20241222

久しぶりにXをのぞいたら、おすすめタブのいやなところに触れてしまって、勝手に傷ついていた。とあるひとのポスト、それに対する引用ポストの内容とその返信、それらに対する周りのひとたちの何気ない反応に対して。

まず、とあるひとのポストは、たいへんいい内容だった。真っ白にかがやいた文章だった。腐りかけの世界と人々に汚されることなく、自分の考えをまっすぐに信じたままおとなになれたひとの文章だった。そのひとが若いひとに何かを伝えていける立場にあること、きちんとその何かを受け取っているひとたちがいること、その両方にとてもこころがあたたかくなった。なんだあ、まだ世の中もひとも捨てたものじゃないんだなあ、と、ありふれた、平凡なことを思った。

ほんとうなら、それで終わりでよかった。でも、やっぱり、世界はうつくしくない。

軽い口調ながら、一生懸命にがんばっているひとをからかってばかにして、相手の傷ついた反応を心待ちにするような、かなしい内容の引用ポストがついていた。ひどい内容だ。でも、なんとなく、その気持ちもわかるような気がした。おとなになるにしたがって、自分が自分じゃいられなくなって、汚されてしまうのは仕方ないことなのかもしれない。そもそも、おとなになるということが、そういうことなのかもしれない。でも、自分の意志じゃなかった場合。遠い、思いがけないところで汚されてしまった場合は、何もかもが許せなくなる。そんなことけっして望んでいないのに勝手にだいじなところに踏み込まれて、汚される前の、平穏な自分にはどうしたって、戻れないのだもの。

汚されていないひとたちの話も声もどんどん遠ざかっていって、この溝はもう二度と埋められないものであるかのように感じて、つらくなる。少し前のぼくがまさにそうだった。けがされたことが許せなかった。その原因であるひと、世界、そうしてやすやすと汚されてしまった自分も、けがされないままうつくしいまま生きられているひとたちも、すべて、なにもかも許せなかった。だから、一生懸命に生きているひとたちのことをばかにしたくなる気持ちも、ほんとうはいけないことだってわかっているけれど、どうしてもひとを傷つけずにはいられない気持ちも、痛いくらいにわかってしまった。

だからって、ぼくはそんな引用ポストをしたりはしない。

でも、その痛いほどわかるからこそ、引用ポストに対して簡単にひとを分断できる言葉をつかって非難し、対比するかたちで自分の成功体験を書いている周りのひとの反応に、勝手に傷ついてしまった。ほんとうにその通りだし、引用の内容は非難されてしかるべきであったけれど、そんなこと言わないでほしいなあと思った。ほんとうはわかってるって、でも、そうしないと生きていけないくらい、自分が許せなくて、何もかも許せなくて、つらいんだって。

元ポストのひとは、すごーく丁寧な返信をしていた。自分を信じているひとたち、そういう振る舞いをしなければいけなくなるしかなかったひとたち、両方を掬いあげるようなとっても優しい文章だった。ぼくも可能ならそうありたい、と思う。誰かを救いたいとまでは思わないけれど、泣いていたぼくをすくってあげられるのはぼくしかいないのだから。あの出来事が起こる前の自分には戻れないけれど、これ以上、たましいが汚れないように生きることはできる。泣くしかなかった、泣き止んだあとは周りを傷つけずにはいられなかった、あの頃の自分を守ってあげたいし、助けてあげたいし、掬ってあげたい。そうできるような何かが、いまのぼくには必要なのだと、あらためて実感した。その何かが一体どんなかたちをしているのか、今はまだわからないし、心当たりもまったくないけれど、これからの日々で、少しずつ見つかるといいなあと思う。

まず最初に、「西の魔女が死んだ」をきちんと読もうかなあ。もう読んでもいい時期な気がする。ちょうどはやり始めた時期が、大切なものから不当に引き離された時期で、本の中の女の子はぼくと違って、大切なものをほんとうの意味ではうしなっていないように見えたのがなんか許せなくて、少し読んでやめてしまった。でも、ここで書いたポストの内容が「西の魔女が死んだ」についてだったわけだし、なんだか本のほうからもう大丈夫だよーって呼んでくれているような気がする。それでもやっぱり許せないなあと思うかもしれないし、周りのひとが受け取っているようないいものを、受け取れないかもしれない。でも、少しでも自分を信じて読んでみようと思う。

