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わずらい)” の例文
彼は学校生活の時代から一種の読書家であった。卒業の後も、衣食のわずらいなしに、購読の利益を適意に収め得る身分を誇りにしていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
老いたる親に思いもよらぬわずらいをかけて先だつ身さえ不幸なるに、死してののちまでかかる御手数をかけるは、何とも心苦しいが、何卒なにとぞこの金をもっ
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
冷々ひやひやと濡色を見せて涼しげな縁に端居はしいして、柱にせなを持たしたのは若山ひらくわずらいのある双の目をふさいだまま。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はそれをここに叙述するわずらいを避けて、その時糸崎検事に送る為に書いた私の意見書が残っているから、それにいくらか書入れをして、に写して置くことにするが、この推理は
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分の智慧ちえに苦しみ抜いている兄さんにはなおさら痛切に解っているでしょう。兄さんは「全く多知多解たちたげわずらいをなしたのだ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも荒物屋の婆さんや近所の日傭取ひやといにばかり口を利いて暮すもんだからいつの間にか奮発気がなくなって、引込思案になる所へ、目のわずらいを持込んで、我ながら意気地はない。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼らは複雑な社会のわずらいを避け得たと共に、その社会の活動から出るさまざまの経験に直接触れる機会を、自分とふさいでしまって、都会に住みながら
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
障子もふすまはなつ。宿の人は多くもあらぬ上に、家は割合に広い。余が住む部屋は、多くもあらぬ人の、人らしく振舞ふるまきょうを、幾曲いくまがりの廊下に隔てたれば、物の音さえ思索のわずらいにはならぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが曝露ばくろしたので、本人は無論解雇しなければならないが、ある事情からして、放って置くと、支店長にまで多少のわずらいが及んで来そうだったから、其所で自分がせめを引いて辞職を申し出た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)