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取材

知られざる波乱万丈な「週刊トロ・ステーション」の歴史・売上比率・制作体制、そしてPS Vita版も登場へ


PS3の発売に合わせて開始されたニュース配信コンテンツ「トロ・ステーション」。トロとクロが新作ゲーム紹介や雑学ネタ、グルメネタなどの幅広い面白ネタをニュースの形で紹介してくれるサービスで、配信回数はギネス認定された世界記録となる1200回以上を達成。無料で楽しめることもあって、根強いファンを獲得できています。

そんなトロ・ステーションですが、2011年9月6日(火)より9月8日(木)までパシフィコ横浜にて開催されている、日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2011(CEDEC2011)」において、「『週刊トロ・ステーション』のつくりかた ~1200回配信を可能にする制作体制とビジネスモデル~」というタイトルで講演が行われ、その舞台裏が詳細に紹介されたため、全内容とスライドを合わせてお届けします。

◆はじめに

はじめまして。ソニー・コンピュータエンタテインメント、Japan studioの伴でございます。本日は「『週刊トロ・ステーション』のつくりかた 1200回配信を可能にする制作体制とビジネスモデル」ということで、この「週刊トロ・ステーション」というコンテンツを紹介させていただきます。


まず最初に、このセッションに関する質問やご意見等がございましたら、Twitterアカウントの@wtoro_cedec2011でお待ちしておりますので、どうぞご気軽に質問をお願いいたします。9月30日まで質問を受け付けておりまして、内容については10月配信の「週刊トロ・ステーション」で一部配信させていただくことがございますのでよろしくお願いいたします。


◆「週刊トロ・ステーション」の歩み

まず、「週刊トロ・ステーション」とは何なんでしょうかということですけれど、一言で言うと「ニュース配信コンテンツ」というものになります。純粋なゲームではなくて、PlayStation Networkから配信されるニュースコンテンツです。


まずは「週刊トロ・ステーション」のプロモーションビデオをご覧ください。

週刊トロ・ステーションプロモーションビデオ - YouTube


はい、この「週刊トロ・ステーション」というものをテーマに本日は講演をさせていただきます。全部で5つありまして、「週刊トロ・ステーション」の発足の経緯、制作風景、制作体制、各種コラボレーションなどについて紹介させていただきます。


まずですね、「週刊トロ・ステーション」というコンテンツがコンシューマ市場において前例のないようなサービスなのですけれど、これがどのような経緯で発足していったかというのをお話ししていきます。


全ての始まりは今から5年前の2006年8月、PS3がロンチする前の時点なんですけれど、この時にですね、会社から「PS3のロンチに合わせてネットワークをメインに使ったコンテンツを作ってほしい」という依頼がございまして、こちらに応える形で何かを考えようというものがスタートしました。


この時にはまだ何をしていこうかということは決まっていなかったのですけれど、まず要件としましては「PS3を毎日起動してもらう」ことと「ユーザーに気軽にアイテム課金をしてもらう」こと、そして「新機能をいち早く取り入れたもの」ということです。


これに対して出た答えが「毎日配信するニュースコンテンツ」「気軽にアイテム課金をしてもらうこと」で10円、20円の低額アイテムを多数リリースしていこうということと、PS3もロンチしたばかりでこれから機能的にもどんどん盛り上がっていくところですので、それに併せて、定期的なアップデートを実施していくことにしました。コンセプトは「実験と体験」です。PS3の速度をいち早く取り入れて、ユーザーにPS3の可能性を体験してもらうことをこのコンテンツの目標としておりました。


そしてリリースしたのが「まいにちいっしょ」というコンテンツです。2006年11月11日に配信を開始しました。最初は最小構成リリースし、その後毎月のアップデートと、毎月数十個のお部屋を飾るタンスなどのアイテムをリリースして、これを販売代金としていました。


次のミッションはPSPへの採用です。こちらは2008年3月に「今年の秋にPSP版のPlayStation Storeがオープンするので、それに合わせて『トロ・ステーション』を展開してほしい」という指令が来ました。


で、この時点から制作を開始して、その時に掲げたミッションが2つです。新しくオープンするPSPのトロステをやっていくことと、PlayStation Storeでのアイテム販売を実施するというものでした。


1つ目の方は無事達成しまして、2つ目の方はPS3の「まいにちいっしょ」とは違う形の「庭いじり」という形で、庭に花を添えてガーデニングゲームということを実施しております。


