SF小説が現実のものに、NASAなどの研究グループがヒ素を用いて増殖する生命体を発見、宇宙生物学の大きな一歩に

By Martin Ujlaki

現地時間12月2日、アメリカ航空宇宙局NASAが、11月末に発表した「宇宙生物学上の発見」に関する記者会見を行いました。

「NASAが記者会見を行う」という発表があってからすぐに内容が何なのかという予想が始まり、中には「宇宙人(地球外生命体)の発見ではないか？」「土星の月に生命の痕跡が？」などと期待する声もありましたが、発表内容は事前にある程度情報が流れたとおり、砒素(ヒ素)を用いて増殖するこれまでの生物とは全く異質の生物についてのものでした。

詳細は以下から。
NASA - NASA TV

NASAやアメリカ地質研究所などの調査によると、生命維持に不可欠だと見られていたリンがない環境でも猛毒である砒素を用いて増殖するバクテリアを発見したとのこと。これは従来の地球の生物とは全く異質な生命体であり、これまでの生物の常識を書き換える成果だと見られています。

この会見の様子はツブゾロッタフィルムにて日本語同時通訳が行われ、開始直後は600名前後でしたが、人がどんどん増え9000人以上が視聴しました。

ニコニコ生放送でも「地球外生命体発見か？？NASA本部から生中継！」と題した番組が放送され、4時からの会見にあわせて3時45分からプレミアム会員の入場が行われましたが、3時55分の一般会員入場を待たず、プレミアム会員すらも会場に入りきれないという盛況っぷりでした。ちなみに、ツブゾロッタフィルムの中の人が衝撃を受けていましたが、ニコニコ生放送でも同時通訳放送が行われていました。

ちなみに、この内容を一番最初に報じたと見られるのはオランダの「Labyrint」。
Labyrint , Archive >> ‘Zoeken naar leven’

同じくオランダの「NOS Nieuws」がこのニュースを広めました。
NOS Nieuws - Nieuw soort leven ontdekt

NASAの公式発表は現地時間12月2日11時に行われましたが、それよりも先に上記サイトをソースにGIZMODOが記事を書いたり、各報道機関が先行して記事を公開しました。

NASA Finds New Life (Updated with Pictures) - GIZMODO

'Life as we don't know it' discovery could prove existence of aliens - Telegraph

Nasa reveals bacteria that can live on arsenic instead of phosphorus | Science | The Guardian

BBC News - Arsenic-loving bacteria may help in hunt for alien life

また、日本経済新聞は12月3日朝刊でこのニュースを報じているようです。

Yfrog Photo : yfrog.com/f1p8k0j - Shared by shin_1

4時には日経新聞のWeb刊にも掲載されました。
異質な生命体発見、ＮＡＳＡなど　　：日本経済新聞

サイエンスファンであるライターの柏井勇魚さんは、記者会見に参加したメンバーの顔ぶれやニュースリリースの文言から「酸素や水を使わず硫化水素や鉄、ヒ素などで光合成する微生物に関する新しい発見があった。これは極限環境微生物を効率よく検出する方法に使える。火星で生命の兆候が見つかるかもしれない」という内容だと予想を立てていました。もちろんサイエンスファンらしく「ほんとに『地球外生命体を発見！』みたいなニュースだったらもっと楽しいんですが…」という期待ものぞかせていました。

なお、今回取り上げられた、モノ湖に住み砒素を利用して光合成するバクテリアについての情報は2008年にScience誌に掲載されたようで、8月14日にWired.comに取り上げられています(2008年8月20日、WIRED VISIONにも掲載)。

ちなみに、この会見をTwitterで待ち続けた人も少なくなく、140文字という制限の中でNASA大喜利状態になっていました。会見が日本時間で午前4時と遅かったこともあり「おやすみNASAい」と寝てしまった人も多かったようですが、ギリギリまでネタを練る人も。その様子については次の記事でまとめています。

NASAの記者会見「超期待→開始→はい、解散～！終了！」までのTwitterのみんなの反応まとめ