犬と暮らす
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【獣医師が解説】愛犬の老化サインやシニアになってからの暮らし方
愛犬に健康で長生きしてもらうためには、今現在の年齢をどうとらえるかにかかってきます。飼い主さんにとっては、いつまでも子犬のようなかわいさがある愛犬ですが、いずれは加齢に伴う諸問題が起きることでしょう。そうした現実を見つめつつ、今以上に愛犬と楽しく暮らすためにも、犬の「老化」について考えたいですね。
石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
人より、ずっと速い犬の老化スピード
たとえば犬の5才は、小・中型犬なら36才で、大型犬なら40才です。7才だと小・中型犬は44才で大型犬は54才、10才では小・中型が56才で大型は75才になります。つまり、犬では5~7才あたりがシニア犬の入り口と考えていいでしょう。
個体差はありますが、ちょうど見た目や行動に老化の兆しが出始める時期。予防と早めの対応で、充実したシニア期を送らせてあげたいですね。そして、大型犬なら12才(人だと89才)、小・中型犬は16才(人だと80才)を超えたら、立派なご長寿犬。
この年齢を、自力で歩ける状態で迎えられたら、「健康長寿犬」です。元気なシニア犬を目指したいですね!
犬の老化サイン(見た目と行動)をよく観察しよう
鼻がカサカサに乾く
→ 今からできる対処法は?
ビタミンAやE、必須脂肪酸などの栄養素が肌に関係しているので、総合栄養食を与えて栄養管理を。乾燥しすぎも皮膚によくないので、室内の湿度は50~60%に保つよう加湿器などで調整を。
歯が黄ばむ、口臭がきつくなる
→ 今からできる対処法は?
歯の黄ばみや、口臭の原因になる歯石は、毎日の歯みがきで予防できます。歯みがきが難しい場合は、ガーゼで拭く方法もあります(歯周ポケットに汚れを押し込まないよう注意が必要です)。
白髪が生える
→ 今からできる対処法は?
白髪や退色の予防は難しいですが、ブラッシングなどのまめなお手入れで、清潔で若々しい外見を保てます。
目が白っぽくなる
→ 今からできる対処法は?
週に1回は愛犬の目を見て、変化に早く気づきましょう。白内障になる前なら、ルテインなどの抗酸化作用のサプリメントを。初期の白内障なら薬で進行をゆっくりにできます。
太りやすくなる
→ 今からできる対処法は?
年齢に応じて、カロリーを抑えた専用フードに切り替えを。運動不足にも気を付け、ゆっくりでもいいので、毎日の散歩で運動させるようにしましょう。
毛がパサつく、皮膚が乾燥しやすくなる
→ 今からできる対処法は?
毛づやを補う保湿剤が効果的です。ブラッシングは保湿剤をかけてから行って。動物の油脂分が含まれた獣毛ブラシもおすすめです。
筋肉が落ちて、お尻が小さくなる
→ 今からできる対処法は?
健康なうちから、筋肉が衰えないようトレーニングをしましょう。足の筋力が衰え始めても、病院のリハビリで回復できる場合もあります。
イボができる
→ 今からできる対処法は?
良性のイボでも、トリミング時にひっかかり出血することがあります。予防は難しいので早期発見に努めましょう。愛犬の体をよく観察し、イボがあったら触らずに動物病院へ。
肉球が硬くなる
→ 今からできる対処法は?
ふだんから、就寝前や散歩の前後など、愛犬の肉球にクリームを塗って保護を。急な肉球の硬化は、肝機能不全などの可能性もあるので注意して。
声が低くなる、イビキがひどくなる
→ 今からできる対処法は?
正しい食事と、適度な運動で肥満予防を心がけて。とくに短頭種はイビキの音が大きくなったら要注意。軟口蓋過長や気管虚脱などの病気かもしれません。
体臭が強くなる
→ 今からできる対処法は?
愛犬が毛がべたつきやすく皮脂が多いなら、動物性たんぱく質や脂肪分が少ないフードの変更したり、薬用シャンプーで改善を。
歩くのがゆっくりになる、歩くのを拒む
→ 今からできる対処法は?
若いうちから、体幹や筋肉を鍛えるトレーニングが有効。ただし、足腰の悪い犬なら無理は禁物。歩行の変化は、骨・関節などの病気やケガの可能性もあるので、獣医さんに相談を。
段差を越えられない、段差につまずく
→ 今からできる対処法は?
脳神経の異常や関節痛も疑われるので、早めに受診を。段差にスロープなどを設けて歩きやすくするといった対処をして。
呼んでも反応しなくなる
→ 今からできる対処法は?
聴覚の衰え自体は予防できるものではないので、接し方に注意を。急に触ると犬をビックリさせてしまうので、愛犬から見えるところから近づいて。
物によくぶつかる
→ 今からできる対処法は?
