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メモ

ハリウッド大作映画がどれも似てしまう原因となる台本作りの「公式」とは?

By Michael Righi

もしあなたが「最近の映画はどれも話が似通っていてつまんない……」と感じているなら、その感想はもっともなのかもしれません。ハリウッド映画の台本作家のあいだで台本作りの「公式」なるものが存在しており、最近の映画は猫も杓子もこの公式通りにシナリオが作られているそうです。映画のシナリオの公式とはいかなるものなのでしょうか。

Save the Movie! - Slate Magazine
http://www.slate.com/articles/arts/culturebox/2013/07/hollywood_and_blake_snyder_s_screenwriting_book_save_the_cat.single.html

◆台本の公式「ビートシートメソッド」
最近のハリウッド映画の「ビート(展開のこと)」はどれも同じです。いつも最初の15分で主人公はよき理解者にたしなめられ、悪者はいつもわざと捕らえられ、たいてい終了時間30分前にはどん底の展開が待っているものです。これは、映画の台本にはある「公式」が存在するからですが、それを知る者はごく少数です。

この公式は、映画台本のバイブルであるブレーク・スナイダーの「Save the Cat! The Last Book on Screenwriting You’ll Ever Need.」によって生み出されたものです。

By Chris Held

有力な映画の台本作家として成功をおさめ台本作りの指導者的地位にいたスナイダーは、著書の中で、1970年代末期以降の超大作映画を制覇した「スリーアクション」について解説しています。スリーアクションとは、ストーリー展開を「準備段階」「対立」「解決」の3つの構造で組み立てる手法です。この本は、これまでの映画台本作家が書いてこなかった内容であったため、ハリウッドで大流行します。

彼はスリーアクションをストーリーの鍵を握る15のビートに細かく分類し、それぞれを台本のページに対応させました。これらはビートシートと名付けられました。映画のストーリーは15のビートからなり、台本では各ビートに均等にページが割り振られました。この手法は「minute-to-minute」とよばれスナイダーの映画制作哲学を支えるものでした。スナイダーは、名作には必ずこの15のビートが含まれているものだと考えていたのです。

これが、スナイダーが実際につくったビートシートの例。ストーリーが、開始イメージから最終イメージまで15のビートで構成され、それに応じておおむね均等にページが割り振られていることがわかります。


◆ハリウッドを席巻するビートシート
スナイダーは2009年にこの世を去るまで「ビートは骨格であって絶対的な公式ではないし、ビートシートは長年つちかわれてきた映画制作の手法には基づいていない」と強調していました。ビートシートはあくまで良い作品を作る方法にすぎず、必ずしも映画台本作りに適したものではないとの主張です。しかし、ビートシートメソッドは瞬く間にハリウッド映画界に取り入れられていきました。

今では、ほとんどのハリウッド映画の台本にはビートとページが書き込まれています。スナイダーの予期しない形で映画台本作りの「公式」となったビートシートメソッドは、やがてこれまでの映画台本作りの方法にとってかわるようになります。


このスナイダーのビートシートメソッドを念頭に置いて映画作品を観てみると、例えば「L.A. ギャング ストーリー(Gangster Squad)」では、作品序盤で熱血刑事ジョシュ・ブローリンに上司が「おい若造。ここにはここのルールがあるんだ」とうなり声を上げるシーンは2番目のビートです。110分の映画なので7分くらいの時間を割り当てるはずです。中盤には銃撃戦があって、その後すべてが台無しになるシーンを経て、最後には予定通り悪役が急死します。これらはスナイダーのシートメソッド通りの展開です。

実際のところ、映画館に行けばスナイダーのビートシートメソッドで作られた映画をそこかしこに見つけることが出来ます。今日のほとんどのメジャータイトルはビートシートという公式通りのシナリオです。しかし、ひとたびこの公式を知ってしまったなら、ビートとビートのつなぎ合わせが気になってきます。それは時に半ば強引でわざとらしささえ感じられます。ついには、映画がどれも同じに思えてくるのです。

By Cris

◆ビートシートメソッドから派生した男性主人公
ビートシートに裏付けられたスリーアクションでは、テーマを投げかける主人公、すなわちヒーローの存在が求められます。そして、最も映画に足を運ぶのが若い男性であることから、必然的に若い男性向けのヒーローが好まれるのです。だからヒーローが生まれるシーンで「これはあるGuy(ヤツ)の話で……」と言い、決して「これはある人の話で……」と言わないのです。また、ヒーローが男性であるがゆえに、女性は文字通り脇役に追いやられるのです。女性は、若い男性主人公のごく個人的なトラブルの解決を手助けする人物として描かれるのです。巨額の制作費を組んだサム・ライミ監督のファンタジー映画「オズ はじまりの戦い」でドロシーではなくディグズを主人公としたのは偶然ではないのです。

もっとも、スナイダーは著書「Save the Cat!」の中で「男性を主人公にするべきだ」とは言っていません。しかし、スナイダーの意図を十分に理解することなく上辺だけのスリーアクションおよびビートシートメソッドを取り入れた多くのハリウッド映画では男性が主人公というのがお決まりなのです。

このような、スナイダーの「公式」の真意を理解しないままみかけだけ手法を取り入れて作られた映画を観ることは退屈で、ありきたりのものの繰り返しになるだけでしょう。「若い男性主人公がトラブルに巻き込まれ奮闘し、新たな力を得て世界を救う」というストーリーをこれまでどれだけ観てきたか数えきれません。

By Sam Howzit

◆巨額の制作費と公式信仰
このようなありきたりのストーリー展開は、映画制作費の巨額化にも原因があります。メジャーなスタジオは巨大な予算を与えてくれる少数の出資者にますます依存しています。超大作であることは大きなリスクを意味します。失敗が許されないという大きなリスクです。このリスクを減らす簡単な方法は、これまで機能してきたものに従うこと、つまりスナイダーの公式に盲目的に従うということなのです。結果、ハリウッド大作は、どれもこれも同じものの繰り返しになっているのです。

もちろん、ビートシートメソッドによる「公式」で楽しくて良い作品が作れないというわけではありません。スター・ウォーズもダイハードもマトリックスもボーンレガシーもスナイダーの公式通りですがどれも面白い作品です。ただし、若い男性主人公の作品を続ける必要はありません。

By Tax Credits

◆ハリウッド映画の台本のあるべき姿とは
ジュラシックパークのような旧態依然とした娯楽作品を考えてみると、たしかにスリーアクションのストーリー構成でありビートも含まれています。しかし、そこでは「公式」は原形をとどめていません。つまり面白い映画をつくる上で公式から離れるという「小さな挑戦」をできる余地があるという良い例です。

私たち映画ファンが、映画台本作家に流行にあらがうよう懇願したところで彼らがそうすることはないでしょう。なぜならビートシートにしたがって台本を書くことは、とにかく簡単だからです。しかし、ビートシートに従って台本を書くことは、簡単さと引きかえに創造性を奪ってしまうのです。これこそが、ハリウッド映画をたいくつなものにしてしまう最大の理由です。創造性を失ってしまったハリウッド映画業界は、今こそビートシート依存のスタイルから抜け出す必要があるといえます。

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in メモ,   映画, Posted by darkhorse_log

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