携帯電話の電磁波でポップコーンができるかどうか徹底検証してみた
携帯電話を4台、向かい合わせにしてその中央にポップコーンの元になる爆裂種のトウモロコシを置く。そして4台同時に着信させるとちょっとした電子レンジ状態になり、中央に置いてあるトウモロコシがはじけてポップコーンになる……というムービーがYouTubeで公開されています。
果たして本当にはじけるのか?一体どういう仕組みでこのようなことが可能なのか?実際に実験して確かめてみました。
徹底検証は以下から。
まず、以下のムービーが問題のものです。
YouTube - Pop corn with cell phones !
YouTube - WHO CAN EXPLAIN ?????
YouTube - Pop corn with cell phones : the French version
すべてbobtel08というユーザーがアップしており、ほかにもbenzin513というユーザーが同じムービーをアップしています。これだけでもかなりあやしいのですが、もしかすると実際にできるかもしれない……ということで、早速試してみましょう。
今回用意したのは電子レンジ用ポップコーン
原材料はとうもろこしと植物油脂がメイン
こんな袋の中に入ってます
中身はこんな感じ。固まっているのが油脂です。電子レンジによってこの油脂が溶けて熱せられ、ポップコーンになるという仕組み。
その中からYouTubeのムービーのようにいくつか取り出します。
さぁレッツトライ!って、……あれ?
もっと近づけて全力でやってみます!って、……あれれ?
ポップコーンになんてならないじゃないか!(激怒)
そもそも、どうやってポップコーンができるのか、その仕組みをおさらいしてみましょう。
(PDFファイル)ポップコーンの研究~トウモロコシの水蒸気爆発~
熊本県立熊本西高等学校の化学部による実験資料が非常に参考になります。これによると、
袋から取り出した直後のトウモロコシは約200℃で爆発するが、開封して時間がたてば湿気を帯びて爆発温度が徐々に下がる。
トウモロコシにはとても大きな圧力がかかっている。この値はトウモロコシの内部を空洞として計算したもので、実際にはもっと大きな値となる。また、トウモロコシ内では一部の水だけが水蒸気になり、その圧力で表皮の一番弱い部分を破裂し、100℃を超えたトウモロコシ内の水が一気に水蒸気となり爆発が起こっていると考えられる。
とのこと。これらは「ポップコーンの科学」という有名な本の中でも触れられているため、詳細を知りたい人は図書館などで借りてみて読んでみましょう。それらの資料によると、ポップコーンは正確には以下のような仕組みでできあがります。
1:通常のトウモロコシではダメ、ポップ種(爆裂種)という種類だけ。
2:はじける仕組みは中の水分が100度に達して水蒸気となり、その圧力が固い皮でおしこめられて気圧が上昇し、一気に噴出するのが原因。
3:内部の水分は100度で水蒸気となるが、爆裂するに足るだけの圧力に達するためには表皮を200度近くまで上昇させる必要がある。
4:通常のポップコーンではバターやサラダ油などを使うことで表皮の温度を上昇させている。これは単純にフライパンの上に並べるだけでは熱しても表皮が焦げて炭化するだけであり、爆裂する頃には炭になるケースが多いため。
5:そのため、極端な話、たき火に放り込んでも爆裂するが、「ポップコーン」としてあの真っ白な形状を維持するためには継続的に熱をかけて、中の水分を水蒸気にして圧力を内部からかけつつ、表皮が焦げないようにしなくてはならない(そのため、はじける直前には水蒸気が漏れるため、フライパンで作るとふたの内側に水滴がつく)
で、さらに今回のポイントとして携帯電話から出る電磁波のレベルというものがあります。ドコモのページの「医用電気機器を使っている方へ」という項目を見てみましょう。
携帯電話のマナー | お知らせ | NTTドコモ
ドコモのFOMAの出力は最大0.25ワット、movaは最大0.8ワット、デジタルカーホンの出力は最大2.0ワットです。
で、先ほどの電子レンジ用ポップコーンの説明を見てみるとこうなっています。500ワットだと2分~3分必要とのこと。
つまり、電子レンジの500ワットレベルを出そうと思ったら、携帯電話がFOMAだと2000台、movaだと625台、デジタルカーホン250台、必要ということになります。密集することを考えれば単純な足し算では考えられないので、実際にはもっと必要なのではないかと。計算方法がおかしい気もしますが、少なくとも携帯電話から出る電磁波レベルではちょっと無理。
