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片目を隠した女性集団のシュプレヒコールに伴走…独裁政権から亡命した83歳の映画監督が「距離」があるからこそ撮れた「チリの姿」

チリ出身のドキュメンタリーの巨匠、パトリシオ・グスマン監督の最新作『私の想う国』が公開中だ。 

全編で約4時間30分にも及ぶ、 サルバドール・アジェンデ政権時代の政府とその崩壊を描いた『チリの闘い』や、宇宙や自然の雄大さとともに人間の蛮行をとらえる『真珠のボタン』『光のノスタルジア』などで知られるグスマン監督。新作の題材として選んだのは、2019年にチリのサンティアゴで動き出した民主化運動だった。地下鉄料金の値上げ反対をきっかけとしたこの運動は、やがて120万人を巻き込み、国を確かな民主化の動きへと導いていく。

かつてはグスマン監督自身も、チリ全体に及ぶ革命を国民として経験した。しかし今回の革命については、自身が経験した革命――チリで初となる社会主義政権(アジェンデ政権)を誕生させた、1970年の革命――と重なるものを覚えつつも、同時に確かな違いも感じたという。それはリーダーやイデオロギーが不在で、かつ女性たちが主役であるということだった。

チリで1973年から90年にかけて独裁者として君臨した、アウグスト・ピノチェト政権時代にキューバに亡命し、現在はフランスのパリに暮らすグスマン監督に、オンラインでインタビューを行った。なお取材時間が限られていたため、本稿は配給の許可を得て、プレス資料から一部内容を引用したことをお断りしておく。(通訳:新谷和輝)

(C)Atacama Productions-ARTE France Cinema-Market Chile/2022/
 

――本作『私の想う国』では、ナレーションで2019年10月18日にチリで抗議活動がはじまってから1年後に、グスマン監督がチリを訪れ、撮影が開始されたことが語られます。本作が生まれた経緯についてお話をいただけますか。

グスマン監督(C)Atacama Productions-ARTE France Cinema-Market Chile/2022/

2019年10月にはじまった民衆の抗議は、やがてチリという国そのものを動かすようになりました。しかし、私はその時は現地にはおらず、最初の炎を撮影することはできなかったんですね。また、コロナ禍の移動制限などもあり、なかなかチリに行く機会も得られない状態でした。

1年後、パンデミックが収束してようやく、私は信頼できるスタッフたちとともにサンティアゴに行き、2回に分けてチリの今を撮影することができました。それは現実に向き合い、現実を撮影し、自分たち自身も現実の一部になっていくというプロセスでもあったように思います。最初の撮影は8週間、2回目は3週間で、合計では約3ヶ月に及びました。

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