Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
メモ

Amazonから全ての本を引き上げて過去最高収益を得る出版社とは?

By nate bolt

Amazonで2000タイトルもの本を販売していた出版社のEducational Development Corporation(EDC)は経営が傾き続けていたことから、なんと「全ての出版物をAmazonから引き上げる」という決断を下しました。一見無謀に見えるこの決断にどのような効果があったのか?ということをEDCのランドール・ホワイトCEOが語っています。

How EDC Beat Amazon - Business Insider
http://www.businessinsider.com/edc-beat-amazon-2014-8


EDCは「明日に向って撃て!」など多くの出版物をAmazonで販売していましたが、継続する業績悪化を打開するため、2012年にCEOのランドール・ホワイト氏は全ての出版物をAmazonから引き上げて、全てを自社販売する方針に切り替えました。


さらに、AmazonへEDCの出版物を再販する卸売業者たちとの取引を中止し、コストコやTargetといったスーパーへの納品もストップ。ホワイト氏は「断腸の思いで実施した決断ですが、大半の人々が私のことを正気ではないと考えました」と話します。一見すると危険な決断のように思えますが、EDCの2014年度の第1四半期の収益は前年比で20%増、7月の月間収益は28%増となっており、2014年は過去最高の収益をたたき出しているとのこと。


Amazonとの取引を全面的に中止する以前のEDCの株価は、約12ドル(約1245円)程度を維持していましたが、その後2.5ドル(約260円)にまで暴落。株主からは警告があったものの、自社株を80万株保有するホワイト氏は、「幸運にも私は解雇されることはないのです」と笑いながら言いました。2014年現在、EDCの株価は4.75ドル(約490円)まで回復しています。

イギリスのUsborne Booksは幼児向けの絵本などを販売するEDCと長らく取引関係にある出版社です。EDCはUsborne Booksの出版物に対してアメリカで販売する権利を持っていますが、Usborne BooksのCEOであるPeter Usborne氏は「当時のEDCの決断に我々は関係しておらず、ランドールからはただ『Amazonとの取引をやめた』と事後報告がありました」と述べています。当時は間違った決断を下していると感じたそうですが、「EDCは良い流れに乗っているように見えます」と話しています。

EDCがAmazonからの撤退を決定できたのは、「ホームビジネス部門」と呼ばれる7000人の販売コンサルタント部隊を持っていたことが最も重要な鍵となっています。この部門は子どもを持つ母親などで構成されており、友人やご近所さん、ブックフェアやホーム・パーティなどでUsborne Booksの絵本などを販売しています。販売した本の数に応じて給与が支払われますが、本の販売だけでなく、販売コンサルタントを引き入れることで自らのランクが上がっていく多層式販売組織となっており、部門トップのナンシー・アンさんの収入は、多い年で10万ドル(約1000万円)を越えるとのことです。


これまで学校図書館・教師などへの営業は、「Amazonの方が数ドル安いから」という理由で断られることが多々ありましたが、AmazonからEDCやUsborne Booksの本が買えなくなったことで売上が上昇し、13か月連続で黒字化を達成しています。新人募集は継続中で、Amazon撤退後のEDCの成長を担う重要な部門になっているというわけです。

Amazonは低コストを重視して、全ての競合を排除するというビジネスモデルを実施していることで知られています。幅広く商品を販売できるのは小売店や出版社にとって便利なところですが、低価格を重視するあまり利益が出ない危険性をはらんでいます。そのため、EDCのとった方向転換とその成功は、Amazonに関係する出版社・小売店全てにとって重要なニュースとなっています。なお、6000以上の店舗を構え、以前からEDCの本を販売している小売チェーンのMary Arnold Toysでは、EDCがAmazonとの取引をやめてから、2か月に1度だったEDCへの注文が3週ごとになり、売上が増加しているとのことです。


Amazonは「ガゼル・プロジェクト」と呼ばれる出版社に対する電子書籍化交渉作戦を行っており、CEOであるジェフ・ベゾス氏は交渉チームに対してEDCのような規模の小さな出版社から狙い撃ちにするよう指示したことが知られています。要求に応じない出版社の出版物はAmazonで目立たなく表示するなど、圧力をかけて電子書籍化を迫る作戦で、フランスの出版社アシェットに圧力をかけたことが原因で、スティーヴン・キングを含む900人の作家がニューヨークタイムズに批判文を掲載するなどの騒動が起こっています。

ホワイト氏は同業者へのアドバイスとして、「自分のビジネスの商品を誰かに手渡す前に、注意深く考えて下さい。Amazonはあなたの友達ではありません」と警告しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
電子書籍の脅威から本屋を救うための10のアイディア - GIGAZINE

Amazonが送料無料を禁止した「反Amazon法」に対抗して「送料1円」に - GIGAZINE

AmazonがGoogleを退けてゲーム実況サービスTwitchの買収に逆転成功 - GIGAZINE

Amazonの書籍割引と無料配達を禁止する法案が書店を守るためフランスで可決へ - GIGAZINE

「STOP!! Amazon!!」、書籍の値引販売をAmazonが止めないので出版社51社が除外を要望 - GIGAZINE

大手出版作品は「満足度は低いのに値段が高い」、個人出版作品は「満足度が高くて値段が安い」などオンライン書店の事実が判明 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.