一体オンラインで何曲売れば、アーティストは生活していくことができるのか?を表す図

レコードやCDなどのメディアではなく、デジタル化された音楽データのみを販売する仕組みはもはや当たり前のものになった感があります。
生産や流通などの諸費用を削減しアルバムの楽曲を単品販売するなどして低価格化、またメジャーレーベルに所属していないアーティストでもローコストに作品を発表できるというこのシステムは私達消費者にとって計り知れないメリットがありますが、楽曲を提供するアーティストの側から見るとどのようになっているのでしょうか。
詳細は以下。
The Paradise That Should Have Been >> The Cynical Musician
How Much Do Music Artists Earn Online?
この図はアメリカの最低賃金1160ドル(約10万8千円)を得るのに、毎月どれくらいの量を販売する必要があるのかを丸の大きさで表したもの。右側のグラフは、グレーがレーベル、ピンクはアーティストの得る利益を表します。
また、これは「ソロ活動の歌手」の場合の試算なので、例えば4人組のバンドだとこの4倍の量を販売する必要があったり、曲や歌詞を自分で書くシンガーソングライターだとその分の印税も支払われるため少ない量で済むなど誤差を含んだものとなっています。
自費出版のアルバムCDの場合、1枚9ドル99セント(約930円)で販売すると1枚あたりの利益は8ドルとなり、143枚で最低賃金を達成。

自費出版のCDを専門とりあつかう業者として出発し、現在はダウンロード販売も行うcdbabyを通じて自分のCDを販売すると、1枚あたり7ドル50セント(約700円)の収益となり155枚で目標達成となります。レーベルの取り分を表すグレーのグラフは見えませんが、1枚販売するごとにcdbabyにシステム利用料として決まった額が支払われているため実際には利益配分が発生しています。

レーベルに所属し利益配分を2:1とする場合、9ドル99セントの売価のうち2ドルがレーベルのもの、1ドルがアーティストのものとなり、目標達成に必要な枚数は1161枚となります。

ナップスター(iTunes経由)でアルバムをダウンロード販売する場合、売価を9ドル99セントとすると利益のうち6ドル29セントがレーベルに配分され、94セントがアーティストの取り分となり、1229回のダウンロードが必要となります。

cdbabyから単曲ダウンロード販売した場合、1曲99セント(約92円)とすると、アーティストの取り分は74セント。1562回のダウンロードで目標達成となります。1枚のアルバムに平均12曲収録されていると考えるとこれは約130枚分に相当します。

cdbabyからiTunes経由で買う場合はアーティストの取り分は57セントで2044回のダウンロードで目標達成。12曲収録のアルバム約170枚分に相当します。

レーベルに所属し利益配分を20:3とした場合は9ドル99セントの売価のうち2ドルがレーベルの取り分、30セントがアーティストのものとなり、3871枚売ると目標をクリア。

これがアマゾン(iTunes経由)の単曲販売だと、1曲99セントでアマゾンの取り分が63セント、アーティストは9セントとなり12399曲ダウンロードで目標達成。12曲入りアルバムで1033枚分。

ちなみにデータを手元に保存させないストリーミング販売だと数字はぐっと膨れあがります。1999年にサービスを開始したRhapsodyでは84万9千817回で最低賃金達成。

ユーザーが音楽の好みを登録しておくと、それに応じた曲をストリーミング配信してくれるlast.fmでは、154万6千667回視聴されると最低賃金達成。

ソニー・ミュージックエンタテインメントなどと契約しているP2P型ストリーミングサービスのSpotifyでは454万9千20回の再生で目標達成となります。

これがその他の販売方法も含めた全体図。

また、元となったデータはこちらから見ることができます。
Musician Digital Royalties
もちろんオンライン販売による消費者の購買意欲の向上や、いわゆる「ロングテール」効果による超長期間の売上げ発生も考えられます。これは確かに販売サイトやレーベルにとってはメリットです。しかしアーティストの視点からみてこれが本当に負担を軽減する結果を生むのか、誰も答えることはできないでしょう。
「オンラインで物を売ると中間搾取が無くなり作り手が幸せになる」という論は、音楽に限らず映画やアニメ、書籍などデジタル化できるあらゆる分野で見られます。しかし本当に作り手が幸せになるのか、私達は一度疑ってかかる必要があるのではないでしょうか。
12:41 2010/04/23 他のデータも追記しました
・関連記事
「法律上問題ない」と断言する秋葉原のマジコン販売事情を徹底レポート、B-CASカードの販売も - GIGAZINE
今度は「マジコンビル」が登場、巨大な看板を掲げて堂々と営業開始へ - GIGAZINE
ついに「ファイル共有ソフト監視システム」によって全国初の逮捕者が出る - GIGAZINE
海賊版ソフトを再生できるようにゲーム機本体の改造を請け負っていた大学生が逮捕される - GIGAZINE
違法ダウンロードユーザーがインターネットから強制切断へ、政府が海賊版対策を強化 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in ネットサービス, Posted by darkhorse_log
You can read the machine translated English article How many songs can an artist have to liv….