EeePC[1]とは、ASUS社のNetBookパソコンのシリーズ名である。
概要
ULCPC(ウルトラローコストPC)、UMPC(ウルトラモバイルPC)、NetBookなどと呼ばれるカテゴリにあたる。一般的なノートパソコン(10万円〜)に比べて、極端に安い(4万円〜)ことがもっとも特徴的である。その分、パソコンとしての性能は数世代以上前のものとりなり、液晶も安価な小型のものを搭載している。
当初の目的としては、OLPCのような「低所得層向けの、インターネットを見るためだけのコンピュータ」として開発された、と言われる。しかし、2007年11月に海外でLinux搭載の初代EeePC 4Gがリリースされると、予想に反して主にパソコンマニアの間で話題になった。それらを受けてASUSは、2008年1月に日本国内版であるEeePC 4G-Xをリリース。日本向けの変更としてWindowsXP ULCPC editionを搭載した。
EeePCの販売は、Vista需要が冷え込みつつあったPC市場に衝撃を与えた。特に、B5サブノート市場はほぼ国内メーカーが押さえていたが定価が20万を越えるものも少なくなかったため、4倍前後の価格差は脅威になった。EeePCの反響の大きさから、他メーカー、Acer、MSI、HP、Dellなどが同種のPCを発表。それに続く形で国内NEC、東芝、Epsonも参戦を発表し、いわゆるNetBookと呼ばれるカテゴリを作り出した。2008年上半期のPC出荷台数では、1〜2割がこのNetBookカテゴリのものらしい。
後続シリーズが追加された現在では、旧世代機はさらに低価格で販売されている。特に、初代4G-Xとイーモバイル同時契約のセット価格が100円になったため、「100円パソコン」とまで言われる。ただし、この販売方法はイーモバイルの2年契約が付いてくるため、総額で見ると安くなるとは言えない。また、性能面の仕様を理解せずに買っていまい、後々トラブルになるユーザがいるようだ。
皮肉にもNetbookが登場したせいでノートPC市場全体が価格競争を始めてしまった上に、廉価版のCeleronでさえ十分なパワーと省電力を併せ持つようになってしまった為、2010年代に入った頃には主にAtomを搭載していたNetbookは「安いばかりでパワーが貧弱なオモチャ」と言う烙印を押されてしまい、ひっそりと姿を消した。しかしこのEeePCの登場が無ければ現在の「5万円台からデュアルコアCeleronのエントリーモデルが買える」と言う時代はやってくる事は無かっただろう。偉大なマイルストーンである。現在はもうノートとしてのEeePCの展開は終息しているが、ブランド名はその血筋を受け継いだ超小型デスクトップ「EeeBox」とエントリーモデルのTransPad「EeePad」として生き永らえている。
- CPU Intel CeleronM 630MHz (70MHzx9)
- メモリ 512MB
- SSD 4GB
- チップセット intel 910GML Express
- ディスプレイ 7型TFT液晶 800x480[2]
- 他
- 付属品
シリーズ展開
日本国内で主に販売されているもの。WindowsXPのULCPC editionを搭載する。後期~末期にはWindows7 Starter版も出た。
- EeePC 4G-X
- EeePC 4G-XU
- EeePC 901-X
- EeePC 900-X
- EeePC 701-X
- EeePC 1000H
- EeePC 1005PE
- EeePC 1015PX
- EeePC X101CH
他に海外向けがある。WindowsXP以外にLinuxであるXandrosを搭載したモデルや、更にSSD容量が少ないモデルなどをリリースしている。
特徴
長所
当時はまだ登場したてで非常に珍しかったSSDを先駆けて搭載している事が最大のウリであった。これにより、いくら落っことしたり振り回したりしても従来のHDDマシンのようにフリーズする心配が無い。スマートフォンもまだ無かった(「乗るしかない、このビッグウェーブに」は奇しくも後継機901-X発売日の前日の出来事である)当時、ノートパソコンを電源を入れたままカバンに入れて何の気兼ねも無く外出出来ると言う事は画期的な事だったのだ。また、光学ドライブも非搭載なので完全なるゼロスピンドルマシンと言え、圧倒的な静音性を実現した。
パソコンとしてはかなりのミニサイズ、軽量であり、持ち運びも楽々。しっかり標準で無線LAN搭載なので、ちょっと台所に持っていって音楽聴きながらレシピを見ながら料理、なんて事も手軽に出来た。901シリーズ等のAtom搭載モデルではバッテリーの持ちもよく[3]、ちょっと釣りやキャンプに行って現地で稼働させて切れる頃には帰る、なんて芸当も出来た。
