長野県と富山県は隣どうしだが一般車が走れる道路が一本も無いらしい。
別に仲が悪いわけではなく(と思っている)県境には日本の屋根とも呼ばれる北アルプス、そして大渓谷黒部川があるためである。
唯一の交通手段は立山黒部アルペンルート。しかしこれも冬の間は雪に閉ざされて通行出来ない。だが、それがむしろこの山域の大きな魅力であると思う。
黒部横断ワンデイ。
現実的では無いように思えるが先輩方のチャレンジを自分たちもやってみたくなった。
ルートは長野県大町市の日向山ゲート~扇沢~針ノ木峠~黒部湖~ザラ峠~常願寺川~富山県立山駅。
コンディションを選べば非常に合理的で素晴らしいライン。ただ移動は基本的に全て谷の中なので雪のコンディションにはかなり気を使わなければならない。
3月に入り天候が安定して降雪も少なくなってきたタイミングを見計らいチャレンジしてみた。
今回のパートナーは山岳スキーレースなどに出ているアスリートの島くん。
2021年03月11日(木)
出発地は扇沢の手前の日向山ゲート(標高1000m)。4時04分写真を撮って出発。
スキー板とブーツを背負いランニングシューズで車道を走る。頭上には満点の星空、そして暗い道をヘッドランプで照らしながら走るとワクワクした(笑)
さすがに走りではついて行けないが自分も気合いで走り続けて扇沢(1450m)に4時58分着。
ここでランニングシューズからスキーブーツに履き替えてスキーのシール歩行に切り替える。ブーツは両足で2400g,板は2500gちょい、それにシールなので6キロ程軽くなる。一気に肩が軽くなった。
夜が明けてくると針ノ木峠までの沢筋が一望できる。日本離れした景観に気分が上がる。天気も良さそう!
中間部の急斜面にはデブリがありシール歩行がしにくいのでスキーを背負って登った。
急斜面を過ぎて再びシール歩行するがマヤクボ沢分岐の上からは雪面が硬くパックされていてスキーだと踏み抜けないのでツボ足で登る。
6時45分針ノ木峠(2536m)着。
扇沢からは1時間40分ほど。
自分たちで「はやっ」とつぶやいていた。
峠からは黒部湖まで標高差1100mほどの滑走。ようやく山に陽が当たり出すが斜面はカチカチ、出だしは40°ほどの斜面が続くので横滑りでズリズリ高度を落とす。
一般的には楽しくないだろう。先行してどんどん滑って行く島を見ながら感情なくターンしながら着いていく(笑)
峠から10分程滑った1950m付近のゴルジュ状の地形で雪が途切れており川がチョロチョロ流れていた。2、3箇所ツボ足になり先に進む。
1880m辺りで本谷合流すると川幅は開けてきて雪の繋がりも悪くない。カチカチの斜面だが斜度は緩いのでスイスイと滑っていく。
黒部湖まではかなり長く感じた。最後は何ヶ所か板を脱いで対岸に渡った。
下流が開けてくると黒部湖。だがイメージしていた凍った湖ではなく、水が抜かれていて真ん中に川が流れている。
しかも深い谷の中はまだ日の出前、懇々と流れる清流に雄叫びをあげながら裸足で駆け抜ける。
先に渡りきって躊躇している島をパチリ。
無事に2人とも渡りきってブーツを履き直す。
7時55分、今度はザラ峠に向けて中ノ谷を詰める。
ちょっと目を離したら島が中ノ谷に向かって走っている....前で走っている島を見て「なにやってんだよ~」と思いながら自分も走っている。
変態。そんな言葉が頭を巡っていた。
中ノ谷序盤の滝の地形も上手く埋まっておりシールのままどんどん上部へ。
中間より上は広々しており斜度も緩くスタスタと歩いた。日射は強いが時折吹く風のおかげで気持ちよく登る。
9時35分ザラ峠(2348m)着。
ここまで出発から5時間半ほど。
少し前に峠に着いていた島が応援してくれた。
ザラ峠では電波が入ったので知り合いに順調に来ていることを連絡した。
10分程休み、これからのルートを確認。
ここから立山駅(460m)までは標高差1900mほど。
ザラ峠から出だし400mほどはカチカチの急斜面。転べば止まらなそう。
少し疲れもあるが冷静に横滑りしながら高度を落としていく。
こういう時にスキー板のサイドカーブがきついとトップとテールのエッジが雪面に引っかかってしまい、ブーツ下が雪面に着かずかなり不安定。マニアックだけれどこういう所を好んで滑る方はスキー板のラディウスも注意して選んでみて下さい(笑)
翌日起きると身体はズシッと重いけれどなんだか心地良い。
うーん、、またやりたいかなぁ~。