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「伊調馨さんは選手なんですか?」衝撃会見で露呈したパワハラの構造

無意識レベルでハラスメントする人々
「そもそも伊調馨さんは選手なんですか?」――レスリングのパワハラ問題で、至学館大学・谷岡郁子学長が衝撃の会見をおこなった。この会見から、パワハラとは何か、なぜ起こるのか、根深い構造を知ることができる。
大相撲をはじめとする暴力やパワハラについてたびたび論じてきた筑波大学教授の原田隆之氏が、この問題を考察する。

相撲の世界と似ている

まるで、デジャブを見ているかのようだった。

レスリングの伊調馨選手へのパワハラ問題で揺れる、至学館大学の谷岡郁子学長の会見を見たときの第一印象だ。

それは、つい何ヵ月か前に繰り返しテレビで流れた、力士への暴行事件を受けての相撲協会の危機管理委員長や、同評議員会の池坊保子議長の会見を彷彿とさせるものだった。

 

どちらにも共通するのは、組織を守りたいというあからさまな姿勢が前面に出て、弱い立場にある個人への思いやりや敬意が微塵も感じられないことであり、甚だしい人権意識の希薄さだった。

こういう人がトップを務め、似たような考えの人々が取り囲む組織では、パワハラが起きても何の不思議でもないと感じさせる会見だった。

〔PHOTO〕gettyimages

伊調選手へのパワハラの経緯

ここで、伊調選手へのパワハラ問題のこれまでの経緯を簡単におさらいしてみたい。

今年1月、レスリング関係者が代理人の弁護士を通して、内閣府公益認定等委員会に宛てて、日本レスリング協会の強化本部長であり、至学館大学レスリング部監督の栄和人氏が、伊調馨選手に度重なるパワハラをしていると告発状を提出した。

告発の内容によれば、栄氏は、強化本部長の地位を利用して、伊調選手やそのコーチに不当な圧力をかけ、伊調選手は練習もままならない状態に追いやられているという。

この件が明るみに出た後、日本レスリング協会は、「そのような事実はない」と否定するコメントを出した。また、栄氏本人も「そのような覚えはない」と否定したが、その後心労から体調を崩して療養中であるという。

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