駅伝、全日本大学駅伝、都道府県対抗駅伝、ニューイヤー駅伝などがその例である。また、箱根駅伝は関東のローカル駅伝でありながら全国放送されて高い視聴率を誇るなど正月の風物詩ともなっている。
国際大会とその記録について
日本ローカルな競技形式(一応海外にもチラホラと伝播している)なので、他国版Wikipediaなどでは「Ekiden」で説明されることが多いようだ(世界陸連の制定した国際名称はRoad relay)。
ただし駅伝にも世界陸連公認のルールが存在しており、5-10-5-10-5-7.195(いずれもkm)の全長42.195Kmで開催された大会の記録は国際記録として公認される。最も駅伝が五輪競技ではない上、国際千葉駅伝が財政難から縮小、最終的に2014年を最後に消滅した現状においてこのルールで開催される見込みは薄くなっている。
またかつて3月にも横浜国際女子駅伝が開催されていたが、2008年を最後に東京国際女子マラソンの代替として生まれた横浜国際マラソンと入れ替わる形で消滅。横浜国際マラソン自体も2014年に財政難で消滅、現在はさいたま国際マラソン(15~19年)を経て、2021年以降は国際大会は東京マラソンに実質的に一本化された。
- 世界記録(混合)-2時間4分11秒(ケニア、2011年、国際千葉駅伝)
- 世界記録(男子)-1時間57分56秒(ケニア、2005年、国際千葉駅伝)
- 世界記録(女子)-2時間11分41秒(中国、1998年、北京国際駅伝)
- 非公認世界記録(男子)-1時間55分59秒(エチオピア、2003年、国際千葉駅伝)*5区間のタイム
- 非公認世界記録(女子)-2時間11分22秒(エチオピア、2003年、国際千葉駅伝)
- 日本記録(混合)-2時間4分59秒(2011年、国際千葉駅伝)
- 日本記録(男子)-1時間58分58秒(2005年、国際千葉駅伝)
- 日本記録(女子)-2時間16分13秒(1998年、北京国際駅伝)
- 非公認日本記録(女子)-2時間13分33秒(2001年、国際千葉駅伝)
日本国内における駅伝の縮小
大規模レベルの大会で開催が消滅したのは東日本縦断駅伝(2002年廃止)と九州一周駅伝(2013年廃止)だろう。前者は7日間、後者は10日間(廃止晩年は縮小されたが7~8日)と学生・実業団・市民ランナーが一体となって行われた大規模な大会であったが、交通事情などで廃止されてしまった。
実業団の駅伝は縮小が著しい。特に女子の方は交通事情のみならず実業団の撤退が相次いだこともあって地方大会が維持できなくなり、全日本女子実業団駅伝は予選会が統合されて、予選会自体がもう一つの全国大会になってしまう事態[1]になった。男子も朝日駅伝、名岐駅伝、中国山口駅伝といった中規模の大会が2010年代に相次いで幕を閉じる結果となっている。
男女混合として開催されていた環日本海新潟駅伝は非常に面白い形式で行われており、42.195Kmの7区間を新潟県および新潟市と友好関係を結んでいる海外都市と、新潟県を中心とした日本海沿岸道府県+新潟県に隣接する県が、各県単位・都市単位で男女混成の駅伝チームを構成して戦う大会であった。2004年に廃止され、09年からは別の陸上大会が同時期に開催されている。
道路を占有する事情から年々マラソンや駅伝の開催が難しくなっており、マラソンでさえ伝統大会が2010年代までに統廃合され、伝統大会で現在も残っている大規模な国際マラソンは大阪国際女子マラソン、福岡国際マラソン(2021年に廃止されたが、2022年にリニューアルされて再開催)と名古屋女子国際マラソン(2012年にリニューアル)[2]の3レースのみである。代わりに東京マラソン、大阪マラソン、MGCが新設されたが、裏を返せばまともに複数大会を開催できる余裕が無くなったとも言える。駅伝も全国レベルの大会は存続し、全日本女子選抜駅伝も一定の成果を上げたが、準全国レベルを目指して関西学連が主催したびわ湖大学駅伝は失敗していることから、あまり見通しは良くない。
これ以上ロードレースの縮小が進まないよう、主催者・競技者側・ファンが一体となって努力することが、存続には必要な時期に差し掛かっているのかもしれない。