そしてリリースしたのが「まいにちいっしょポータブル」というものです。まあ、「トロ・ステーション」はPS3版と同じものが同じタイミングで行って、「ポータブル」に関しては遊び方がポータブルに特化したというものです。


こちらが「まいにちいっしょ」と「まいにちいっしょポータブル」の概要計画です。2009年3月の時点で2年半ぐらいの結果なんですけれど、アカウント数が大体63万、アップデート回数が30回以上、2009年3月の時点で2年半ぐらいの結果なんですけれど、総アイテム数が1500個を超えて、販売数で言ったら100万個以上の売り上げを達成しております。この時点で毎日毎日配信してきた「トロ・ステーション」は850回という記録を立てております。


◆訪れた転機、「まいにちいっしょ」から「週刊トロ・ステーションに」

そしてこのプロジェクトに転機が訪れたのが2009年の3月の時点で、「まいにちいっしょ」の使命は十分に達成したと。まず「実験と体験」ということで毎月毎月機能アップデートしてユーザーにも「まいにちいっしょ」というものを認知してもらって、優秀な機能であったりとかをたくさん入れたことによって使命は十分に果たせたと。


なので次は「第2ステージに移行しなさい」というような話がありました。第2ステージとは何かということなんですけれど、まず「まいにちいっしょ」は「ネットワークの啓蒙」というところが大きな目的にありました。これはユーザーにコンソールゲーム機でネットワークを使った遊びというものをいち早く体験してもらうために、そういうコンテンツを取り扱っていきましょうと。


それから第2ステージと呼ばれる新「まいにちいっしょ」で、こちらで求められたのがネットワークの成功です。実際に何かというと、収益を上げて「コンシューマゲームでも十分ネットワークゲームで成功しますよ」ということをファーストパーティーとしていち早くやっていきましょうというところでスタートしております。


これは実際は「まいにちいっしょ」をどういう風に変えていこうかというところで議論されたんですけれど、まずは生まれ変わるために行ったのはユーザーの声を聞くことでした。行動ログの分析であったりとかユーザーの方からいろんなアンケートなどで評判を聞いたりして得たものですが、「機能が多すぎて何をしていいのか分からない」と。

毎月毎月アップデートをした結果ですね、実験重視が強くなってしまい、いろんな機能がついたおかげでたくさんできることがあっても「どう遊べばいいのかよく分からない」という意見がございました。「まいにちいっしょ」の宣伝をしていても、「これはどこで見られんの?」「どれがメインですか?」っていろいろ分からないところが多かった。なのでまずは戦略を見直そうというところから始まりました。


こちらが「まいにちいっしょ」の戦略です。毎日配信する、というのとアイテム課金、ライトユーザーからネットワークユーザーまで、ネットワークゲームの初心者を対象にしてライトからコアネタまで幅広くカバーしていきましょうということです。こちらを徹底的に分かりやすくするというところから言います。


こちらが「新・まいにちいっしょ」の戦略です。毎日配信をやめて、アイテム課金をやめて、顧客も重点顧客を対象にして「得意なこと、評価されていることに特化しよう」と。


一言でまとめてしまうと「最小の労力で最大の効果が出る仕組みを作って、それを最大の努力で運営しましょう」というものです。「まいにちいっしょ」の頃は毎月毎月アイテムを50個、60個作って配信したり、新機能追加ということで「一回出したら終わり」ということを続けていたのですけれど、今回そうではなくて「一度作ったら仕組みとして機能するものをベースとして作ろう。そしてこれまで作ってきたコンテンツを作るためのコストを運営に向けよう」と。


まず毎日配信をやめるというところなんですけれど、これは「トロ・ステーション」の配信ピークグラフというものなのですが、これが土日のグラフになります。「まいにちいっしょ」の時は毎日「トロ・ステーション」を見てくれている方もたくさんいたんですけれど、統計を取ってみると「土日にまとめて一週間分見る」というユーザーが非常に多かったです。


であれば、あえて「まいにちいっしょ」を毎日配信していたというアイデンティティを崩して、アクセスの集中する週末に配信をすることでユーザーのプレイスタイルに合いつつ、かつ配信コストの効率化ということもできるのではないかと思いました。ここが一番チーム内でもめたところなんですけれど、本当に「『まいにちいっしょ』を毎日やらなくていいのか」という点で非常に議論になりましたが、やはり「ユーザーがどういうことを望んでいるのか」ということを行動から分析した結果、こういう解決になっています。

