河野太郎防衛相が15日、突然表明した地対空迎撃システム「イージス・アショア」導入の「停止」。重要なのは、配備を一時的に停止するだけなのか、配備そのものを断念するのかにある。
河野氏は「防衛省としては配備のプロセスを停止し、国家安全保障会議(NSC)に報告する。議論をいただいたうえで、その後の対応について考えていきたい」と述べるにとどめた。
NSCの常任メンバーは首相、外相、防衛相、官房長官の4人。河野氏は「安倍首相には説明し、了承をいただいた」と述べており、配備そのものが白紙撤回される公算が大きい。
導入は、まともな判断ではなかった
イージス・アショアの導入は2017年12月に閣議決定された。安倍首相がトランプ米大統領に「バイ・アメリカン(米国製を買え)」と迫られて導入を決めた兵器のひとつだ。米政府に支払う費用は1兆円近い。
イージス・アショアの仕組みは、強力なレーダー波(電磁波)を出すため、航行中に乗員が甲板に出ることを禁じているイージス護衛艦と同じイージス・システムを、そっくり地上に置くというものだ。そんな規格外の兵器を市街地近くに置くこと自体が、まともな判断ではなかった。
2018年6月、防衛省が秋田・山口両県への配備を公表すると、両候補地からは、健康被害への不安や標的となることへの恐怖から強い配備反対の声が上がった。しかし、防衛省は昨年12月、山口県に対して計画通りに配備する旨、通告していた。
今回、河野氏が「停止」を表明した背景には、新型コロナウイルス対策に多額の国費が必要となる中、イージス・アショアに巨費を投じることへの疑問があったのではないだろうか。
だが、河野氏の配備停止表明は通常国会が終わる17日の前々日であり、これでは野党が安倍首相や河野氏に真意をただす機会はほとんどない。説明責任を回避するタイミングで、重大な政治決断を表明したこと自体が問題視される。