みなさんは知らない言語の知らない単語を調べるとき、どうしますか? 今どきは Google で検索をすると意味がすぐに出てきますね。しかし、その語のことをよく知ろうとするなら、やっぱり辞書! 発音や意味がわかるだけではなく、用例を通して使い方が学べます。さらに、コラムなど役立つ情報が掲載されていることもあります。
英語やドイツ語、フランス語など、ローマ字の言語は、その言語をよく知らなくとも、ローマ字の通り引けばなんらかのヒントが見つかることが多いです。しかし、調べたい語が韓国語だったら……? 今回は、突然「ビビンバ」を辞書で調べたくなった韓国語未修のフランス語担当のお話です。
辞書を引くための最低限のハングルの知識
ハングル(韓国語の文字)は、子音の字母(文字の部品)と母音字母の組み合わせでできています。大まかにですが、子音字母が左側や上の方、母音字母は右側や下の方にあります。子音で終わる音節は、ここからさらに文字の下の方に子音字母が加わります。
가 각
たとえば、左の文字は ka 右の文字は kak。子音kをあらわすㄱと母音aをあらわすㅏからできています。
辞書の見返しを見よう
さて、今回使うのは『デイリーコンサイス韓日日韓辞典』。表紙をめくってすぐのところ(見返し)に、何やら表があります。
これは、反切表。日本語でいうところの五十音表です。韓日辞典はこの反切表にある順番(カナダラ)で並んでいます。順番の仕組みは、日本語のあいうえおと同様。ひとつの子音に対して母音の組み合わせ一通り。またつぎの子音に対して母音の組み合わせ一通り、と進んでいきます。
※韓日辞典の p.910-912 には IPA(国際音声記号)つきの反切表があります。ハングルや韓国語の音声について詳しくはそちらをご覧ください。
辞書の“ツメ”を使ってみよう
次は、辞書を横から見てみましょう。
子音字母ごとに印がついていますね。そう、国語辞典と同じ。この印のことを「ツメ」と言います。(反切表では別の段になっている「ㄱ」と「ㄲ」や「ㄷ」と「ㄸ」は、ツメではひとまとめにしています。)
次は中を開いてみます。
ページの端に、母音字母つきの文字が順番に並んでいます。これを参考にすれば、探している単語の最初の文字が、どのあたりにあるか見当をつけることができます。あとは反切表をもとにお目当ての単語を探していきましょう。
「ビビンバ」を探してみよう
「ビビンバ」のハングル表記がわからないのが厄介ですが、とりあえず見返しの反切表で「バ」行を探します。
次に「ㅂ」に母音 i がついた形を横に見ていって探します。
それでは、これが「ビビンバ」の最初の文字だと仮定して、辞書本文から探していきます。
辞書の横、ツメで「ㅂ」を探し……
ページ右端の母音字母つき文字から、「ㅂ」の中での位置を予想して……
「비」を発見!(そういえば、こういう名前の歌手がいたよな……と思い出しつつ)
次に2文字目に予想される「비」またはそれに音節末子音がついた文字を探します。「ㅂ」は「ㅁ」の次、反切表の19個の子音のうちの8つ目です。めくりすぎないように、気をつけます。
そして、1回ページをめくった右ページに……
見つけました!
ビビンバの少し上をみると、비비디ビビダが「混ぜる」という意味の動詞で、비빔ビビン の部分の構成要素になっていること、「混ぜ麺」(日本語では「ビビン麺」と呼ばれているのを目にすることも)は同じ비빔ビビンを用いた비빔면ビビンミョンとなっていることがわかります。このようにひとつの語を調べると、芋づる式にいろいろな情報が目に入ってくることも、紙辞書のよいところです。
そして、ビビンバ비빔밥の項目を見ると、発音記号が /pibimˀpap/ と出ています。ということは、ビビンバではなく……ピビンパプ……? 韓国語の発音を理解するために、さらに学習を続ける必要がありそうです。
まとめ
ローマ字以外の文字の言語を紙辞書で引くのは、一見、難しそうです。しかし、反切表や、ツメに順番に並んでいる母音字母つき文字のおかげで、はじめてにしてはスムーズに韓日辞典を引くことができました。辞書を開くことは、その言語に親しむ第一歩。みなさんもぜひ、憧れのあの言語の辞書を開いてみてはいかがでしょうか?