短所
見ての通り、メインストレージが4GBしかない。初期値ではCドライブの空きが1GBを切ると言う最初からクライマックス状態である為、あの手この手で空き容量のやりくりに苦労する。またSSDが独自の形状と接続形式である為、大容量に交換する事も難しい。Cドライブはハンダ固定だがDドライブは着脱が出来るので、そちら向けにバッファロー等からEeePC専用32GB拡張SSDなんて代物も出た(後述)。それを使いDドライブをBIOSからCドライブにして使うという離れ業を行ったり、デフォルトで付くSDカードスロットをドライバを使ってリムーバブルHDDであるかのように見せかけてプログラムをインストールする等の方法もあった…等々とにかくいじり甲斐のあるマシンだった。逆にこれらを聞いてワクワクしたようなタイプの人間ならば、いい遊び道具になるだろう。
耐久性がやや低い。特にメインマシン並に使っていると、とにかくキーボードの劣化が早い。筆者は年に1~2回のペースで交換しており、既に4枚の壊れたキーボードが鎮座しているレベルでチャチな出来。現役当時は交換用パーツが潤沢に市場に溢れていたが、現在新品を調達するのは困難を極める。
2014年4月8日、惜しまれつつWindowsXPのサポートが終了した。これはつまりNetBookたるEeePCをネットに繋ぐにはOSの更新が急務であると言う事だが、次世代OSであるWindowsVistaの要求するHDD容量は最低15GB、最新版のWindows10でも16GBの空き容量を要求する。これはHDDモデルのEeePCならともかくSSDモデルのEeePCには難題であり、完全ハンダ付け増設不可の初代4G-X(701)はもうどうしようもない。900番台以降は発売当初はEeePC専用なんて触れ込みでSSDが出たが中身は単なるmSATA仕様の汎用SSDである為、手に入れば一応増設は可能だが現在組み込み用SSDの主力はmSATAではなくM.2に移ってしまっており、今後はかつてのIDE仕様のHDD同様に先細って行き入手性も悪化するものと思われる、やるなら早めに確保したい。またCPUの仕様により、Windows7以降定番となった64bit版OSは動作しない。よって潰しの効かない32bit版Windows10を入手して軽量化を施すか、あるいはXubuntu、Google Chrome OS等の軽量なLinux系OSを使う必要がある(元々EeePCはその為に作られたようなものではあるが)。いずれにせよ、今から生涯現役で使うにはユーザーの愛が試される。PC98シリーズやX68000ユーザーに聞かれたら鼻で笑われそうだ。
NetBookの区別
NetBookというカテゴリはEeePCによって生まれたといっても過言ではないカテゴリである。そのため、まだ十分な定義はないが、その名の通り「Netに繋ぐだけの性能のノートPC」と言われる。
似たようなカテゴリとして以下の様なカテゴリがあるが、やっぱりどれも一般的ではないので、てきとーである
関連項目
関連コミュニティ
ニコニコとEeePC
ニコニコ動画はFlashと動画を扱う、比較的重いサイトである。
動画のエンコードにもよるが、ニコニコを楽しむにはEeePC 901-XならH.264の高画質動画以外であれば大丈夫。他ではちょっと性能が足りないようだ。詳しくは関連動画を参照のこと。
関連動画
手頃な価格と制限の多い規格と言う組み合わせは、特に金は無いが好奇心は旺盛な学生PCオタクの心の琴線に触れるには十分であり、発売当時は色々と手を加えて動作を軽くする指南サイトやブログがそこらじゅうに溢れた。上がっている動画も、そのように色々と遊び倒した内容のものが多い。ちょうどニコニコ動画の黎明期とEeePCの発売時期が重なっているのもそれに拍車を掛けている。
脚注
- *ASUS | Eee PC - 公式ホームページ(リンク切れ)
- *このサイズのカーナビ用の液晶が大量に余っていた為にそれを流用し、結果的にコストを劇的に抑える事に成功した。しかし縦480と言う解像度はXPの要求する最低解像度(600)を満たさない為、色々な場面で不都合を生じる事になる。これで儲けて出した次の900-X以降は1024x600が主流になった為、不便さは解消された
- *当時のノートPCのバッテリーは1~2時間も持てばいい方で、オプションの大容量バッテリーを購入しても3時間持つかどうかと言った有様だった。そこへ平然とカタログ値8.3時間を引っ提げてやって来たのだから、他メーカーが焦るのも当然である