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書くか書かないか、とてもためらうことを、青空にそっとなげた。なんとなくわかること。知っていること。でも、ぜったいに軽率に話してはいけないこと。どうしてだかわからないけれど、そろそろだれかに話してもいいかもしれないと思ったから。それに、この話題を出す自分を許せる気がしたから。でも、あまりひらけたところで話すべきではない話題ではあると思っているので、やっぱりやめておいた方がよかったんじゃないか、ひき返せるうちに、今からでも消した方がいいかなあ、そんな気持ちがずっと消えない。
今はまだ認識があいまいで、はっきりとした名前を与えられていない何か。それにいちばん近いであろうことばを、ほんとうは知っている。でもそのことばでさえも、ほんとうの意味では違うと思う。わかっているけれど、認めたくない何かしらの理由があって、わからないふりをしているだけなのかもしれない。だって、そのことばはあまりにもあいまいだし、無防備だし、排他的だから。
ある種の嘲笑の対象でもあることばだし、他人を単純に線引きしてしまう危うさもある。

外からそのことばを使うひとは、中の人をあまりよく思っていないことが多い気がする。良くて不思議ちゃんかお花畑扱い、もっと悪ければ狂人か、びょうき。何を結びつけて考えようと自由だけど、他人が信じるものをこうも簡単に否定してしまうのは、あまりよろしくないことだと思う。
かといって、主体的にそのことばを使っている中のひとたちもそのひとたちで、聖人のような人たちかといえば当然そんなことはなく、一部にぎょっとさせられるひとがいるのも確かだ。自分がまるでなにかから選ばれたように、自分に見えているすべてが正しいかのように、平気で書いたり言ったりするひとたち。

そのひとたちの持つ世界がただそう成り立っているだけなので、世界の外部にあたるわたしがその表層をのぞきこんで、勝手に引いてしまうのは失礼なことなのだとなんとなくわかっているけれど、どうしてもそういう排他的なひとのことは理解できないし、すなおに受け入れることがまだむずかしい。

「わたしには○○が見えるの！○○はこう言ってるからあなたもそうした方がいい」「最近わたしの体調が悪いの、あなたが○○を飛ばしているせいだと思う！」と、いきなり言われて、いやな気持ちにならずにいられるほど、わたしはにんげんとしてよく作られていない。

もちろんこれは極端な例だけれど、こんな風に他人を怖がらせて迫ったり、知識やちからをひけらかしたり、ひとの心のやわらかいところにつけ込んで過剰なお金を得たりするのは、やっぱりなにかわたしとは違うなあと思う。

だからその道から距離を置こうとしたのも自然なことだったと思う。でもそれは、自己否定につながるような悲しいことだった。

見えているもの、知っているものを否定することは、わたし自身を否定することに他ならない。

こうやって内省的なことを書いていると、わたしがすごく傷つきやすくて繊細で、でもその痛みをやさしさに変えていけるような立派なにんげんに見えるかもしれないけれど、もちろんそんなことはない。かつてのわたしは、心の中に留めておく消極的なやり方だったにせよ、なにかへの加害という方向で心の痛みを昇華していたから。
色々あった今は、別にむりに否定しなくてもいいのかなあ、もう少し自分の中で考えて、探してみるのもいいかもしれないなあと思っている。あのことばに代わることばがあるなら知りたいし、ないのなら真摯にそれと向き合いたい。都合のいい妄想なのかもしれないし、びょうきなのかもしれない。だけど本気でやれば、きっと別の何かになってくれると信じている。まずはもっと色んなことを知っていかなくちゃ。

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あんまり好みじゃない広告が消せなくなったのも、なぜか勝手にえらいひとのポストが流れてくるようになったのも、知らないひとたちのけんかや発狂を見せつけられるのも、Xのぜーんぶが嫌。こんなところでつらつら何か書いてたって仕方がないよ、もうここから離れよう。でも、軽い気持ちでなんでも好きなことを書いてよくて、しかも自分をとくべつ良く見せようとしなくてもいい場所って、いろいろ探しても、あそこしかないんだよなあ。でも、わたしも含めてたくさんのひとが、数年前から変更されはじめている仕様に、とっくに嫌気がさしている。やっと見つけたXに代わる似たような場所も、めんどうなトラブルに巻き込まれてしまって、青いちょうちょに触れるのさえ、少しこわくなってしまった。

