2024年のマンガ業界で話題をさらった試みのひとつに小学館のマンガアプリ「マンガワン」のYouTubeチャンネル「ウラ漫―漫画の裏側密着―【小学館マンガワン】」の動きがある。YouTubeを使ってマンガ作品のPVやマンガ家のインタビューや作画模様の動画を配信することは、これまでも珍しくなかった。
しかし「ウラ漫」はマンガ家に加えて編集者・編集部にフォーカスし、ひとりひとりのキャラを引き出す番組づくりによって数十万回、ものによっては165万回超え再生の動画までが登場した。ウラ漫の始動以降、マンガ家からの持ち込みやコミティア等での出張編集部のマンガワンブースへの列が爆増するなど、無視できない影響力を持ち始めている。
マンガ編集部が編集者・編集部をフォーカスすることにどんな意味があるのか、はたしてこのような流れは広がるのか、考えてみたい。
そもそもどんな内容でバズっているのか
ウラ漫の特徴は、ヒット作を作った編集者やマンガ家に密着して生活模様やパーソナルな部分まで掘り下げる点にある。また、マンガ家と編集者の打ち合わせ模様も配信し、マンガ制作において編集者がどのような役割を果たしているのかも見せている。
既存のマンガ関係のYouTubeチャンネルでは編集者が登場しても、「マンガ家およびマンガ家志望向けにノウハウを発信する」あるいは「ヒット作を作った編集者にその背景を聞く」といったものが大半だった。
ウラ漫にもそういうコンテンツはあるが、それに留まらず「キャラの立った人間をフォーカスしたドキュメンタリー」として間口の広い内容になっている。
多動の極みのような仕事ぶりを発揮し、カメラが入っていようがおかまいなしにバカでかい声で叫びながら『ケンガンアシュラ』を作画するマンガ家だろめおん、散らかりまくった自宅からリモートでマンガ家と打ち合わせをする「東大卒」の担当編集者・千代田修平……といった切り口で番組制作がされている。
ウラ漫では一見するとマンガとは直接関係のない、作家や編集者の趣味や経歴、家族の話まで掘り下げていくので、続けて観ていると人間性の部分に感情移入してきて、そこから「この人が携わった作品を読もうかな」という気が起きてくる。