そしてアイテム課金をやめることにしました。毎月数十個のアイテムを展開してきて、3年半で1500個を超えるアイテムが出てきたんですけれど、品ぞろえ豊富を通り越して「欲しいものがどこにあるのか分からない、そして同じ機能のものが複数ある」ということになったので、ユーザーの方にもこういうのは分かりにくいだろうということで思い切って数を減らして、3種類というふうに減らしています。


次に顧客を変えようということで、今出ている「まいにちいっしょ」と「まいにちいっしょポータブル」のグラフなんですけれど、左下が「まいにちいっしょ」からいらしていたターゲットユーザーです。短時間運用でゲームやネットワークのリテラシーが高くないユーザーを中心に展開していこうとしていました。ですが実際にフタを開けてみると、ネットワークのリテラシーの高いユーザーが基本よく使っていて、そこの中で長時間利用される方がアイテムを買っていて、短時間の方はちょっと遊んだら終わりという行動グラフになっていました。


であるならば、新しいものはそのユーザーに合わせたものに作り替えましょうというところで、こちらヘビーユーザーに関しては有料会員になっても満足度が得られるもの、無料会員としては少し遊んで終わってしまうことに満足するということで迎え撃っていこうということになります。


次に「得意とされていることに特化していこう」ということになります。こちらはですね、「まいにちいっしょ」の中のコンテンツの中のユーザー満足度というか何で遊んでいるかということなんですけれど、圧倒的に「トロ・ステーション」が高かったんですね。

他にもですね、いろいろミニゲームやキャラの模様替えであったりとか、ポイントショップで買ったりとか、友達とコミュニケーションするというのもあったんですけれど、実際に開けてみると90%以上が「まいにちいっしょ」を起動する理由が「トロ・ステーション」であると。であれば当然「トロ・ステーション」に特化するべきでしょうと。そこでメインコンテンツを「トロ・ステーション」にしていこうということになりました。


次に「トロ・ステーション」って扱っていたネタがたくさんあるのですが、実際に何がウケていたのかというと、「トロ・ステーション」の扱っていたジャンルでは1位がゲームですね。2位がPlayStation。PS3の機能を追加したというものだったり、新しいハードの情報などを紹介していました。そして次が「まいにちいっしょ」というコンテンツ自体のアップデートへの注目度も非常に高かったと。そのほかクイズだとかペットのことよりは、やはり分かりやすくゲームというところが非常に高かったので、こちらのところを中心的に「トロ・ステーション」をやっていこうと。


実際に「トロ・ステーション」がどのようにゲームを扱っていたかというと、「トロ・ステーション」は数々のゲームとコラボレーションするような形で、トロがパーソナリティになってキャラクタ同士で会話をしあったりしながら独自のゲーム紹介の切り口を持って「トロ・ステーション」で展開しておりました。


この時点で既に100タイトルの紹介実績があったので、これを伸ばしていくのが正解だと思って確信を持って進めました。次にブランドの変更を考えました。この「まいにちいっしょ」の中での「トロ・ステーション」というものなんですけれど、我々は「まいにちいっしょ」の中で「トロ・ステーション」を配信してきまして、それを宣伝していました。

しかしユーザーの方へのアンケートで評判を見ると「トロステ面白いよね」「トロステどこで見てるの?」という声が多く、ユーザーの方からは「まいにちいっしょ」より「トロ・ステーション」という単語の方が非常に知名度が高かったため、それをメインコンテンツとして据えるのであれば、名前を変えてしまおうということで、名前を変えました。そして生まれたのが「週刊トロ・ステーション」というサービスです。


これがですね、東京ゲームショウで流した「週刊トロ・ステーション」が始まりますよ、という時の映像なんです(会場で再生開始・終了)。


このようにして「週刊トロ・ステーション」に切り替わりますというアナウンスをユーザーにさせていただいたのですが、毎日が週刊になるのではこれはボリュームダウンではないかと言われたのですが、「新番組として、新しくリニューアルします」と。深夜番組からゴールデンに行きますよというような体裁で伝えることによってユーザーの方には好意的に受け止めていただいたんじゃないかと思っています。


◆月額課金システムについて

この「週刊トロ・ステーション」なんですけれど、最大の違いは月額課金制度のシステムです。今まで1個10円、20円でのアイテムでの収入だったんですけれど、そうではなくて、30日で800円のプラチニャ会員というものを作るということで、前回のサービスとのとの差別化を計りました。ポイントは3つありまして、「見た目で差をつける」「メインコンテンツに明確な優越性をつける」「より便利にする」というものです。


