Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                
サイエンス

2018年は冥王星の月「カロン」が発見されて40年、その名前の意外な起源とは?


1978年6月22日、アメリカの天文学者ジェームズ・クリスティー氏が冥王星で最大の月カロンを発見しました。カロンが発見されたのは、実は別の冥王星に関する作業をしていた時にたまたま起こったできごとで、その名前の由来はクリスティー氏のプライベートなものだったそうです。

Charon at 40: Four Decades of Discovery on Pluto’s Largest Moon | NASA
https://www.nasa.gov/feature/charon-at-40-four-decades-of-discovery-on-pluto-s-largest-moon

発見から40年後のクリスティー氏も登場する以下のムービーでは、カロン発見の経緯やその命名について解説されています。

Charon at 40: The Discovery of Pluto’s Largest Moon - YouTube


1978年、クリスティー氏が後に「カロン」と名付けられることになる衛星に気づいたのは、このザラッとした写り方の写真を目にしたことがきっかけでした。


それから40年がたった2018年、カロンはこれほどまでに高精細な画像でその姿を確認できるようになっています。


人類が冥王星とカロンの姿を詳細に捉えることができるようになったのは、2015年にNASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が冥王星とカロンの探査を開始したことでした。同年7月14日にニュー・ホライズンズは冥王星をフライバイ(接近通過)し、冥王星とカロンの詳細な姿を撮影しました。


冥王星が初めて確認されたのは、1930年のこと。アメリカの天文学者、クライド・トンボーがローウェル天文台に勤めていた時に、「海王星よりも遠いところにある天体」として冥王星を発見しました。


そして冥王星に月があることを発見したのが、こちらもアメリカの天文学者でアメリカ海軍天文台に勤務していたジェームズ・クリスティー氏で……


その発見には、クリスティー氏の上司だったボブ・ハリントン氏も大きく関わっています。


冥王星を撮影した写真乾板を調査していた際にクリスティー氏は、その姿にわずかな膨らみがあることを発見しました。


数日にわたる写真を比較することで、この膨らみが周期的に移動していることに気づいたクリスティー氏は冥王星に衛星があることを確信しました。


その後の調査の結果、クリスティー氏は冥王星に月があることを正式に確認したのです。


クリスティー氏の妻であるシャーリーン・クリスティ氏はその時の様子を「私に電話をかけてきて、『僕はきっと有名になるぞ。冥王星に月があるのを見つけた』と話しました」と振り返ります。


天文学の世界では、天体の名前はそれを発見した人が最初に名前を提案する権利があるとされています。


そこでクリスティー氏は、妻の名前「Charlene(シャーリーン)」から頭の数文字を持って来て、末尾に「on」を付けて「Charon」とすることを提案しました。


「on」を付けた理由についてクリスティー氏は「私はいつも物理学のことを考えていたので『Electron(電子)』や『Proton(陽子)』という単語があったので……」


「『Charon』という名前にしました」と語ります。日本語では「カロン」と呼ばれるこの天体ですが、英語圏では「シャーリーン」がベースにあるために「シャーロン」と発音されています。


「Charon」を提案したクリスティー氏でしたが、実際にその名前が認められるかどうかはまた別問題。「ひょっとしたら却下されるのではないか」と思い、辞書を調べると、そこには「Charon」という項目があることを発見。


「Charon(カロン)」はギリシャ神話に登場する名前で、死者の魂を舟に載せてスティックス川を渡り、黄泉の世界に運んだという神に準ずる存在の名前。実に「それらしい」名前があったこともあり、「Charon」は月の名称として認められることになったそうです。


カロンの名付け親であるクリスティー氏は2006年、無人探査機「ニュー・ホライズンズ」の打ち上げに夫婦ともども招待されました。


その約8年後、ニュー・ホライズンズは冥王星に接近し、人類がそれまでに見たことがなかった天体の姿を明らかにしました。


カロンには、地球のグランドキャニオンよりも深い大きな渓谷が形成されています。カロンは直径が約1200kmと、地球の月に比べて3分の1ほどしかありません。その天体に地球のグランドキャニオンよりも大きな裂け目があるということはつまり、壮大なスケールの地形が形成されているということになります。


その様子から、カロンにはかつて液体の海が地面の下に存在していたとも考えられているとのこと。


自らが発見し、命名したカロンの精細な姿を目にしたということで、クリスティー氏の喜びもひとしおであるはず。「できれば、カロンの裏側も見てみたかったね」と、遠い天体の姿に思いをはせて語っていました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
冥王星の写真撮影に惑星探査機「ニューホライズンズ」が成功、ついに人類は太陽系全ての惑星へ到達完了 - GIGAZINE

冥王星の地表が手に取るように見える高精細画像が公開・カロンとハイドラの2つの衛星写真も - GIGAZINE

小惑星「カリクロー」は環(リング)を持つ珍しい小惑星だったことが判明 - GIGAZINE

「月」以外に地球の周りを回っている知られざる天体とは? - GIGAZINE

天体写真に絶大な影響を与えた発明を考えたのはアマチュア天文家だった - GIGAZINE

宇宙のとてつもないスケールに酔いしれるSFムービー「WANDERERS」 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.