“あの異例の宣言文”から7年…ついに交替した「少年サンデー」新編集長は何者か?
「週刊少年サンデーは、今後、生え抜きの新人作家さんの育成を絶対的な使命とします。この方針に反対する行為をとる編集部員は容赦なく少年サンデー編集部から去ってもらいます」――2015年に編集長に就任し、宣言文をぶち上げた市原武法編集長が退任し、2021年10月に週刊少年サンデーの21代目編集長に大嶋一範氏が就任した。
最近のサンデーと言えば、『名探偵コナン』がコミックス100巻を迎えたというニュースが記憶に新しいが、新人発の大ヒット作となった『葬送のフリーレン』、今期アニメ放映中の『古見さんは、コミュ症です。』『舞妓さんちのまかないさん』など、一時期よりも話題作が増え、映像化も続いている。紙のサンデー本誌の部数は低減傾向にあるが、電子・ライツ(版権)を含めたトータルの売上は顕著な伸びを見せているという。
大嶋氏は市原編集長時代に副編集長を務め、マンガアプリ「サンデーうぇぶり」を立ち上げた人物だが、今後、少年サンデーをどう率いていくのか?
コロコロ出身、デジタルで成果を出したトラブルシューター
――なぜ大嶋さんに編集長が代わったのでしょうか。
大嶋 前任の市原(武法)がサンデー史上異例の6年半も編集長を務めたのち「そろそろ交替だ」となり、僕が指名されました。
なぜ僕だったのかは自分としても類推するしかないのですが、経歴をお話しますと、1980年生まれの40歳で、2003年に小学館に入社してから2014年までは「コロコロコミック」編集部に所属し、漫画の仕事を中心に、レベルファイブさんと『イナズマイレブン』、ガンホーさんと『パズドラ』などのお仕事をしていました。そのあと「サンデー」に異動し、『名探偵コナン』等の作品の担当となり、マーチャンダイズや映画を含めて、2016年までは幅広くコナンの仕事に携わりました。
サンデーに来て約1年で市原が編集長に就任したのですが、僕自身が毎週の編集会議中もスマホをずっと触っていたんですね。こっそり『パズドラ』を遊んでいたんですが……そんな姿を見られていたのか、ある日「お前、やれ」と、デジタルマンガを任されまして。
――(笑)。
大嶋 そこから紆余曲折はあったのですが、「サンデー」のデジタルの前線として出来上がったのがマンガアプリの「サンデーうぇぶり」です。うぇぶりに関わるなかでスマホアプリや電子書籍の仕掛け方は従来の紙の売り方から、考え方を相当変える必要があると気づけたのは良い経験でした。市原の次の編集長、と言う意味では、この各種の経験をしていたことがとても大きかったと思います。
「サンデー」は、歴史ある編集部ですし、生え抜きの作家さんや編集者が活躍することで文化が醸成されて来ました。市原をはじめとし、新入社員のころから「サンデー」のノウハウを叩き込まれた人間が編集長になることが多いので、生え抜きでない編集長は、過去にもいますが、ちょっと久しぶりになります。
――紙のマンガ雑誌の売上は減少傾向な一方、電子やライツの売上が非常に大きくなってきていることを踏まえての人事だという風に解釈しました。
大嶋 そうですね。おっしゃるとおり自分としては、ここ数年はデジタルやライツの実務面で市原を下支えする役割だったと思っています。あとは……僕は目の前の問題解決をしたり、既存の構造を見つめ直して効率化を推進するのがわりと性に合っていますので、これからも市原が体現してきた「サンデー」の精神を保ちつつ、より新人作家さんが登場できるように、ヒット作を創出し売り伸ばせるように、チームを強くしていくのが仕事だと考えています。
「サンデー」が成長する唯一の方法は、新しい魅力をたたえた作品がたくさん始まり、良い作品が際立っていくサイクルを作ることに尽きますから。