※2008/06/09 21:21にリンクと引用を追記
以下のページにて実際に計算しています。
:: day by day | センセーショナルであれば疑似科学でも構わない、のでしょうか。 ::
電磁波の出力は周波数の2乗×出力に比例しますから、電子レンジと携帯電話を比較すると、
電子レンジ:2.45×2.45×500 ≒ 3000 (3001.25)
携帯電話:2.0×2.0×0.8 = 3.2
また、電磁波は距離の2乗に比例して減衰しますが、この動画では一般的な電子レンジよりもやや近いので、距離が半分になっていると見ましょう。
そうすると、電磁波の影響は、
3000: 3.2×4 = 234.375:1
となり、携帯電話による加熱は電子レンジの200分の1程度であることが予測されます。
また、一体いつ電波が出ているのか?という点についても以下のように書いてあります。
(注)携帯電話の電源を入れた状態では通話をしていなくても自動的に電波を出す場合があります。
つまり、通話していなくても出るけど、通話していれば確実に出ているよ、と。着信しているのであれば確実にマックスレベルまで電磁波が出ている状態になります。
さて、これらのことを前提として実際に実験してみましょう。電子レンジ用ポップコーンの説明によると、500ワットだと3分間でできあがるらしい。
電子レンジ用ポップコーンを一粒、500ワットで6分間、電子レンジでチン。まったくはじけません。尺の都合上、最後の1分間程だけ。一緒に水をチンしているのは安全上の都合です。
今度は耐熱皿の上に置いてみます。油脂つき。
電子レンジ用ポップコーンを一粒、ちゃんと油が周囲に付いた状態、500ワットで6分間(3分間+3分間)、電子レンジでチン。まったくはじけません。
温度は73.4度でした。一粒についているレベルの油脂だけではやはり難しい。
最後に、サランラップでふたをしてみます。先ほどと同じく油脂つき。
電子レンジ用ポップコーンを一粒、ちゃんと油が周囲に付いた状態、サランラップでふたをして、500ワットで3分間、電子レンジでチン。やはりまったくはじけません。
どう見ても無理、単体ではそもそも電子レンジでも無理。
つまり、電子レンジであろうがフライパンであろうがきれいにポップコーン化させるには「相当量の油」と「継続的な高熱」が必要というわけです。電子レンジ用ポップコーンの場合は密閉状態の袋の中で溶けた油脂に対して熱を加えることによって、トウモロコシがひたひたになる感じで浸るため、継続的な高熱が実現でき、短時間でポップコーンになるというわけ。
結論:電子レンジであっても単体のトウモロコシを短時間でポップコーン化することは難しすぎる。また、携帯電話4台程度の電磁波ではポップコーンはできない。それどころか、電子レンジより短い時間では絶対に不可能。
ほかにも「こんなことできるわけがねーよ」という検証動画や計算がYouTubeなどに上がっています。
YouTube - Cell Phone & Popcorn Is FAKE (by pandora808)
livedoor ニュース - 【トレビアン動画】携帯電話でポップコーンが作れる? 実際に作れるか実験してみた!!
The cell phone popcorn vid is fake!!! - GameTrailers.com Forums
なお、Wikipediaの「ポップコーン」の項目にあるこの履歴ページによると、
また、振動を極力抑えて加熱することで、爆ぜる直前の状態で短時間留めることができ、その後、小さな衝撃や振動を加えることで、爆ぜさせることができる。携帯電話数台の傍にトウモロコシを置き、それらの携帯電話に着信させることでポップコーンができる様子が動画サイトにアップロードされ、世界中で話題になったことは記憶に新しいが、これもこの現象(バイブレーターの振動)を利用したジョークである。
とあり、実際にこれも試しましたが、「爆ぜる直前の状態」でとどめることはできませんでした、無理です。
2008/06/09 21:08追記
読者からの指摘によると、ポップコーンの入っていた袋の下面にある「灰色のシート」が電子レンジのマイクロ波の作用で高熱を発する仕組みとなっており、電子レンジ用冷凍ピザなどの一部にも使われているとのこと。このシートが高熱を発するため、電子レンジでチンするだけでポップコーンになるそうです。確かに今回使用したポップコーンのページにある「ポップコーンFAQ」にもそれらしいことが書いてあります。
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