この800円の値段設定自体もユーザーの方からは「高いんじゃなかろうか」「500円くらいがいいんじゃなかろうか」「だませないよ」とかいろいろ言われたんですが、これは「まいにちいっしょ」のコアユーザーの平均課金単価より安くなっているので、コアユーザーの方には非常に好意的に受け入れていただいたかと思っています。

こちらが内容です。これから詳しく説明します。


「まいにちいっしょ」時代はちゃんとした家に住んでいたトロなんですけれど、「まいにちいっしょ」が終わる時のエンディングで家を追い出されてしまって、家がなくなってしまいました。この状態から「週刊トロ・ステーション」がスタートします。これがプラチニャ会員になると「トロに家賃を払ってあげる」という設定で家に住む、そして広い庭もできていろんな機能も追加されるというところで有料会員に対して非常に優越感のあるものを提供しております。


もうひとつのポイントとしては「トロ・ステーション」の先行配信があります。通常「トロ・ステーション」は24時に配信するんですけれども、プラチニャ会員は18時に見ることができます。はじめは1日、2日早くしようかと考えていたんですけれども、「このコンテンツはニュースコンテンツなので、ニュース性が大事だ」ということで、1日、2日空いてしまうと見る頃には話題が終わってしまうのだろうというのがありましたので、「ちょっと優越感を得られます」くらいの6時間というゲームバランスにしております。

もうひとつが「バックナンバー閲覧」です。「まいにちいっしょ」の頃は全ユーザーが14日間分の「トロ・ステーション」を見ることができたのですが、「週刊トロ・ステーション」になってからは無料会員はその1週間の「トロ・ステーション」しか見ることしかできません。これがプラチニャ会員になるとバックナンバーをさかのぼって見ることができます。これは90号以上出ていますので非常にボリュームのあるコンテンツになっています。


最後に「会員限定プレゼント」というものがありまして、「まいにちいっしょ」の頃から「トロ・ステーション」の中で部屋に飾るポスターとかサインといったプレゼントアイテムを発送していたのですが、プラチニャ会員しかもらえないプロジェクトを作ることによって優越感というものを作っております。さらにプラチニャ会員を続けることによりまして、少しずつものが変わっていったり、完成に近づいていったりしていく「会員継続特典」というものを用意することで、継続性を上げています。


他に「週刊トロ・ステーション」を数字の側面からご紹介させていただきます。


こちらが「週刊トロ・ステーション」のPS3版とPSP版を合わせたダウンロードの数になります。近日累計100万ダウンロードを達成する予定でございます。ポイントなのは「まいにちいっしょ」の頃は3年かかって63万ダウンロードだったのですけれど、「週刊トロ・ステーション」は切り替えから全部がスタートしてまだ1年の段階で、「まいにちいっしょの」総アカウント数を越えるというのを達成しております。こちらもですね、切り替えてきた内容をユーザーの方に受け入れていただいたのでできたのかなと思います。


トロステの配信回数は2011年8月末現在で数えてみると1205回配信しておりました。さらに「トロ・ステーション」は「まいにちいっしょ」の頃は1日1回だったんですけれど、週刊になって1週間に1ネタではなくて数ネタを配信するものなので、それらを全部合計すると制作した本数は1676本となります。


この記録を先日ギネスの世界記録として認定していただいて、「トロ・ステーション」が続くたびに「コンソールゲーム機で最も多く更新をしたニュースサービス」の記録が更新されていきます。


こちらが「週刊トロ・ステーション」の販売アイテムの一覧です。最初は30日だけでしたが、ユーザーさんのプレイスタイルに合わせて60日や90日といった長期間分を買うことによってもっと金額が下がったり。プランが追加されたりします。もう1つがガチャガチャで使ったメダルですね。こちらも10枚100円から60枚500円、150枚1200円とラインナップをそろえていて、一番下はゲーム内容とは直接関係ないのですが、カスタムテーマを3種類販売しております。


こちらが売上比率になります。70%強が月額課金の売り上げになっています。約4分の1がメダル課金ですね。「まいにちいっしょ」の頃は毎月50個から60個のアイテムを制作して売って、それからユーザーの方の反応を見て「このアイテムはウケた、ウケなかった」ということで次の戦略を立てていたんですけれども、その結果非常に「売れた月」「売れなかった月」の変動が激しかったという点がありました。それが月額課金となったおかげで、会員数が安定していれば毎月安定した金額が収益として入ってきます。


