監督・キャスト含めて、このなんだってできる座組でなにをやってんだ?という感想が最初にでる不思議なテイストの作品。
ただ、ストーリー単体でみるとそこまで意味不明ということはなく、実は一本筋が通ってるドッペルゲンガー系ホラーテイストなプロット。でもとにかく演出が怖がらせにいってないのでホラーとして成立していない。
これワザとやってるのは明確で、それに中盤に出てくる祈祷師のシーンあたりでやっと気づけた。ほとんど曲芸でしかない大袈裟すぎるお祓いに対して、まったく飲み込めていない岡田将生さん川口春奈さん緒方直人さんの表情が抜群にコント調なので、真剣味に欠けている。一応、郷に従うお祈りも「こんな感じでいいのかな?」って顔に書いてある演技が緩和にしかなっていない。
かと思えば、科学実験のように仰々しく説明される岡田将生さんによる種明かしシーンは、急にどうした?っていうくらいみんな物わかりがよく、いちいちクソ真面目な表情でオウム返しする真木よう子さん緒方直人さんには思わず吹き出しそうになってしまう。こいつらがそもそもドッペルゲンガーなんじゃないか?と思うくらいの様変わり。
要はJホラー演出を逆手にとったコメディというのが正しい楽しみ方だと思っていて、職業監督的な活動としてのジャンル映画制作に疲れた入江監督の息抜きだったのかなあと想像してます。
「映画監督は名作のために駄作をつくる必要がある」たまに聞くこの格言における、駄作の必要性が息抜きだとしたら、傑作名高い『あんのこと』のためのチャージとなった作品なのかも?と邪推してしまった。でもその割には充分楽しめる作品だと思います。
どこを?と言われたらまずもってキャストの演技かと。特に緒方直人さん渋川清彦さん山田真歩さんあたりは確実に生き生きとふざけていて最高です。