本シリーズの他の作品は未見だけど、これだけは何度も観たくなる。観るたびに完成度の高さと、ヒース・レジャーのジョーカー像に心酔する。
冒頭、後ろ姿の世界観だけで、止めたり戻したりして何度も観てしまう。銀行強盗のシームレスな展開は、いつ観ても驚嘆。でも不思議なことに、脚本やカメラワークなどの計算によって作られた感じがしない。なぜなら、もし道化師の一人が、或いは支店長が、あれと違う想定外の動きをしたとしても、バスの突っ込むタイミングが違ったとしても、ジョーカーが、あのシークエンスを、ちゃんと着地させるだろうと思える。幾通りもの違うパターンを無意識のうちにイメージする事ができる。それほどジョーカー像が確立してる。自立してる。
全てが際立っているから、挙げ出したらきりがないが(留置所で、彼を中央に配置したショットの闇美しさ!バズーカの構えの悪魔かっこ良さ!)、ディテールにおいては、完璧なジョーカー像に、ほんの少しだけ"ずれ"みたいな要素を加えていると思う。
上手く言えないけど、例えば、首の傾け方や、つまみ食いの仕方、札束からの降り方とか…(その延長線上に、誰が見ても明らかな、口周りの癖や、メイクの崩れ具合があるのだと思うが)そんな、分かりやすい描写ではない部分。
それらが潜在意識の深いところにずっと引っ掛かり、刺激されているような気がする。その存在の全てが突き抜けてる。