新型コロナウイルスへの政府の対策や人々の反応が、日韓で対照的に見える――そう感じている人は少なくないと思うが、実際のところ韓国の人々はどのように過ごしているのか。『韓国 現地からの報告』を上梓した伊東順子氏がレポートする。
日韓の国民性が逆転した?
新型コロナ対策をめぐる日本と韓国の違いについて、日韓を行き来する我々ノマド族やビジネスマンの間では、ごく初期の頃に話題になったことがある。
「これは日韓が『逆転』したのでは…」
最初に皆が気づいたのは空港だった。記憶の残るのはMERS(マーズ・中東呼吸器症候群)を飛び越えて、その前のSARS(サーズ・重症性呼吸器症候群)の時、あの頃も頻繁に日韓を行き来していたが、当時空港内でマスクをしているのは、ほぼ100%日本人だった。他の外国人はマスクなんかしていなかったし、韓国人もしかりだった。
それが今回は真逆、マスクをしているのは韓国人か中国人が圧倒的に多く、日本人のほうが明らかに無防備だった。1月下旬から2月初旬の話、韓国ではまだ「武漢肺炎」と呼んでいた頃だ。
「逆転」と言っても、それは「日韓どちらが正しいか?」のような話ではない。限られた情報で上下や優劣を決めたり、ましてや勝敗を競うなど我々現場の人間には全く意味がない。どっちの国も勝利してほしい。今回の相手は無国籍のウイルス、共通の敵なのだから。
敵との戦い方が違うのは、初期の段階では仕方ない。それぞれの国家やコミュニティには得手不得手があり、国民も「きっちりやったほうが安心で免疫が上がる」とか、あるいは「緩やかなほうが気楽で免疫が上がる」など意見が割れるだろう。
ところで、興味深いことに今回は、これまでステレオタイプに語られてきた「日韓の国民性」に逆の現象が見られたことだ。「韓国人はなんでもケンチャナヨ、よく言えば楽観主義だけど、悪く言えばいいかげん」、一方で「日本人は逆に几帳面すぎて疲れる」とか、過去にはそんなふうに語る人がたくさんいたのだ。