さらにここにメダルというものを加えることによって、ガチャガチャやキャンペーンを展開して、メダルを使う機会を増やすことによって売り上げをさらに伸ばすことができるということで、「週刊トロ・ステーション」に変えることによって収益の安定性が増しています。


メダル課金の使い道ですけれども、こちらのガチャガチャになっております。各ライセンシーの方々にご協力をいただいていろんなコンテンツを取りそろえておりまして、今は計14タイトルをラインナップとしてそろえております。


100円相当ということでメダルを10枚使って1回ガチャガチャを回すというスタイルです。こちらに書いてあるタイトルはライセンシーの方々にいただいたものになります。どのIP(著作物)もユーザーの方々に好評だったのですけれど、一番売れたのがこの「初音ミク -Project DIVA-」ですね。こちらがぶっちぎりです。そしてガチャガチャから出てくるのはトロの部屋や庭に飾るフィギュアでして、その部屋で「トロ・ステーション」をするということになります。


◆「トロ・ステーション」の舞台裏、制作体制は?

では、ここからは「トロ・ステーション」はどのような制作体制で配信されているのかというのを紹介させていただきます。


こちらはざっくりと図にしたものなんですけれど、ゲームの本体とトロステ自体の制作は株式会社BeXideの方に作っていただいております。そこから作られたものが弊社の運営チーム、QA(品質管理)チーム、オンラインチームを通って「週刊トロ・ステーション」としてユーザーの方に配信されております。


実際に作っていただいているのは、こちらにも来ていただいている株式会社BeXideの方で、南治社長もいらっしゃいます。このBeXideさんは「どこでもいっしょ」シリーズを弊社と一緒に10年以上作ってこられまして「トロ・ステーション」の制作も担当していただいて、今で言えばオリジナルキャラクターデザインだったり、iPhoneやiPadのガジェットも制作されている会社となります。スタッフ募集されているそうなので、皆様も是非ご援助をお願いします。


そしてこれが「トロ・ステーション」を作っているスタッフ構成ですが、「週刊トロ・ステーション」のシステムを作っているのではなく、毎週配信する「トロ・ステーション」の制作スタッフの構成になります。時期によって変動はしますが、これくらいです。全体を統括するプロジェクトマネージャの元、このような体制を敷いていまして、ポイントは「ゲーム制作者ではないライター業を専門としているスタッフが制作に参加している」というものです。


専業ライターの中にはゲーム雑誌のライターであったり、テレビ・ラジオの放送作家であったり、広いジャンルのライターの方に参加していただいております。「TVチャンピオン」で活躍されていた方もいらっしゃったりして、非常にゲーム側ではないニッチなシナリオを書ける方を多数取りそろえております。「週刊トロ・ステーション」の中の雑学コーナーというものが非常に好評を博していますね。

デザイナーの方々はプレゼントアイテムだったり、トロが頭につけているアイテムやプレゼントアイテムといった「トロ・ステーション」用の小道具を作っていただいています。


さらにプログラマーについては、システムはできているのですけれども、やはり「トロ・ステーション」で新しいことをしていくとバグが出てくるので、常時1名付くことによってバグの対応をしております。

次に「トロ・ステーション」の番組を決めるために行っているシステムがありまして、こちらは「トロステ編成会議」システムと呼んでおります。1ヶ月後の番組表を一度に決める会議です。配信月の1ヶ月前に開催をして、ここに集まるソニー・コンピュータエンタテインメントの人間やBeXideさん、専門ライターの方がネタを持ち寄って、実際に「この月のこの週は何を配信しようか」という番組を決めます。


バランスが偏ることなくアサインしようということになりますが、たまに趣味が入ったりするのがあるのがPlayStationならではなのですが、そこは毎月バランスを見ながらやっております。実際にこう画面表記を見て管理しているんですけれど、このような形になっています。実際にですね、PS3版とPSP版を作っているんですけれども、まずは取材をしてPS3版を作ります。PS3版を作ってあらかた構成もして、終わったものをPSP版にコンバートするという作業をしております。


こちらが1週間分の「トロ・ステーション」の構成になります。「トロ・ステーション」では1週間に1ネタではなくて、このような大枠と小枠という2つのカテゴリに分かれております。大枠と呼ばれるのはその週のメインコンテンツです。

大枠には主に2つあってゲーム系とあと雑学の大枠になります。その他に小枠と呼ばれるものがあって、大枠からこぼれてしまったものだったり、次回予告であったり、ユーザーの方へのアンケート調査であったり、プラチニャ会員専用で見られる「トロ・ステーション」などがあり、まとめて1週間分ということで配信をしています。


