「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「ハリー・ポッター」――映画音楽界の生ける伝説、ジョン・ウィリアムズの代表作10選
2024年11月1日 10:00
数々の映画音楽を手がけてきた作曲家、ジョン・ウィリアムズの足跡をたどるオリジナルドキュメンタリー映画「ジョン・ウィリアムズ 伝説の映画音楽」が、11月1日からディズニープラスで日米同時独占配信される。
「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」シリーズを筆頭に、数えきれない名作映画の音楽を生み出してきたウィリアムズは、これまでアカデミー賞の作曲賞を4度受賞。ノミネートされた回数は、編曲・歌曲賞なども含めると、通算54回を数える(現存する人物では最多、アカデミー賞史上ではウォルト・ディズニーに次いで2番目に多い)。現在92歳、いまもなお創作活動に意欲を燃やす、映画音楽界の生ける伝説の足跡を振り返る。
誰もが一度は聞いたことがあるであろう「スター・ウォーズのテーマ」。タイトルロゴとともに、映画のオープニングを飾る勇壮なサウンドが、観客をはるか彼方の銀河へと誘う瞬間は、何度体験しても血湧き肉躍る。「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」は、1978年・第50回アカデミー作曲賞に輝き、その後アメリカ映画協会が、史上最高の映画音楽の第1位に選出した。
ウィリアムズが駆使したのは、ライトモチーフという技法だ。これは特定のキャラクターやシチュエーションに対し、それぞれ印象的なメロディを割り当て、それらが登場するたびに作中で流れるもので、古くはオペラや交響詩などにも使用されている。「スター・ウォーズ」シリーズで言えば、主人公であるルーク・スカイウォーカーをはじめ、レイア(「王女レイアのテーマ」)、ダース・ベイダー(「帝国のマーチ」)、ヨーダ(「ヨーダのテーマ」)、ハン・ソロとレイアの愛を奏でる「ハン・ソロと王女」といったモチーフが繰り返し登場することで、各シーンが観客の記憶に深く刻まれることになった。
またウィリアムズが、劇場公開された「スター・ウォーズ」シリーズ全9作で音楽を担当している点も、両者の特別な関係性を示している。「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」から、「スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」まで、足かけ40年以上。製作された時代が大きく異なる旧三部作、新三部作、続三部作だが、ウィリアムズによる音楽が統一感をもたらし、壮大なサーガへとまとめあげた功績は、映画史を振り返っても非常に稀有なケースである。
「スター・ウォーズ」と双璧をなすウィリアムズの代表作が、「インディ・ジョーンズ」シリーズだ。記念すべき第1作「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」に登場した「レイダース・マーチ」は、いまもロマンに満ちた冒険には欠かせないテーマソング。スティーブン・スピルバーグ監督が作品に詰め込んだ、“好奇心”“探求心”を一層盛り上げ、まだ見ぬ秘宝を追い求める旅への高揚感をかき立てている。
「スター・ウォーズ」と同じく、劇場公開された「インディ・ジョーンズ」全5作を担当したウィリアムズは、最新作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を最後に、映画音楽からの引退を表明した。しかし、2023年1月に開催されたイベントの席で、スピルバーグとの対談中に突然引退を撤回。その直後には、キャリアを総括するドキュメンタリーが製作されると報じられた(そして、完成したのが「ジョン・ウィリアムズ 伝説の映画音楽」である)。
2023年6月に行われた「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」のUSプレミアには、製作総指揮を務めたスピルバーグとジョージ・ルーカス、主演のハリソン・フォードらとともに、ウィリアムズも出席。本人の指揮による「レイダース・マーチ」が披露され、会場を大いに盛り上げた。
スピルバーグ監督の劇場デビュー作「続・激突!カージャック」で始まったウィリアムズとの黄金タッグ。続く「ジョーズ」での大成功で、両者の絆はさらに強固なものとなった(このタッグは、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」まで現在29回を数える)。
いまなお“サメ映画の決定版”と評される本作では、サメに襲われる様子を臨場感たっぷりに描くため、スピルバーグはサメの一部だけ見せる演出で不安をあおった。一方、ウィリアムズはメインテーマを制作するにあたり、音の大小から楽器の種類までこだわり抜き、人間が恐怖を感じる音楽を作り出してみせた。人々の記憶に焼き付く名シーンが誕生させた、映像×楽曲の相乗効果は、映画音楽の“基礎”として、いまも多くの映画監督、作曲家に影響を与えている。