サプリで栄養補助を。目が見えづらくなっても犬は感覚で家具などの場所を覚えているので、家具の配置はなるべく行わないで。
粗相をする
→ 今からできる対処法は?
トイレへ連れて行ってあげて予防を。それでももらすようならオムツをはかせて。蒸れて皮膚炎などの原因にならないよう、こまめに取り替えて。
オスワリやフセができなくなる
→ 今からできる対処法は?
若いころからきれいな姿勢を意識して。横座りしたり、フセが左右対称にできない犬は要注意です。
おもちゃで遊ぼうとしなくなる
→ 今からできる対処法は?
おもちゃに興味が薄れても、食べ物には反応する場合が。オテなど簡単な指示を出して、できたらおやつを。触れ合うことが犬の心身の刺激にも。
食べ物の好みが変わる
→ 今からできる対処法は?
食べ物は、やわらかくする、温めてニオイを立てるなどして、食欲をそそる工夫を。口内のトラブルで食べられない可能性もあるので、よくチェックして。
大型犬は5才、小・中型犬なら7才過ぎたら年2回の健康診断を
犬がシニア期にかかりやすい病気は?
年をとったら注意したがんのリスト
・リンパ腫 … 血液中のリンパ球のがん。食欲低下や元気消失など、どんな病気にも起こりうる症状が多いため、発見が遅れることも。
・血管肉腫 … 心臓や脾臓、肝臓、皮膚、骨などに発症する悪性の腫瘍。愛犬が突然がくんと元気をなくしたら、腫瘍が破裂した可能性が。
・乳腺腫瘍 … 乳腺にできるがんで、不妊手術をしていないメスになりやすい傾向が。しこりは体表にできるため、発見しやすいので、まめに触ってチェックを。
・骨肉腫 … 骨をつくる細胞のがん。体重が重い大型犬の肥満犬に多く、足にできやすい傾向が。歩き方が変で、消炎鎮痛剤ではなかなか治らなかったり、足の腫れが引かないときは骨肉腫が疑われることも。
・甲状腺がん … のどの両脇にしこりができます。8才を過ぎたビーグルが圧倒的にかかりやすいといわれています。
・悪性黒色腫 … メラノーマとも呼ばれる悪性腫瘍。犬の場合は口の中にできることが多く、口臭や血混じりのよだれが出ることがあります。
シニア犬が注意したい、がん以外のかかりやすい病気は?
・白内障 … 目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、視力が低下する病気。多くは加齢に伴ってかかりますが、糖尿病が原因で発症するケースも。
・僧房弁閉鎖不全 … 心臓の中の心室と心房を区切っている僧房弁が完全に閉まらなくなる病気。
・クッシング症候群 … ホルモン分泌を行う脳下垂体や副腎が腫瘍化して、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌される病気。左右対称に脱毛したり、多飲多食が見られます。
・変形性骨関節症 … 関節の骨の先が、とげのようにギザギザになり、歩くたびに痛みが出る病気。大型犬に多い傾向が。
・変形性脊椎症 … 背骨を形成している椎体が、加齢とともに変形する病気で、老化現象のひとつ。9才以上の犬の75%がなるといわれます。
・会陰ヘルニア … 肛門のまわり(会陰部)にある筋肉が弱くなり、間にできた隙間に付近の臓器が飛び出してしまう病気。未去勢のシニア犬や、吠えクセのあるオスの犬に多い傾向が。
・子宮蓄膿症 … 子宮に細菌が入り込み、子宮内に膿がたまってしまう、避妊手術をしていないメス特有の病気です。
・前立腺肥大 … 加齢でホルモンバランスが崩れることでかかりやすくなるオスの病気。前立腺の肥大によって、尿道などが圧迫されて二次的な病気も引き起こします。
・認知障害 … 老化に伴い、脳が委縮。同じ場所をグルグル回る、夜中に鳴くなどの行動が。柴などの日本犬の発症が多いといわれます。
愛犬が健康で長生きするためにできることは?
お手入れがアンチエイジングにつながる5つのメリット
お手入れ時に愛犬の体を触ることで、しこりやできものを発見したり、嫌がったり鳴いたりするしぐさでいち早く異常を発見できます。
(2) 外見の若々しさもキープできる
愛犬を常にきれいな状態に保つことで、見た目も汚れず若々しくいられいます。
(3) 動物病院でのストレスを軽減できる
お手入れで体を触られることに慣れていれば、動物病院での受診も苦にならず、犬がストレスを感じることも減ります。
(4) 感染症の病気を防げる
散歩などでつく可能性があるノミ・ダニ対策をしていれば、それらが媒介する感染性の病気を防ぐことにもつながります。
(5) 皮膚病予防にもなる
犬にとって汚れが残っていることは、「不潔ストレス」に。体がかゆくなったり、しつこく掻き続けることで皮膚病を引き起こすこともあるので、お手入れすることは皮膚病予防にもなります。
愛犬の老化を受け止め絆を深めよう
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
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