自分のことばをきちんと使って、考えていることを話し合える関係性に憧れていた。けれど、自分のことばを使うということは、自分を切り売りすること。身を売るのとおなじように自分の深いところをけずる行為で、これはとてもこわいことなのだと、よくわかった。そして、どんなことにも自分にいいようにしか考えられず、自ら暗いところに向かって行ってしまうひとがいることも、そういう業のようなものがたしかに存在していることも、身にしみて、よくわかった。心を尽くすとまではいかなくても、良識をもって一定の距離感を保ちながら接していたとしても、その渦に引き込まれていくかのように、こちらもこころを蝕まれてしまうくらいには、そのひとの背負っている業が深すぎることがあるみたい。ほんとうにこわかった。

思い込みがはげしい、と軽率にひとを非難できるほど、わたしもできた人間ではないからこういうことを話すべきではないけれど、それでもあえて書かせてください。そのひとに対して、好きだと言ったことなどないのに、勝手に好意を抱いていたことにされていて、こわかった。恋人がいると仄めかしていたし、そんなこと一言も言っていないのに、関係がうまくいっていないことにされて、見当違いのことを言われてこわかった。インターネットを介して少しお話をしただけの関係性のひとに恋愛感情はぜったいに抱かないから、趣味の話がしたいだけで、生身のあなたなんてどうだっていいです、とはっきり言わなかったわたしが悪いのかな？と、自分を責めもした。でも、考えれば考えるほど、逆上させて取り返しのつかない傷を負わされていたかもしれないし、そのひとに大切なものの話をしていなくてよかった、と思い至るのもほんとうだった。そもそも、話していた、と言うよりも一方的に相手の話をきいていただけのような気がする。夕方から明け方まで、ずっと長い長い長いメッセージが届くのもこわかった。自分の時間を優先したいから、と休みの日にまとめて返信しようとしていたのに、なぜかわたしがそのひとの個性に耐えられず、圧倒されてしまっていると解釈されてかなしかったし、それ以上に、わたし自身をよく知らないのに勝手に決めつけて軽んじられたようで、くやしかった。嫌だったところを書こうとすると、他にもたくさん見つかる。だけどこの話ばかり続けていたら、自分もきたなくなりそうだから、もうなるべくしない。それに、わたしがそのひとを嫌だと思うのと同じように、きっとわたしも他のだれかに嫌な思いをさせている。これもかなしい淋しい業のひとつなのでしょう。
こたびの経験から、もうほんとうのわたしの言葉は、ぜったいに誰にも触れさせない。大切なものはだれにもぜったいに見せない。これ以上傷つきたくないし、きたなくなりたくないから。と、決めて、そのようなことを書いた。もちろんこの考えに至るまで、相手の悪口もたくさん書いた。それはわたしの未熟で、いやらしい、よくないところだとわかっている。きっと、その浅ましさがよくない縁を引き寄せたのだということも、今はよくわかっている。

でも、時間が経って、メモ帳にわたしの言葉を書き溜めていくうちに、自分そのものについて何かを書くのも、やっぱり好きなんだなあと思うようになった。恋人の手料理がおいしかった、町中華のチャーハンがおいしかった、この本が読みたい、この本おもしろかった、空がきれいだった、へんてこな雲を見た、そんなどうでもいいことも、気軽に書きたい。ひとにほめられたいとか、だれかの反応がほしいとか、そういう素敵だけれど淋しい欲求とはちがう理由で、わたしは、もっと日常的に、気軽に何かを書きたい。そういうだいじなことに気がついたら、前よりも、目に見るものがきらきらしているし、もっと世界に触れたいって思うようになった。おしゃれなお店やおいしいごはん、使っている化粧品、そんなほかのひとのしあわせそうな話を聞いても、むかむかしなくなった。今まできらいだったものに対しても、そんなにきらう必要もないのかもしれない、と思えるようになった。だれかを憎むことって、ほんとうは、すごくかなしくて、淋しいことだから。