ウィリアムズは本作で75年・第48回アカデミー作曲賞を初受賞。ちなみに「ジョーズ」の成果を受けて、スピルバーグが、「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」を製作中だったルーカスにウィリアムズを推薦したという逸話も。当時、ルーカスは「2001年宇宙の旅」にならい、既存のクラシック楽曲を使用するつもりでおり、当初はウィリアムズの起用には懐疑的だったとも伝えられる。
スピルバーグが人類と異星人の接触を描いたSFドラマ。70年代後半、「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」とともに世界中でSF映画ブームを巻き起こした作品だが、どちらもウィリアムズが音楽を担当しているのは、やはり驚異的だ。映画のクライマックス、突如現れたUFOに対し、人類が音と光で交信を試みるシーンで使われた“レ・ミ・ド・ド・ソ”の5音階はあまりにも有名。なお、ウィリアムズは7音階を想定していたが、スピルバーグが「それでは、メロディになってしまう」と却下したエピソードも残されている。
「ジョーズ」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」と名曲を生み出し続けた、70年代のウィリアムズの勢いは止まらない。いまは亡きクリストファー・リーブさんが、惑星クリプトンから地球にやってきた超人・スーパーマンを演じた大ヒット作では、主人公が大空を翔(かけ)る勇姿を重厚感たっぷりに表現したテーマ音楽を生み出し、長らく「ヒーローと言えば、この曲!」というイメージが定着。同曲は2006年にリブートされた「スーパーマン リターンズ」のオープニングクレジットにも使用され、スーパーマンの復活をファンに強く印象づけた。
地球に取り残された異星人と子どもたちの交流を描いたスピルバーグ監督によるSFファンタジー。主人公のエリオット(ヘンリー・トーマス)が、自転車の前かごに乗せたE.T.とともに大空を飛ぶという名シーンで流れる「地上の冒険(E.T.脱出作戦~さよならエリオット)」は、観客が“本当に空を飛んでいるかのような気分になれる”名曲中の名曲だ。作曲家・編曲家として本領を発揮したウィリアムズはアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞の各作曲賞と、グラミー賞の4冠に輝き、名実ともに映画音楽界の頂点に立った。
クリスマスの家族旅行に置いてきぼりにされた少年ケビン(マコーレー・カルキン)が、泥棒相手に奮闘するファミリーコメディ。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を連想させる、ウィリアムズによるオリジナル曲の「出発だ!」は、映画の枠を飛び越えて“とにかく大慌て”なシーンの定番曲として知られる。美しいコーラスが印象的な「サムホエア・イン・マイ・メモリー」には心が温まる。本作と、そしてウィリアムズのオリジナルテーマ曲を使用したリブート作「ホーム・スイート・ホーム・アローン」は、ディズニープラスで配信中。
「プラトーン」のオリバー・ストーン監督が、ケネディ大統領暗殺事件の謎に迫った社会派ドラマ。地方検事ジム・ギャリソンの著書「JFK ケネディ暗殺犯を追え」と、同事件を研究するジム・マースの著書を基に、暗殺事件を巡る唯一の訴訟であるクレイ・ショー裁判に至るまでの顛末を、虚実入り混ぜながら描いた。スリリングな展開に、ウィリアムズの重厚なスコアが寄り添い、緊張感を漂わせる。92年・第64回アカデミー作曲賞にノミネートされたが、受賞したのはディズニー作品「美女と野獣」だった。
スピルバーグ監督が、ナチスによるユダヤ人大虐殺から多くの命を救った実在のドイツ人実業家オスカー・シンドラーを描いた名作で、リーアム・ニーソンが主演を務めた。ウィリアムズはバイオリンの独奏をフィーチャーした、哀愁がにじむメインテーマをはじめ、数多くの名スコアを生み出し、94年・第66回アカデミー賞で4度目の作曲賞を受賞している。ほぼ同時期には、同じくスピルバーグとのタッグで「ジュラシック・パーク」の音楽を手がけるという、“巨匠”ならではの離れワザも。古代へのロマンと生命に対する敬意を込めた、壮大なスコアを奏でた。
ウィリアムズの活躍は、21世紀を迎えても留まることを知らず、輝きを増している。その象徴と呼ぶべき作品が、「ハリー・ポッター」シリーズだ。魔法に溢れた世界、そこで繰り広げられる冒険と戦いのドラマを、「ヘドウィグのテーマ」を代表とする楽曲の数々がときに荘厳に、ときに幻想的に彩った。ウィリアムズは第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」から第3作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」まで担当。以降は、おなじみのテーマ曲は引き継がれる形で、パトリック・ドイル、ニコラス・フーパー、アレクサンドル・デプラら気鋭の作曲家が音楽を担当した。
「ジョン・ウィリアムズ 伝説の映画音楽」は、11月1日からディズニープラスで日米同時独占配信。
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