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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第267回

2025年2月7日更新

細野真宏の試写室日記

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


試写室日記 第267回 松たか子×松村北斗ファーストキス 1ST KISS」は成功するのか?

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今週末2025年2月7日(金)から「ファーストキス 1ST KISS」が公開されます。

本作でメガホンをとったのはTBSの制作部門を担う「TBSスパークル」所属の塚原あゆ子監督。このところ「ラストマイル」「グランメゾン・パリ」と怒涛ごとく大型新作が公開されてきました。

個人的には、それまでの「TBS映画」の印象はそれほど強くはなかったのですが、塚原あゆ子監督の力量でTBS映画の存在感が急速にアップしています。

ということで「ファーストキス 1ST KISS」も当然「TBS幹事作品」だと思っていましたが……実は、幹事どころかTBSは一切関わっていない作品になっていたのです。

これはどういうことなのでしょうか?

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これは、意外とよくある「派遣監督」パターンなのでしょう。

優秀なクリエイターの場合、他社から監督依頼が来て、それを単発仕事のような形で引き受けるケースというのは意外とあるのです。

塚原あゆ子監督の場合、TBSスパークリングの前進となる制作会社「ドリマックス」時代に、テレビ東京やNHK、WOWOWのテレビドラマの演出などを手がけていました。

ファーストキス 1ST KISS」の場合は、東宝が幹事会社として“塚原あゆ子監督のキャスティング”に成功したということなのでしょう。(このような事例は他のテレビ局の場合でも見られます。「派遣監督」で最も象徴的な存在は、東北新社に所属しながら、「東京リベンジャーズ」シリーズなど多数の映画作品を手掛けている英勉監督でしょう)

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さて「ファーストキス 1ST KISS」自体に話を戻しましょう。同作はヒットメーカーである塚原あゆ子監督に加えて、「花束みたいな恋をした」の坂元裕二が脚本を手がけています。そのため会話劇が楽しく、ベースの完成度は高めというプラスの面がありました。

ただ、会話がリアリティーを醸し出しているぶん、タイムトラベルという非常に「特異」な設定については受け止め方が分かれるところ。

松たか子が演じる妻は、とても論理的な人物として描かれていて作品の魅力を高めています。

その一方で、「タイムトラベル」についての根本的な考察がほぼ抜けていた点が、個人的には不自然に思えた部分。どうやって現代に戻る? 戻った際の時間はどのくらい過ぎているのか?等々――せめて「東京リベンジャーズ」くらいの最低限の考察は劇中で欲しかったなと感じました。

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妻が15年前の過去に何度も行き、松村北斗が演じる夫の将来に変化を与えるという設定も面白いと思いました。ただその一方で、終盤での夫の行動は、その設定に矛盾が生じていて疑問を感じる点も。論理的に必然性が欠けているようにも思えたのです。

ですが「会話劇で魅せる不思議なラブコメ映画」と割り切って見れば、十分に面白い映画だと言えると思います。

試写室での雰囲気は、30代〜50代の女性陣の反応が特に目立っていました。そのことからも、本作の客層は大人の女性が中心となるのかもしれません。

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前述では“ラブコメ”と書きましたが、そうは言っても大人向けのコメディ映画です。大人の観客を中心に大ヒットしている「グランメゾン・パリ」の半分くらいはいけるようなポテンシャルを感じます。

制作費4億円、P&A費を2.5億円と想定すると、2次利用も含めると興行収入10億円でリクープ可能なので、「成功モデル」だと言えるでしょう。

筆者紹介

細野真宏のコラム

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

発売以来15年連続で完売を記録している『家計ノート2025』(小学館)がバージョンアップし遂に発売! 2025年版では「全世代の年金額を初公開し、老後資金問題」を徹底解説!

Twitter:@masahi_hosono

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