実際に制作環境のアサインの仕方なんですけれども、毎週毎週ネタが変わるのでその時に適した方をアサインしています。ゲーム系はゲームクリエイターの方がシナリオを書くということで、BeXideさんのプランナーの方が書いております。ポイントとしては、必ず発売前のゲームということにして、ライセンシーの方々からサンプルゲームをお借りし、実際にプレイした上で「開発者だからこそわかる視点」というものを紹介することにしております。


その次に雑学系の大枠に関しては専業のライターの方に書いていただいています。こちらはネタを持ってくる時点で、その方の人脈やフィールドワークを活かしたもので進めていて、結構マニアックなところから発掘したものなどを取材したりすることで、いろいろなジャンルから取りそろえております。

「ゲーム紹介に定評のあるトロステ」と打たせていただいたんですけれど、よく「トロ・ステーション」はたまに暴走することもあったりするのですけれども、ゲーム紹介をした時は「トロステを見てそのゲームを買いたくなった」とか「ノーチェックだったものが欲しくなった」という感想をいただいたりします。我々はあまり意識はしていなかったのですが、考えてみると「開発者だから分かる視点」で紹介していたというのがあるのではないかと思います。


ゲームクリエイターがゲームを紹介しているのはなぜかというと、「作り手のコダワリ」がダイレクトに理解できるということなのではないかと思います。雑誌の媒体の方々はその雑誌に記事を紹介しますが、ゲームクリエイターの方は実際にものを作っている方々ですので、例えば「ここはものすごい力を入れている」とか「ここはこだわっているんだな」というのが基本的に分かります。

そこを認識してやっていくと、苦労してる点に非常に共感できるので、「ユーザーさんが常に見ている雑誌との差別化」が新鮮に映るのではないかなと感じております。反面こちらに関してはマニアック過ぎてしまう時もあって、ユーザーの方の反応を見ながら日々対応する、というところです。

こちらが「トロ・ステーション」の制作スケジュールをまとめたものです。5週間前に取材を開始します。取材を開始して現地に行き、インタビューして写真を撮って、素材がそろうのが4週間前。そこから「トロ・ステーション」の制作を開始します。2週間かけて第一稿ができます。


第一稿ができた時点でデバッグチームの方に「トロ・ステーション」がちゃんとプログラムとして問題がないかだったり、後はテキストに間違いがないかだったり、協力いただいた共演者の方に校正をして戻してもらったり……ということで1週間。配信1週間前にはデバッグ完了して配信準備が整っています。それから1週間は何かのために置いておいて、配信日にユーザーに届くということになります。

校正の仕組みですが、ここにも特徴がございまして、一番最初の時点でWEB動画になっています。「トロ・ステーション」にご協力いただいた方に「まずシナリオの段階で見せてください」と言われる場合が多いのですけれども、実際には「トロ・ステーション」のシナリオを書く時はテキストから作っているわけではなくて、スクリプトの段階でもうシナリオを組み込み始めておりまして、一度シナリオができあがった時点で、紙ではなくてトロとクロが動いている状態になっています。こちらを録画してWEB動画という形で、テキストも付けて権利者の方に「動画で見てください」と言うわけなんです。それで確認してもらっています。


ここのいいところはですね、表現とシナリオを同時に校正をしていただけるところにあるのかなと思っています。「トロ・ステーション」は今でこそ割と知っている方も増えてきたのですけれども、最初は「『トロ・ステーション』って何ですか?雑誌ですか?」「いえ、雑誌じゃないです」「ゲームですか?」「いや、ゲームじゃないです。なんて言ったらいいんですかね……」という話をしていました。

あと忙しい方も、なかなかつかまらないという時に「一度見てもらうのが早いだろう」ということで一番最初にこのWEB動画というのをお送りすることによって、経営者の方にも一度でイメージを正確に伝えてテキストや表現の校正もしていただけるということで、このような形で進めております。

さらに配信するだけでなくて配信した後にもですね、ユーザーの方からのフィードバックを常に取るようにしています。「トロ・ステーション」を見終わった後、「おもしろ」「そこそこ」「いまいち」という三段階評価があって、こちらをユーザーがクリックすると、オンラインであればリアルタイムで「何パーセントが面白いと思って何パーセントがいまいちだったのか」というような集計が取れます。こちらのデータを見ながら番組表を詰めていきます。


