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劇場公開日 2007年12月1日

椿三十郎 : 映画評論・批評

2007年11月27日更新

2007年12月1日より日劇3ほかにてロードショー

黒澤明の偉大さを改めて思い知らされる

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結果的に、オリジナル版の名脚本をいじらずに撮影したことが成功の秘訣となった。黒澤映画の魅力は第一にスジである。日本映画最高最強の脚本家たち(菊島隆三・小国英雄・黒澤明)が徹頭徹尾面白くしようとアイデアを出し合った痛快無比の珠玉のホンは、共同脚本のメソッドの賜物でもあるからだ。

おまけに、森田芳光監督はガス・バン・サント監督の「サイコ」(98)ほどではないが、カット割りまで似せているのだ。「一スジ(物語)、二ヌケ(映像)、三ドウサ(演技)」という言葉があるが、三船敏郎VS織田裕二、仲代達矢VS豊川悦司から、小林桂樹VS佐々木蔵之介、伊藤雄之助VS藤田まことまで、“演技”を心ゆくまで比較して見ることができる。第一、物語が面白いのだ。これなら、黒澤監督版を見るきっかけにはなるだろう。リメイクの正しいあり方ではなかろうか。

森田版「椿三十郎」に無いものは、メリハリの効いた映画独特のリズムだろう。黒澤版はもっと緩急自在で、全てのプロットが物語に抑揚を成している。20人ほどを三十郎が斬りまくる大殺陣(馬肉を使った効果音がすごい)や、椿の花がドバッと流れる場面(ウグイスの声が典雅なムードを醸し出す)など、見せ場でのイメージの力強さにきりきり舞いさせられてしまう。黒澤版の偉大さを改めて思い知らされるという意味で、これほど素晴らしいリメイク作品はない。

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