◆コラボレーションいろいろ

次にですね、「トロ・ステーション」は自分のゲーム内だけで完結しているだけのものではなくて、積極的に外のIP様とコラボレーションを行っております。ここからは「トロ・ステーション」が行ってきたコラボレーション活動について紹介させていただきます。


まずは「まいにちいっしょ」の頃にやったものなんですけれど「みんGOL×まいいつ祭」という、クラップハンズさんが作られている「みんなのGOLF」とコラボレーションして、お互いがお互いのキャラクターやコンテンツを使い合って盛り上げていくというものです。始まりは「トロ・ステーション」の「まいにちいっしょ」のミニゲームにパターゴルフを作ったというものです。これは「みんGOL」の延長で普通にトロがパターゴルフをするというものですけれど、作ったら好評でした。


さらにちょうど「みんなのGOLF ONLINE」というものがやっていたので、その時にみんGOLチームの方に「みんニャのパターGOLF」という形で一緒にコラボレーションしませんか?という話を持ちかけたところ、非常に好評で乗ってくださいまして「ではみんGOLの方でも使います」ってことで、お互いコラボレーションでキャンペーンにしましょう……ということで、このような施策を取らせていただきました。


本も出ました。「電撃PlayStation」さんと「トロ・ステーション」で連動取材という形で共同で取材したりしているのですけれど、その他に「まいにちいっしょ」の過去のものをまとめた本としてアスキー・メディアワークスさんから「まいにちいっしょトロクロおきらくBOOK」というもので販売しております。攻略本とは違って「トロ・ステーション」のデータベースをご紹介しているような感じになっております。


さらに今度はリボルテックですけれど、一番最初に「トロ・ステーション」で初音ミクを扱った際に初音ミクと一緒に歌うシーンを作った時、トロクロに初音ミクの衣装を着せたところ非常にユーザーの方に好評で、そこからTAITOさんにお声がけをいただきまして、気が付けばあれよあれよという間にリボルテックシリーズになっています。


後は「トロ・ステーション」じゃなくて「どこでもいっしょ」のくくりなのですけれど、ニコニコ動画さんの中で専門チャンネルの「とろちゃ」というものがあるのですけれど、そちらでユーザーの方からいろんなデザインを募集して、ニコニコ動画に選考中のものを流したりしながら映像の方と一緒にデザインをして、プライズアイテムとして商品化されております。


その他トロクロはさまざまなゲームにさまざまな形で登場しております。ある時はアイテムであったり、ある時は置物であったりかぶり物であったり、ある時はゲームに出てくるパートナーであったり。はじめは「トロクロは人を殴ったりはしない」といろいろ制限はあったのですが、いろいろコラボレーションする間にだんだん剣を持ったりハリセンを持ったりして果敢に殴りにいったりするようないろいろできるキャラクターになっていきました。


「トロ・ステーション」で実際紹介させていただいたところ、そうしたら先方から「ぜひこちらも」というお声掛かりがありまして、ゲーム内でのコラボレーションというのを進めております。今後もこのような活動を続けていこうかなと思っていますので、何かトロクロに出演依頼があるという方はどうぞ気軽に私の方までお声がけください。

◆まとめ

はい、ではまとめになります。まとめと言うには一言になってしまうのですけれども、先ほども紹介させていただいた「週刊トロ・ステーション」に変えた時の「最小の労力で最大の成果が出る仕組みを作ってそれを最大の努力で運営していきましょう」というものです。

毎月毎月新しいものを考えて出してやめて、新しいの出してやめて、0、1、0、1にしていくものではなくて、一番最初にベースの仕組みをしっかり作って、「最小の労力、最大の成果」というテコの原理みたいなものですけれど、それをきちんと作って最大の努力で運営していくということで、運営コストもコンテンツの制作コストも抑えつつ、ユーザーの方に満足していただけるものを続けていけるんじゃないかなと思っています。

そして「週刊・トロステーション」チームとしてはですね、もう今年の11月で丸4年なんですけれど、また新しいことをしようとしています。「週刊・トロステーション」というわけではないんですけれども、これまで培ってきたものを生かして新しいチャレンジですね。まあ、タイトルは何も言えないですけれど、これまでになかった新しいコンセプトのものを近日公開させていただければと思っています。どうぞご期待ください。


以上です。ご清聴ありがとうございました。何か質問等はございますか?

質問者1:
有限会社アンブレラの松村と申します。今日はお話ありがとうございました。先ほどのどのようにして番組が作られているかという点ですが、「トロステーション」のトロやクロはかなりキャラクターとして個性があると思います。そして取材をする方がいらっしゃるということですが、最終的なキャラクターとしてのテキストというものはひとりの限られた方がやっているのか、それとも多くのスタッフの方が関わっておられるのでしょうか?

伴:
こちらのプランナーの方々が実際に「取材兼シナリオ兼スクリプト」で、専業ライターの方は取材だけをして、取材に関するあらすじみたいなものも書いたりするのですけれど、そちらを受け取ってプランナーの方々が取材兼シナリオ兼スクリプトということで、トロクロの動きを作るということになります。

質問者1:
テキスト等もスクリプトの方であれば皆さん作れるということでしょうか。

伴:
はい、作れる方が10名前後います。

質問者1:
分かりました。ありがとうございます。

質問者2:
お話ありがとうございました。株式会社セガの黒川と申します。この「トロステーション」の制作体制の中で、プランナーの方が7名前後という話をされていたかと思うのですけれど、「まいにちいっしょ」から「週刊・トロステーション」までに渡って、そのニュースの配信回数など変わってきているのですけれど、その頃と大きく体制を変えたりとか、そういうお話はありますか?

伴:
制作体制などですか?

質問者2:
はい。人数が変わったりや、スケジュールで5週前に会議があってというお話があったのですけれど、これは「まいにちいっしょ」の頃からずっとその体制でやってきていて、「週刊・トロステーション」になったからといってその体制を変えたわけではないんですよね?

伴:
はい、変わっておりません。はじめは毎週配信になったことによって楽になるのではないかと思っていたのですが、気がつくと1週間に作っているネタが多くなってきていて、毎日配信している頃とあまり変わらないよねということになっていました。それがまあ、週刊になったことによってユーザーの方に見やすいタイミングで配信できたんですけれど、コンテンツを作るという意味では効率化を進めていっているのですけれども数はあまり変わることはなかったので、制作体制も大きくは変えていません。

質問者2:
ありがとうございます。

質問者3:
1200回も続いているとネタ切れが起こりそうですが、トロステーションで取り上げるネタが無くなってしまうことはないのでしょうか。

伴:
はい、ネタが切れるということに関しては、あまりないんです。毎月毎月新しいゲームがどんどん紹介されていますし、ユーザーのはやりというものは色々変わっていきますので。ネタ自体は困らないのですけれども、「これ、前やらなかったかな」とか「これ前やったよねとか」ということが非常に多くなって、そういう意味では非常に作りづらくなってるところもあります。

あと、「トロ・ステーション」が既に5年近くになるので、一度紹介したゲームの次がすぐ出てくると、「前にこの紹介方法でこのゲームを紹介したから次どうしたらいいんだろう」ということで、自分で自分の首を絞めているところもあります。

質問者4:
本日はありがとうございます。かなり長い間続いているのですけれど、モチベーションを維持するというところで具体的に取り組んでらっしゃることはありますでしょうか?

伴:
モチベーションを維持するのには、ユーザーの方の評判を聞くというのが一番のモチベーション回復になると思ってます。反面頑張って作ったものがあまりウケなかった時は少しへこんだりはするんですけれど、毎週毎週新しいものを配信して、それをユーザーさんに届けてモチベーションを回復しています。

後はニュースを作るルーチンは変わらないので定期的にアップデートを入れていくことによって、ユーザーにも喜んでいただきつつ、制作スタッフの方も新鮮な気持ちでまた新しくコンテンツを作れるというサイクルを作っています。

質問者4:
ありがとうございます。

質問者5:
貴重なお話ありがとうございました。外部のライターさんやプランナーさんと合わせて10名から12名ほどいらっしゃるかと思うんですけれど、1週間あたりに稼働しているネタ……というのはどれくらいになるんでしょうか?

伴:
1週間あたりに稼働しているネタ?

質問者5:
ええと、動いているネタの数というのは……。

伴:
ネタの数……丸々1週間分は常に動いている感じです。その1週間分を作り終わったらその次のスタッフの方は次のものを作ったりと。かなり細かいスケジュールが組まれているので、スタッフの空いたネタというのはあまりなかったです。むしろ「これが長くなったので少し足りなくなった」という話はあります。

質問者6:
トロステーションの運営にはかなりのコストがかかっていそうですが、主な収益源はどんなもので、採算はとれているのでしょうか。

伴:
収益の源としては月額課金とメダル課金というものでまかなっております。ビジネスモデルとして破綻しないようなバランスで何とかやっております。

それでは、本日はご清聴ありがとうございました。

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